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第七話 ゴブリン退治はつらいよ②

 件の洞窟の前につくと状況を確認した。

「やはり、いるな。見張り役だろう一匹が立っている」

木陰から観察していたシドがそういうと、

「二人はここで待っていろ。俺たちで突入する。いけるな?トラジロウ」

「おうよ、待ってろもっこりちゃん!」

 道すがら洞窟内部の構造を聞いてみたところ、普段は子供たちが秘密基地と称して遊んでいるくらいで、それほど深くないらしい。そこでシドは速度を重視した。

「今の俺たちなら、ゴブリンが束になっても負けやしない。

 彼女の身に不測の事態が起こる前に片を付けるぞ」

「おう、待ってろもっこりちゃん!」もっこりちゃんを何回言う気だ、

 とため息を付きながらシドは見張り役だったゴブリンを切り捨てた。


 そして、奥へ進むとすぐに拓けた場所へ出た。

 すぐに鼻を衝く腐臭、饐えたような匂いが充満していた。ゴブリンは10匹いた。見ると牛や豚だろう死骸が積んであり、

「見つけた!マリィだ。まだ無事だ!」

 引きずられたのだろう衣服は破け泥だらけだが、目立った外傷は無さそうだ。


「助けて下さい!お願いです!」両手を拘束されたままマリィが叫んだ。

「おう!噂通りのもっこりちゃん!」寅二郎が1匹切り捨て「待ってろ!」2匹「今すぐそっちへ」3匹切りつけたところで、シドも3匹片付けていた。

「ゲギャ⁉」残りのゴブリンたちは逆上したのかマリィに襲い掛かろうとした。

「遅い!」シドが短剣を投げつけようとした瞬間、

「やべぇ!」寅二郎も持っている剣を投げつけようとしていた!

 剣に光を纏わせながら!

「おおおっ!」気合もてんこ盛りで!


 ブンっと音を立て光の線を描きながら、寅二郎の投げた剣はすでに頭に短剣を生やしたゴブリン4匹を消し飛ばし、洞窟の壁に激突した。


「馬鹿野郎!崩れるぞ!」


 シドはマリィを抱え、剣を拾っていた寅二郎と三人で洞窟を飛び出した。


 三人が洞窟を抜けた瞬間、音を立てて崩れた。

「うむ、任務完了だな」舞い上がる土煙を背にそう宣言している寅二郎にシドのお説教タイムが始まった。

「見てただろう!ゴブリンなら俺の短剣で仕留めていただろう?なのにあんな馬鹿力で投げやがって、洞窟が崩れちまっただろうが!」

「ああ、うるせぇうるせぇ、

 そんなことよりどうだった、もっこりちゃん?俺の雄姿は」

と寅二郎が振り返ると、


「ああ、よかったお姉ちゃん!」マリィに声をかけるりりィ。マークとマリィは抱き合っていたが、やがてキスを始めた!「ん、んぅ」喘ぎ声をあげながらの濃厚なキス。「ん?」寅二郎の前でちゅぱちゅぱキスを交わす二人。「んん?」愕然とし始めた寅二郎にりりィが言った。「言ってなかったっけ?二人は婚約者なんです」


寅二郎は胸いっぱいに息を吸い込み、叫んだ。


「聞いてねぇぇぇ!!!」


「ハハハハっ」シドは腹を抱えて笑い出した。

 ただ面白かっただけでなく、どこか安心した心持も含めて。


 そして今だにキスし続けていた二人を引きはがし、皆でギルドへ報告へ向かったのだった。


「――依頼完了っと!」


 ギルドの受付嬢が書類に判を押す音が、やけに軽やかに響いた。

 報酬袋を渡されると、寅二郎は満面の笑みでそれを掲げた。


「おおっ!これで晩メシは豪華にいけるな!牛だ、牛!いや馬刺しも!」


「お二人の新しい門出に、とかなんとか今回の報酬ほぼほぼ渡したの誰だよ。

……馬車借りる金、もう消えたじゃん。」


シドの冷静な指摘に、寅二郎は一瞬固まる。

「……え? いや、もっこりちゃんのために――」

「その“もっこりちゃん”って言うのやめろ。」


ギルド内がクスクスと笑いに包まれ、受付嬢まで吹き出す。


「お二人、本当にありがとうございました。リリィさんも無事帰りましたし

 ……婚約者さんと仲直りしたそうですよ。」


「……そうか。よかったな」

寅二郎は一瞬だけ真顔になり、ふっと肩をすくめた。

「ま、幸せならそれでいいさ。俺は、またどっかのもっこりちゃんを――」

「やめろって。」


シドが頭を抱え、寅二郎はケラケラ笑った。

窓の外では、夕焼けが街を茜色に染めている。

その光の中、ふたりの影が並んで伸びた。


「なあ、次はどこ行く?」

「ちょうどカルナードとの国境あたりにあるダンジョン、

《地下墳墓》に潜ろうと思う」

「ダンジョン!いいね。これもまた定番だな」

「珍しく乗り気じゃないか」

「俺はロマンに生きる男だからな。

 奥深くに眠る財宝で一攫千金、その金で……グフフ」

「その先は、もういい」


 そう言いながら、寅二郎は肩の荷物を担ぎ直した。

 どこか楽しそうに。まるで、放浪こそが生き甲斐だと言うように。


「行くか、相棒。」

「……ああ、行こう。」


 ギルドの扉が開き、夕風が二人を包み込む。

 金と煙草と汗の匂いが入り混じった旅路が、また始まった。

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