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第一話 暑くてつらいよ②
夜、二人は酒場で酒を飲んでいた。
「おかしい」シドの言葉に、
「何が?」あちらこちらの娘たちに視線を送りながら寅二郎が答えた。
「ベルゼの痕跡が掴めないんだ。
現状一番の激戦地は帝国だが、各地では確かに魔王軍の侵攻が続いている。
だがここカルナードでは目立った報告を聞かないんだ。」
「暑くて奴らも後回しなんじゃねぇの?」
寅二郎の軽口にため息をつきながら、
「ベルゼ追撃任務中だろうが。お前ってやつは本当に…」
「うお!」
シドの話を遮るように寅二郎が立ち上がった。
シドも寅二郎の視線を追いかけると、
昼間見た踊り子リーネがステージに上がるところだった。
「うひょぅ。もっこりちゃーん!」
寅二郎が口笛を吹きつつ大声を上げていると、リーネが踊りだした。
野外ステージのように誂えられたそこに、砂漠の夜を照らす月の光が差し込んでいた。妖艶な踊り、リーネを飾る宝飾品。それらの美しさにシドですらうっとりとし始めた頃、寅二郎の体が光を発しているように見えた。
「何だ?」
寅二郎の光に呼応するようにリーネの首飾りが光を発していた。
「まさか、呪物?魅了か!」
あたりを見回すとすべての人々が恍惚の表情を浮かべていた。
そんな中、寅二郎だけが未だに大声で叫んでいた。
「もっこりちゃーん!」




