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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第三章 ガルディア帝国編
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第二話 大将軍はつらいよ②

 アムステルドを出てしばらくした軍用街道。

 馬上のレオンは風に揺れる黒外套を翻しながら、先頭を静かに駆けていた。


 背後には帝国中央軍の精鋭部隊――黒鷲騎兵団。

 百騎ほどの兵が、規律正しく蹄音を揃え、砂煙とともに進む。


「将軍、偵察から報告です!」


 副長シルバージルが馬を寄せ、小声で続けた。


「前線のコルダ丘陵が突破されました。

 魔王軍の“戦鬼部隊”が投入されたとのこと。被害甚大……と」


 レオンの眉がわずかに動く。


「……皇帝陛下は、“奪還”をではなく“殲滅を”と命じられたな?」


「はっ!」


 レオンは軽くうなずいた。


「よい。予定を早める。全軍、第二の行軍速度へ移行せよ」


 号令は瞬く間に伝わり、騎兵たちは一斉に速度を上げた。

 帝都から遠ざかるほど、空気は鋭く冷え、土の匂いが戦場の予兆を帯びてくる。


 副長がもう一度口を開く。


「将軍……アムステルドでの一件、

 処置なされてよろしかったのですか?」


 レオンは前だけを見たまま応えた。


「問題ない。あれは“ただの事故”だ。

 ……そうしておくのが帝国のためであり、陛下のためだ」


 その声音には忠誠というより、静かな計算の色が宿っていた。


「しかし――」


「シルバージル。前線で語るべきではない話だ」


「……はっ」


 軍勢は丘を越え、視界の先――

 黒煙の立つ戦場の空が見え始める。


 レオンは腰の剣に手を添え、低く言った。


「ここからだ……黒鷲騎兵団、戦場突入準備!」


 蹄音が再び高まり、軍勢は戦場へと雪崩れ込む。

 それは、まるでアムステルドでの小さな騒ぎを吹き払うような、

 巨大な戦の前触れだった。

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