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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第二章 砂漠の王国カルナード編
28/77

第一話 暑くてつらいよ③

その頃――

 カルナード郊外、地下遺跡の最深部。


「ベルゼ閣下! お戻りでしたか! その傷は……!?」

「うるせぇ、報告しろ」


 玉座のような岩に腰を下ろし、ベルゼは不機嫌そうに翼を広げた。

 黒き羽根の一部がまだ焦げている。


「呪物による篭絡作戦は順調……

 と言いたいところですが、

 適合者が少なく進捗は芳しくありません」

「だろうな」


 ベルゼは舌打ちをした。

「まったく、くだらねぇ。

 人間の女どもを籠絡して“国”を落とす? 俺には合わねぇ。

 だが――“あの人間”だけは、気になる」


「……あの、トラジロウとかいう?」


「そうだ。守るために動く、その力

 ……戦う理由が“自分以外”にある奴。あれは強い」


 沈黙の後、ベルゼは笑った。

「まぁいい。傷が癒えるまで暇つぶしだ。

 ――リーネ、だったか。面白い玩具を使ってるじゃねぇか」


 部下が慌てて報告書を差し出す。

「はっ。リーネは現地人ですが、かつて奴隷として我々に捕らえられ、

 呪物との親和性が高いことが判明しました。現在、篭絡計画の中核に」

「なるほどな。あの瞳――“呪い”の光か」


 ベルゼは立ち上がり、闇の先に何かを見ていた。

「さて……“守る男”と“呪われた女”。

 どっちが先に壊れるか――見ものだな」

 それは寅二郎の生か死か。


 その笑みは、もはやかつての獣じみた戦闘狂ではなかった。

 理性を取り戻した悪魔の微笑みだった。

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