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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第三章 ガルディア帝国編
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第四話 夜這いはつらいよ②

 帝都の雰囲気に圧倒されていた三人だが、

 馬を預けるとすぐ近くの食堂へ足を向けた。

 外観は華やかさはなく、

 灰色の石壁と鉄製の看板だけがぶら下がっている。


「……帝都って、なんか無駄がないね」

 リラが石畳の道を見下ろしながら呟く。


「軍都だからな。食堂ですら派手さよりも規律と効率が優先される」

 シドが低く答える。


「こう窮屈だと、パぁっとやりたくなるな」

 寅二郎のセリフに、シドが眉を顰める。


「くれぐれも目立たないでくれよ……」


 扉を押して中に入ると、広い食堂に金属の香りと肉の匂いが漂う。

 木の長机には鎧姿の兵士や官吏が並び、黙々と食事をしている。

 全体に規律が感じられ、雑談する声もほとんどない。


 そこに現れた給仕の女性──

 姿勢を正し、背筋はピンと伸び、目は冷たく光る。

 服装は帝国式の制服だが、表情は完全に軍人のそれだ。

 動きは無駄がなく、客に一切の甘さを見せない。


 寅二郎は入り口で目を丸くし、思わず声が出た。

「おお……なんだこの人、なんか怖いけど……惹かれる……!」


「はあ!?なにその感想……」

リラが思わず肘を突き、寅二郎は「ぐふっ!」と前のめりになる。


 シドは額に手を当て、ため息をついた。

「……入ったばかりで何を言い出すんだ、この馬鹿は。

 あんな人に近づいたら確実に叱られるぞ」


 それでも寅二郎は目を輝かせる。

「いや、でもあの給仕さん、絶対厳しく叱ってくれる系だろ?

 なんか、こう……抱きしめられたら骨までガチッと正されそうな感じ……」


「黙れッッ!!」

リラとシドが同時に怒鳴る。


 給仕の女性は冷たい目で三人を見渡すが、

 すぐに淡々と注文を取り始める。

「旅人ですか。座ってください。注文は何ですか」

 声は低く、威厳がある。笑顔は一切ない。


 寅二郎はしばし固まる。

 しかしようやくゴクリ、と喉を鳴らすと、

「えっと……肉と、あと、あの……今夜ご一緒に」


「お前は死ぬのか……」

 シドが背後で呟く。リラは大きく頷いた。


 三人は馬の疲れも忘れ、

 帝都での初の食事を緊張と笑いに包まれながら始めた。

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