第一話 護衛はつらいよ⑥
そして、リラやドルドの前で上客の“贈り物”を調べる二人。
「基本は貴金属だな。
売って逃亡資金にする思惑でもあったのか。ん?これは」
シドが取り上げたのは白木の箱。
中には真珠の首飾りが入っていたが上蓋の裏から板が外れた。
「何か落ちたぞ?」
「これは、密書か!宛先はマーリン大司祭だと!?」
「内容は?」
「駄目だ、マーリン大司祭本人しか開けないよう呪術的封印がしてある。
無理に開けようとすれば燃えて無くなるように仕組まれている」
「直接渡しに行くしかないな。そしてこれを預けていたってことは」
「ああ、リラにも来てもらうべきだ」
一気に事件の渦中に巻き込まれたリラ。
戸惑い声を上げられずにいたが、
「分かったわ。あの人の最後の意思に従ってあげるべきだものね」
いまだ震えながらも、はっきりと言った。
「というわけだ。ドルド、俺たちは行くぞ」
「しょうがねぇな、しかし憲兵隊にはどう言う?」
「客が殺されたとだけ言っておけ。
リラと俺たちはいつの間にかいなくなっていたことに」
「それだけでいいのか?」
「俺たちは重要参考人として追われることになるが、
店にはそれが一番影響が少ないはずだ」
「どうせ、黒装束のやつらには追われるわけだしな」
「むしろ、帝国側は表沙汰にはしたくないはずだ。
憲兵隊は俺たちの関与をもみ消すかもな」
帝国の陰謀に巻き込まれ、それでも毅然とした態度の二人に、
「すまねぇ、巻き込んじまった」頭を下げるドルド。
「構わねぇよ。リラちゅわんの護衛任務が続行ってだけだろ?」
手をひらひらさせながら、寅二郎は笑った。
「リラ、悪いが急いで支度だ。すぐに出るぞ」
「分かったわ」
リラも、もはや震えていなかった。
……少しだけ目を閉じて呼吸を整えるリラ。
見開いたその翡翠色の瞳には決意の色が見えた。




