第一章 第八話 ダンジョンはつらいよ①
ダンジョン――古代の遺跡や戦場跡に淀んだマナが溜まり、魔物が湧く危険地帯。
一方で、金銀財宝や聖遺物も眠る“夢の穴”でもある。冒険者たちは今日も命を懸けて挑む。
リ・エスティーネ王国とカルナード王国の国境にある《地下墳墓》。
そこは冒険者たちでごった返していた。
「ほえぇ、これがダンジョンねぇ」
神殿のような入口と露店が並ぶ光景に、
寅二郎は荷物を下ろして感嘆の声を上げた。
「ここはカルナードの管理下だ。だから訓練も商売も、ぜんぶがうまく回ってる」
シドが周囲を見回す。
「魔物を産業にするってわけか?」
「そう。コアを残してマナを循環させる。定期的に魔物やアイテムが湧くんだ」
「おお、まるでギャンブルの穴だな!」
「だから“夢の墓場”とも呼ばれる」
寅二郎は拳を握った。
「くぅ、この雰囲気。オラ、わくわくしてくっぞ!」
「何だそのノリは。地図を買って、まずは浅層から潜るぞ」
「それだけでいいのか?アレが足りないんじゃないか?アレが」
「……何だよ」
「もっこりちゃんだよぅ!」
「この馬鹿!」
その時、背後から甘い声がした。
「ちょっとお兄さんたち。最深部を目指すって?」
振り向くと、赤髪の女が立っていた。
ぴったりと体に沿う黒のスーツ。様々な道具を収めたベスト、その前を留められないほど豊かな胸。
「もっこりちゃーーん!」寅二郎が跳ね上がり、
次の瞬間にはシドに足を掴まれ地面に沈んだ。
女は笑みを浮かべる。
「私はフジコ。最深部に“隠し部屋”があるって噂、知ってる?」
「隠し部屋?」
「誰も踏破していない部屋。もし本当にあるなら、最高のロマンじゃない?」
そう言ってフジコは屈みこみ、胸を寄せて寅二郎を覗き込む。
「ね?」
「その通り!ロマンだぜ、もっこりちゃん!」
「お願いがあるの」
「お、来たな依頼」
「私を最深部まで護衛してほしいの」
「任せろ!」
腕に柔らかい感触が押し付けられる。
「うひょーっ!」
シドはため息をついた。
(この女、只者じゃないな。観察力も言葉も鋭い。……まぁ、行くしかないか)
こうして、急ごしらえの三人パーティが結成された。
「俺は冴木寅二郎、こっちはシド。護衛の依頼うけるぜ」
フジコはウインクして言った。
「こう見えても、盗賊の素養持ちなの。足手まといにはならないわ」
寅二郎は親指を立てた。
「おうよ!ロマンとおっぱいのために、いざ突入だ!」




