第四話 勇者PTダンジョン制圧に行く②
翌朝、アンナたちは冒険者ギルドに入った。受付にはマロンの姿があった。
「皆さん、上の会議室でお待ちかねですよ」
「わかったわ。ありがとう」アンナたちは速足で階段を上がる。
冒険者ギルドの二階会議室。質素ながら大きな丸テーブルには《暁の翼》の五人、ギルド職員、そして王国騎士団第三隊の鎧姿の面々が並んでいた。
その中に、一人だけ背筋の伸びた女性騎士が立つ。
金茶色のショートヘア、鋼色の瞳。鎧に刻まれた第三隊の紋章。
ギルド職員が口火を切る。
「それでは当ギルドでギルドマスターを担っておりますゴランが説明を始めます。今日集まっていただいたのは、新規ダンジョン《灰哭の巣窟》に対する合同調査の編成についてです」
ライネルが後を受ける。
「我ら王国騎士団第三隊は主戦力として前衛・制圧を担当する。
冒険者ギルドには後方支援・物資運搬・撤退路の確保を」
「そしてダンジョン内部の探索・解析は
《暁の翼》の皆さんにも加わっていただきたい、との王命です」
そのゴランのセリフに、アンナが小さくうなずいた。
「承知しています。私たちにできることは全てやります」
場が少しざわつく。噂の勇者パーティがこんなに落ち着いているとは、と。
ライネルが横に控えていた女性騎士を手で促す。
「今回の任務に、第三隊から彼女を同行させる。紹介しよう
──エルザ・フォン・アルティナ。副長代理だ」
女性騎士が一歩出る。
「王国騎士団第三隊、エルザ・フォン・アルティナです。
《暁の翼》の皆さまの補佐を務めます。
主に現場での情報整理と警戒、必要があれば剣も振るいます」
落ち着いた声。だが、その目には観察者特有の鋭さがある。
「初めまして、エルザさん。頼りにさせてもらいます」
「こちらこそ。あなたが……神代アンナ。
お噂は聞いています。“前衛に出たがる勇者”と」
「だ、誰がそんな……!? (絶対アリアでしょ)」頬を赤らめるアンナ。
「冗談です。実績は拝見しました。信頼に値する動きだと」
エルザが微笑み場が少し和んだ。そして、ゴランが先を続ける。
「ダンジョンは現在、入口付近で魔物の溢出が散見されています。
今回は“初期制圧行動”──内部構造の把握、
と出現する魔物の傾向調査が目的です」
「前衛は我ら騎士団が受け持ち、
アンナ殿たちには中層までの探索と魔物の性質調査を任せたい」
「こちらとしても異論ありません。
……ただ、撤退基準だけは明確にしておきたいです。
未知のダンジョンは無茶が禁物ですから」
エルザがアンナに同意する。
「その点は同意します。
私が全体状況を確認し、危険と判断した場合は即座に撤退を進言します」
ヤスコがエルザを見ながらつぶやいた。
「……副長代理ってだけあって、かなりできる子だな」
「それでは──合同調査隊は明日の昼、ダンジョン前集合とします。
必要物資はこちらで準備しておきます」とゴランが言い、
アンナが立ち上がり、場を締めた。
「《暁の翼》、任務に臨む覚悟はできています。
皆さん、どうかよろしくお願いします」
(……この規模の作戦を任されるなんて。ちゃんと応えなきゃ)
エルザは静かに片手を胸に当て、敬礼した。
「勇者殿。共に参りましょう」
そうして、合同チームは結成された――。




