第五話 陰謀はつらいよ①
帝都レギオンブルクのレギウス城、
その謁見の間の玉座に座り皇帝レギウス三世は報告を受けていた。
報告者はぴったりと体に沿う黒のスーツ。
赤髪で、寅二郎とも因縁のあるあの女。フジコだった。
「砂漠王国カルナードのダンジョンより、
遺物“亡者姫の髪飾り”を入手し帰還いたしました」
「うむ、これで闇属性魔法の解析もさらに進むであろう。フジコ、よくやった」
感情の見えない表情で皇帝は言った。
視線で係りの兵士をフジコに使わせ、
髪飾りを受け取らせると続けて言った。
「次はルゼリアだったか、次もよい報告を期待している。下がってよいぞ」
「はは」
フジコが下がろうとしたところに、
憲兵隊の制服を着こんだ兵士が入ってきた。
「陛下、リ・エスティーネ王国で勇者資格を剥奪された冒険者が帝都入りを」
兵士が言いきらないうちに、
「構わん」皇帝は手を振ってこたえた。
「しかし、マーリン大司祭と接触を」
「黙れ。フジコ下がってよい」
皇帝はフジコが出ていくのを確認すると、続けた。
「それは諜報部に一任してある。
下手に動いてリ・エスティーネ王国と事を構えるわけにはいかん。
泳がせておけ」
なお言いつのろうとする兵士を皇帝は視線で制した。
睨まれたわけでもないのに兵士は硬直した。
ようやくの体で、「はは」と言い残すと兵士は下がった。
「今はまだリ・エスティーネ王国と事を構えるわけにはいかん。今はまだ…な」
皇帝は誰にともなくつぶやいた。
謁見の間を抜け、廊下の窓から外を見上げるフジコは思った。
(やっぱり来たのね、トラジロウ。
帝国の暗闇に巻き込まれないといいけど、無理ね。あの性格じゃ)
口元に微笑みを浮かべながら、フジコは次の任務へと旅立つのだった。




