第五話 陰謀はつらいよ②
黒鉄と煉瓦で構成された巨大要塞。レギウス城。
塔は三つ、どれも空を突き刺さんばかり。大型弩砲や魔導砲が設置され、高い天守の窓は細く、射手用の狭間として設計されており、“城”というより 軍事要塞そのもの だった。
大司祭マーリンに会うため、行政区へと入った三人だが思わず足を止める。
「……何あれ。人が住む気あるの?」
リラが呆然と呟く。
「あるさ。たぶん皇帝は心も要塞なんだろ」
寅二郎の冗談に、シドが苦笑すら返せなかった。
それほどの威圧感だった。
(魔導砲まで。あれ一発撃つのに魔鉱石一抱えも使うというのに……)
シドは驚愕する。
レギウス城は中央大通りの終点に位置し、
まるで帝都全体が城へ通じる導線で構築されているようだった。
街の造りそのものが「皇帝の絶対」を示している。
レギウス城に続く中央大通りから一本外れた区画。
街の影に隠れるように、聖ローマン教の大聖堂が建っていた。
建物は白い大理石で、尖塔も高く、
本来であれば都市のランドマークになっていいほどの荘厳さがある。
……しかし。
周囲には軍旗も行政紋章もなく、
敷地も他の建物より狭い。
「なんか……城の“おこぼれスペース”に押し込まれてない?」
寅二郎が眉をひそめる。
リラは複雑な顔をしていた。
「教会なのに……堂々としてない」
シドが周囲を観察し、低く言う。
「軍事国家では宗教は二の次だ。帝国らしい扱いだな」
三人は、大聖堂に漂う妙な静けさを感じながら、
ついにその門を叩くのだった




