episode72 最期& 千年前のこの地にて その3
目の前で虚な表情で座り込むミドラ
そして案の定僕は頑張ってくれていたらしく、想定通り左腕がなくなっている
どうやら勝ったらしい
首を切り落としてその死体を燃やす
ミドラの能力の弱点…ていうか致命的な欠点なのだが
この女にとって僕やテオドラを喰べることなんてきっと果実感覚なんだろう、バスケットの中からより食欲をそそる美味しそうな、熟れている果実を選んで食べだけ
けどフルーツバスケットの中に、もし決して口にしてはいけない果実があれば?
食べてはいけない毒林檎、けど本人はその存在を知らない
甘美な果実を食んだつもりが一躍量産型の悲劇のヒロインが出来上がる
僕の取った作戦はシンプルだ
自分を薬物漬けにして廃人にする、そしてテオドラにミドラの近くに転送してもらう
僕は自分が廃人になろうと刀くらい振れるし、なんなら単純な作戦くらい簡単に実行できると思っている
そしてその結果がこれだ
廃人になっていた間の記憶はさっぱりないが僕は当初の予定通り左腕を失っており、そしてミドラは廃人になっていた
どうやら僕は廃人になっても戦うことだけはできたらしい
「テオドラ?これ治せる?」
僕は肘から先のない左腕をテオドラに見せる
「……この怪我も作戦通りの結果?」
「…?そうだけど…僕の記憶を喰わせる必要があったんだから」
もしテオドラが治せなかった場合一番リスクが低いのは左腕だ
そのため最初から左腕を失うつもりで作戦を立てていたのだが、テオドラの視線は「こいつ自分の腕がなくなる作戦を立ててたのか…?」みたいなやや引いた感じだ
もちろん僕も最初は「こいつ廃人の記憶食ったらどうなるんだろ…」程度だった
けどテオドラの力が治癒能力だったことで「絶対こいつ僕を喰うつもりだから(自分を)廃人を食わせてみよう、どうせ後から治せるし」ってなっただけだ
確証はなかったけどミドラの能力は比較的最近の記憶から解析して自分のものにしていく、そして僕の最近の記憶は自分が廃人になっていた間の記憶だ
そしてその記憶を奪って自分のものにしたミドラは廃人になって、僕が作戦を覚えているということは廃人になる以前の記憶は奪えていないことになる
「……シチューを作る」
「…え?」
「もちろん食べる、……食べない?」
「い、いや、食べさせてもらいます」
テオドの背中を追う
もしかしたら僕の勘違いかもしれないけど、テオドラが振り向く際にクスリと笑ったように見えた、気がした
ーー
……今何か…?
……………大罪の大権を示す灯火、そのうちの一つに灯っていた小さな、橙色の火が消えていた
橙の権能はいずれ『暴食の大権』に成る権能だ
なぜ?『暴食』は大罪の中で最強を『憤怒』『傲慢』と争うほどの戦闘向きの大権のはずだ、……魔王にでも遭ったか?いや、そんなことはどうでもいいか、確証の持てないことにいくら思考を費やしようと無駄なだけだ
しかし……いつになったら七つ灯火が大罪の業火で灯る日が来るのか




