第五話 砂嵐はつらいよ①
グレースたちと別れ、
寅二郎たちは帝国方面へと向かう乗合馬車に揺られていた。
「しかし、まだまだ見渡す限りの砂、砂、砂だな」
「そうだな」
「次なるもっこりちゃんが俺を待って居るっていうのによぅ」
「そうだな」
「『もう、トラジロウさんったら汗だくじゃない。一緒にお風呂に入りましょ』
なんつってよぅ」
「そうだな」寅二郎のボヤキを適当に流していたシドだったが、
馬車の行く先に不穏なものを感じ取った。
「なぁアレ砂嵐じゃないか!御者!見えているか」
「へぃ!しかしこの辺りじゃ身を隠す場所もなくて。
逸れてくれるように何とか方向を変えるくらいしか…」
前方には三つの巨大な竜巻が、絡み合い、時に反発するように砂を巻き上げこちらに向かってくるのが寅二郎の目にも確認できた。
「おいシド!どうする」
「あれだ!御者あそこに馬車を止めるんだ!」
シドが指差した先には地中から少し顔を出した岩。
「岩よ!盾となれ!」
土魔法の応用か、岩が広く大きく突き出して壁のような庇を作った。
「かばいきれない部分は俺が風魔法でカバーする!
とにかくそこでやり過ごすんだ!」
乗合馬車が岩陰へと入った途端、砂嵐が直撃した。
「風よ!」シドが風魔法で防御するが砂嵐の凄まじい威力に馬車はもとよりその場がガタガタと揺れ始めた。一瞬でも気を抜けば空へと打ち上げられそうなその状況に皆一様に身をこわばらせていた。
「まだか」永遠にも感じられたその瞬間!
「しまった!」
シドの集中が途切れ身体が浮きそうになってしまった。しかし同時に何か大きなものが体を包み、腰のあたりで固定してくれる感覚がシドに安心感と温かいものを感じさせた。
「いいから魔法に集中しろ!」
それは寅二郎だった。腰に手を回し隙間から入り込む砂嵐からシドをかばうように覆いかぶさっていた。
やがて砂嵐が通り過ぎ、皆砂だらけとなった体を起こし始めたあたりで、五人の男たちが現れた。皆横一文字のサングラス、モヒカン頭で肩にとげとげの付いたベストを羽織った世紀末な一団。その首領格だろう男が声を上げた。
「さすがは帝国産の魔道具、
俺たちレベルでもあれだけの魔法が使えるなんてなぁ」
ギャハハと笑うと、
「ヒャッハー!見ただろ?この力。
命が惜しけりゃ身ぐるみ全部置いていきなぁ!」
襲い掛かってきた。
寅二郎に抱きしめられた時の安心感と体が火照ったような感覚に戸惑っていたシドだったが、その声を聴いた瞬間5人を叩きのめしていた。
「ひでぶ!」
「あべし!」
「容赦ねぇなぁ」と笑う寅二郎に、
「ホントにこいつら、もぉ」と返すのが精いっぱいのシドだったが、
「しかし、腰も細いし、よ!このモデル体型!」
茶化し始めた寅二郎の顔面にグーパンチが刺さっていた。
真っ赤になっていた顔を見せたくなかったのかどうかは、
シドのみぞ知る、といったところだった。




