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第三話 マダム救助はつらいよ①
灼けつく陽光が岩肌を焼き、風が砂を巻き上げる。
断崖に挟まれた細い街道を、馬の嘶きと車輪のきしむ音が駆け抜けていく。
そんなガルディア帝国方面へと向かう乗合馬車の前方から、猛烈な勢いで一台の馬車がやってくる。
「どいてどいてぇぇっ!」
手綱を握る御者の叫びに、すれ違う旅人たちが慌てて道端へ飛びのく。
乗合馬車の屋根にしがみつく寅二郎は、
頭上をかすめる黒影に顔をしかめた。
乾いた風を切って、鳥型の魔物デザートイーグルが三体
――砂の空を裂くように追ってくる。
「シド! あれ落とせねぇか!」
「……やってみよう」
無口な剣士――シドが立ち上がり、
その瞳に閃光のような鋭さが宿る。
次の瞬間、剣が陽光を弾き、風を裂いた。
馬車の車輪が跳ね、砂塵が舞う。
すれ違いざまの一閃。デザートイーグルの二体が真っ二つに裂けた。
しかしシドは「悪い。一匹逃した」
寅二郎も「やっぱり、銃があればなぁ」苦々しい表情を浮かべつつ、
「行くぞ!シド」と走行中の乗合馬車を飛び降りた。
「俺たちはアレを追う!悪いがここでサヨナラだ!」
とシドも乗車賃代わりの金貨を投げ捨て、寅二郎の後を追う。
峡谷の赤岩が遠ざかり、
彼らの乗る馬車は、命がけの疾走のまま
砂漠の果てへと消えていった――。




