第五話 勇者PT初討伐に行く③
「……緊張してる?」
リルルが小声でアンナに尋ねる。
「してないって言ったらウソになるね」
アンナは笑って見せた。
けれどその笑顔の裏で、手のひらは冷たく汗ばんでいた。
アリアが短く指示を出す。
「リルルは後衛、ヤスコは左翼。ユキナは祈りを維持。
アンナ、突撃の合図をあなたが出して。」
「了解」
アンナは剣の柄を握りしめ、深呼吸した。
(王国の人たちに……勇者の力を見せてやる。)
その視線の先で、ライネルが腕を組んだまま静かに見ていた。
氷のような眼差し。そこに感情はない。
森を進むことしばし、ついに茂みを割って、五匹のゴブリンが現れた。腐臭と共に、黄色い目が光る。アンナの心臓が跳ねた。
「来るぞ!」
アリアの叫びと同時に、戦いが始まった。
盾と棍棒がぶつかり、金属音が森に響く。
リルルが一歩下がり、短く息を整えた。
「赤き理を司る炎の精よ──
その熱量、我が手に集いて形を成せ──
迫り来る敵を焼き払え!
《ファイヤーボール!》」
詠唱が完成すると同時に、彼女の掌から眩い炎の弾が放たれ、
茂みから飛び出したゴブリンの一匹を爆ぜるように焼き倒した。
ヤスコが風を読むように回り込み、短剣で喉を裂く。
「女神よ——その慈愛を貸し与えたまえ…!」
ユキナは震えながらも手を組み、必死に祈りを紡ぐ。
「光よ、穢れを退け護りの壁となれ…!」
ゴブリンが迫る中、彼女の声はかすかに震え、しかし途切れなかった。
「仲間を包み、傷つくことを許さぬ盾となれ——
《サンクチュアリ・シールド》!」
ふっと眩い光が広がり、温かな防護の膜が全員を包む。
「アンナ、今だ!」
アリアの声に背を押され、アンナは踏み込む。
剣が唸りを上げ、最前の一匹を切り裂いた。
——その瞬間、血飛沫が頬にかかった。
温かくて、生臭い。
倒れたゴブリンの目は、まだ開いたままだった。
「……っ!」
アンナの呼吸が乱れる。
その刹那、残りの一匹が跳びかかる。
「危ない!」
アリアの声と同時に、リルルの次の炎が走り、ゴブリンを焼く。
焦げた臭いが漂う中、アリアが最後の一匹にとどめを刺した。
戦闘、終了。




