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第一章 第三話 現実はつらいよ①

 明日に初討伐を控え、武器屋に入った寅二郎。剣や槍、大きな盾や全身鎧までもが所狭しと並んでいる。どうやら武器や防具全般を扱った“冒険者向け装備”の店のようだ。


 前世ではRPGゲームも好きだった寅二郎が目を輝かせる。

「おお、まじで“ひのきのぼう”が売ってる」白い棒を取り上げはしゃぐ。

しかし、後ろから声がかかった。

 振り返るとドワーフ族らしい白いもじゃもじゃ髭の店主がカウンターにいた。


「そいつぁ魔法使い用の“ワンド”だぜ」

「あらら、そうなの?」

「タグに書いてあるだろう?」

「いや、文字は読めねぇんだ」

「ふん、さては噂のステータス“0”勇者か。異世界から召喚されたっていう」

「ああそうだ、冴木寅二郎ってんだ」

「『武器や防具は 持っているだけじゃ 意味がないぞ!

 ちゃんと 装備しないとな!』」

「ははは、おっちゃん分かってるな!」

 ゲームの有名なセリフに寅二郎が腹を抱えて笑った。


 そこへ、客が入ってきた。見るとそれはシドだった。

「表まで笑い声が聞こえていたぞ。何やってるんだ」

「明日の討伐に向けて、武器の調達にな。お前こそどうした?」

「俺は手入れに出していた短剣の受取りだ。店主、これを頼む」

 とシドは店主に札を渡した。

 その札を受け取った店主が奥から短剣を持って帰ってきた。

「ほれ、こいつだな」

「ああ、ありがとう」

 シドが短剣を受け取り確認する。

 研ぎ直されて光る刃に頷くと腰に仕舞って言った。


「それより何があったんだ?」シドが尋ねると、寅二郎が説明した。

 会話は出来るが文字は読めないこと、貨幣価値も分からず何が買えるかもわからないことを。


「お前、それで今までよく生活してこれたな。仕事してたりしたんだろう?」

「そこは気合いだ気合。宿屋も追い出されちゃいないしな」

 どうやらギルド斡旋の土木工事や宿屋だったため、なんとなく上手く回っていたらしい。

 シドは盛大にため息を付いた。


「分かった。文字もそのうち教えてやる。とにかく今日は装備だな」

 シドは全財産だという寅二郎の持ち金を確認すると、胸甲を取り上げた。

「これくらいが無難だな。武器はどうする?店主オススメは無いか?」

 店主は残金を確認し、剣や槍が何本も乱雑に突っ込まれた樽を指さした。


「そこに刺さった中古品くらいだな」見ると、

 手入れはしてあるようだがやはり年季が入っているのが丸わかりの品ばかりだった。品質は生存確率に直結する。シドも思案顔だ。


「そうだなぁこれにする!」寅二郎は一本の剣を引き抜いた。

 オーソドックスな両刃の剣。バスタードソードと呼ばれる剣だ。両手でも片手でも扱える万能タイプ、一部では器用貧乏とも言われる玄人向けの剣だった。


「おお、そいつは掘り出しもんだ!兄ちゃんいい“眼”持ってるじゃねぇか」

「そうだろ?何かビビビッときたんだ!」二人の会話を聞きながらシドも感心していた。

(手入れもしっかりしているし、トラジロウのやつ、“持っている”な)


 そんなこんなで払いも済ませ、寅二郎は剣を肩に担ぎ、

「“トラジロウはバスタードソードを手に入れた”って気分だな」

 とご満悦で店を出た。

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