第二話 大将軍はつらいよ③
死肉や草木の焦げた匂いの立ち込める、ロルダ丘陵の頂に築かれた魔王軍の陣。
魔王軍対帝国方面軍アイスロック将軍は眼前に広がる戦況を眺めていた。
「報告!現在我が軍はコルンハーグ攻略中。
ですが、 戦力は拮抗。
睨み合いの状態が続いております」
「うむ、現状このまま押し続けよとの命令だ。
戦況が変わり次第、都度報告せよ」
「はっ!」戦場へと戻る伝令を見送りながら、アイスロックは思案する。
(敵もさるもの、しかし魔王様は正面突破をご所望。
何か腹案がおありなのだろうか――)
そこへ、黒い影が降り立った。
「よう、さすがに都市部への侵攻はてこずっているようだな」
魔王軍最高戦力“三魔将”の一人、《破壊者》ベルゼだった。
「これは、ベルゼ様。ようこそ我が陣へ」
「へ、挨拶なぞいらん。どうだ、戦況は」
アイスロックは戦力が拮抗し、睨み合いの状態にあることを伝え、
「敵も抗戦しておりますが、魔王様のご意向通り、
正面突破を継続いたしております。
必ずや、コルンハーグを陥とし――」
「ふむ。まあ、お前の真面目さは嫌いじゃねぇよ」
ベルゼはふっと笑うと、陣地中央の岩に腰を下ろした。
その翼が広がると、周囲の草は触れた瞬間に灰色へと枯れ落ちる。
兵たちは誰ひとり言葉を発せなかった。
「ふむ、しかしここを落とせりゃ次は帝都だ。
相手もそろそろ動き出すだろう。
しばらく俺はここで見物させてもらおう」
と、ベルゼは陣に座り込んでしまった。
「は!」三魔将相手にとやかく言う権利も無いアイスロックだったが、
(このタイミングで三魔将。何かあるのは間違いなさそうだ)
と不穏なものを感じざるを得なかった。




