表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第一章 リ・エスティーネ王国編
24/77

第八話 ダンジョンはつらいよ④

 地上に戻った三人は、冒険者たちの歓声に迎えられた。

 夕焼けが砂塵を金色に染め、露店の酒場からは香ばしい肉の匂いが漂う。


「くぅ〜〜っ、生きて帰って飲む酒は格別だな!」

 寅二郎は杯を掲げ、一気に飲み干した。

 隣ではフジコが笑いながら、自分の杯を軽く合わせる。

「おつかれさま、勇敢なお兄さんたち」

「勇敢というより、無鉄砲だっただけだ」

 シドがぼやきながらも、どこか楽しげだった。


 焚き火の赤い光の中、三人の影が揺れる。

 戦いの緊張も、地下の冷気も、いまはただ遠い夢のようだ。


「なぁフジコ、あの髪飾り……」

「ん? あぁ、あれね。ちょっと預かってるだけ。あとで鑑定に出してみるわ」

「おぉ、そりゃ頼もしい! なんてったって“ロマンの証”だもんな!」

「ふふ、ロマンね。いい言葉だわ」


 夜が更け、笑い声が途切れた頃。

 フジコは小さく伸びをして、空を見上げた。

「……今夜はいい月ね。少し、外の風に当たってくるわ」

 そう言い残して、彼女は静かに立ち去った。


――それが、彼女を見た最後だった。


翌朝。

 眩しい日差しに目を細めながら、寅二郎は宿のベッドから身を起こした。

 机の上に、見慣れない封筒が一つ置かれている。

 開くと、花の香りと共に短い一文。


「またどこかでね♡」

 そして、鮮やかなキスマーク。


「……あのおんな、逃げやがったな」

 寅二郎が頭をかきながら笑う。

「ま、いっか。また会うさ。なんせ“ロマンの女”だからな!」


 シドは黙ってその手紙を手に取り、紙の質を確かめた。

 触れた瞬間、目がわずかに細まる。

(……この紙、帝国製か。やはり、そういうことか)


 シドは封を丁寧に折り畳み、懐にしまった。

 そして、まだ夢の中にいる寅二郎を横目に呟く。


「またどこかで、ね……そう遠くない気がするな」


 窓の外では朝日が昇り、遠くで冒険者たちの喧騒が聞こえた。

 新しい一日の始まり――

 そして、知らぬ間に始まっていた“帝国の影”の物語。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ