表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/23

第八話ダンジョンはつらいよ③

 浅層を抜け、長い階段を下りる。

 空気はさらに冷たく、息が白くなった。

 壁に刻まれた古代文字が、

 薄青い光を放ち、ゆらゆらと彼らを導くように揺れている。


「ここからが本番だな……」

 シドが肩を回す。

 寅二郎は松明を持ち直しながら、軽口を叩いた。

「なあ、ダンジョンってのはもっとこう、

 宝箱とか、温泉とかあるもんじゃねえの?」

「ねぇよそんな観光地みたいな構造!」

「あるかもよ?」

 フジコが振り返る。


「古代カルナード式の墳墓には“生者の回廊”って呼ばれる区画があるの。

 侵入者を試すため、死者の記憶を幻として見せる……」

「……おい、それホラーじゃねぇか」

「ふふ、怖いの?」

「こ、怖くねぇよ! ちょっとゾクッとしただけだ!」


 軽口の裏で、三人の表情には緊張が走っていた。

 この空間そのものが、生きているような圧を放っている。


 やがて、石造りの回廊が開け、広間に出る。

 中央には黒い祭壇。

 その祭壇の上には赤黒く脈打つような光球が浮かんでいた。


「これがコアか、ならここが最深部だな」シドが祭壇を調べながら言った。

「なら、私の出番ね」

 フジコも祭壇に近寄ると、そこに掘られた石板に指を這わせた。

「ここを、こうすれば」その瞬間、


ガコンッ!


 祭壇の裏側にさらに地下へと続く階段が現れた。


「まさか!本当にあったのか」

「隠し部屋ってやつか」

「地図にはどこにもそんな情報は!」

「フフフ、情報は私の武器だと言ったでしょ?」


(カルナード王国に管理されているはずなのにあり得ない。

 もしや帝国から?あるいはダンジョンという性質からすればまさか魔王軍?

 いずれにせよこの女、やばい)


 そんなシドの心配をよそに寅二郎は肩を回しながら、笑い出した。

「行くしかねぇだろ?楽しくなってきやがった」

「何が出るかしらね。フフフ」二人は階段へと向かう。

 シドも二人に続いたが、その顔には困惑の表情が浮かんでいた。


 隠し部屋へと降り立った3人。先ほどと同じような構造。

 しかし中央には黒い祭壇。その周囲にひび割れた石像が並んでいた。

「……人間の形、だな」

「けど、何か妙だな。祭壇を見張っているような配置に思える」

「古代儀礼の一種ね」フジコが静かに言った。


「“見ることを許されぬ死者たち”……」


 その瞬間、空気が変わった。

 ピキィ、と乾いた音が響き、祭壇の上の棺がゆっくりと開いた。


「……来る!」

 フジコがナイフを構えた瞬間、棺から現れたのは――

 腐り果てた花嫁のような姿。

 ボロボロのヴェールに包まれ、黒い液を滴らせながら、彼女は立ち上がった。


「――ッ!」

 亡者の叫びが広間を震わせる。

「やべぇ、こいつ……ただのゾンビじゃねぇ!」

「“怨霊化個体”ね。封印が弱まって暴走してるわ!」

 フジコが叫ぶと同時に、寅二郎は前に出た。

「おら、来いや! お前も地獄の住人なら、俺が案内してやるよ!」


 一撃、二撃。

 剣がぶつかるたび、腐肉が飛び散るが――それでも止まらない。

 亡者の腕が寅二郎を掴み、地面に叩きつける。

「ぐっ……!」

「トラジロウ!」

「だ、大丈夫だ……まだまだァ!」


 フジコはその隙に走り出した。

「“見ることを許されぬ死者たち”……こうかしら?」

 彼女が石像の一つの目をつぶすと亡者がうめいた。


「効いている?そういうことか!」

 シドも続いて別の石像の目をつぶす。さらに亡者の動きが鈍っていく。

 寅二郎が動きを封じている間にすべての石像を目をつぶした結果、

 亡者が苦悶の声を上げ、体が崩れていく。寂しげな旋律のように、


 そして、静寂が戻る。そこに髪飾りだけを残して。


「終わったか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ