episode64 千年前のこの地にて その2
傭兵についてかい?
う〜ん、…難しいな、僕だって千年の前のことを完璧に覚えているわけじゃないんだ、顔だって鮮明に覚えていない
善人だって?いやいやそんなことない、善人なのは始まりの聖人と呼ばれている彼だ
傭兵は善人じゃない、…ん?悪人でもないよ、彼は白でも黒でもない、正しくグレー
もし始まりの聖人がいなかったら…、僕らと敵対はしなかっただろ?むしろ僕らの仲間になってたかもしれないな
もしそうだったら『暴食』の大権も破壊されていなかったし、もしかしたら新しい大権が生まれてたかもしれない
いやもしかしたらだよ、けど本当にそうだったらなぁとは今でも思うよ
やっぱり始まりの聖人が生まれたことは人類史における分岐点だ、彼のおかげで今の人類があると言っても過言じゃない、けど可哀想なことに彼の功績のほとんどは今に伝わらなかったんだ
大権を破壊できたのは運が良かったから?
『怠惰』がそう言ってたのかい?ふふ、まぁそうだね、あの結果は運が良かっただけ、そうとも言える、けど運も大切だろ?
今とあの時代だと断然あの時代の方が強者が多かったな、今の時代の人間は少し恥じた方がいいね
特に傭兵の子孫…、魔王が可哀想だよ、数少ない自分と戦える存在…その子孫がまさかあそこまで落ちぶれるとはね、僕もこっそり覗いていたけどあれは僕も酷かった、……あの時ばかりは怒りが湧いたよ、顔に面影を感じるのも怒りに輪をかけた、国を滅ぼしてやろうかと思ったよ
もっと傭兵について聞きたい?
僕はそんなに詳しくないよ、千年前に一度戦っただけの相手なんて
それに話すなら僕は始まりの聖人の方を話したい、だってあれほど面白い人間なんてそういないよ?あぁ彼にも子孫がいたら退屈しなかったのに…
まぁそういう感じかな、僕はどっちかというと歴史に興味があるんだ、あそこの国がこんな政策をしたとか、あそこは数百年に一度の大飢饉が起きてたとか
傭兵や魔王について聞きたいなら…『怠惰』に聞けば良いんじゃない?
あ、そういえば精霊がいたな、水の精霊、名前は…忘れたけど
もし生きているならそいつから聞き出せば?どうせ君はあの時代の記憶が欲しいだけだろ?純粋な興味ならまだしもそういう無粋な考えで僕らの手を煩わさないでほしいな




