episode63 精霊界
ミリーらと別れてから僕はいわゆる放浪していた
特に何も目的はなく、訪れた街で依頼を受けて、土地の名産品を食べて、少し本を読んだりしながらぶらぶらと歩いていた
そしたらちょっと迷ったかもしれない
「喉カラカラだぁ〜…」
これからどうしようかとボーっと考えていたら道に迷った、しかも運の悪いことにここら一体は魔素が濃くて魔術が上手く使えない、つまり水魔術を使って水を飲むことができないってことだ
(ロララが…魔術師がいれば…水が飲めるのに……)
仲間の大切さを再度確認しながら森を歩いていく、もしかして迷った?と思った瞬間に引き返しておけばよかったのにもう戻るに戻れない場所まで来てしまった
「……チッ」
茂みの中から飛び出してきた小狗竜を斬る、これで三度目だ、さっきからずっと定期的に森の魔物が襲ってくる、もしかしたら今からでも良いから戻ったほうがいいのかもしれない、いや、面倒だから引き返すのは嫌かも
(本当にここ終わってる、魔素が濃くて魔眼も使えないし……いやこれ本当に魔素が濃くてか…?なんか変な感じがするし……)
魔素が濃いせいで変な感覚になってきた、頭が回らない、ちょっと眠くなってきた
「……あ、…や、ば…」
平衡感覚がなくなる、それと同時に地面が目の前まで迫る
濃い魔素は人体へ悪影響を与える、そして自覚した時には手遅れな場合が多い
ルカは気を失った
ーー
気絶したルカの目を覚ましたのは波の音だった
規則性を感じさせる、けれど同じものは二度とない波の音、そして潮の匂い
「……勘弁してよぉ〜」
本当に勘弁してほしい、同じような展開を前にも経験しているのだ
しかも困ったことに今回は確か内陸部を歩いていたはずだ、なんかもう前世で大罪でも犯したのかってほどの頻度でこういうことが起きている気がする
ひとまず体を起こして伸びをする、そして目を少し擦ってボヤけた視界を明瞭にしてから口を開く
「で、君は誰なの?」
フードの中に入った砂を取り除きつつ目の前の僕を見下ろして立っているナニカに向けて尋ねる
見たところは人だ、ただの人、少し普通よりも顔が整っていることを除けばパッと見は只人、いや少し森人の血が混ざっているかもしれないけど人なのは間違いない
けど右目に映っている情報がどうにもそれを否定する
「……旅の人、あなたはどうしてここに?」
「ガン無視かぁ〜、まぁ良いけど」
黒髪黒目、性別はどっちかわからない、そもそも性別という概念がないかもしれない
そして気になるのは気配の少なさ、多分意図的に消してるとかじゃないんだけど目の前にいるのに目を閉じれば本当に目の前にいるのかわからなくなるほど自然だ
一つ心当たりのある種族がある、いや種族というか存在だが
「精霊?」
「……只人、あなたはどうしてここに?」
どうやら精霊というのはあっていたらしい
けど僕の言葉を不愉快に思ったらしく表情の変化はなくとも不機嫌になったことが言動と雰囲気から伝わってきた
「重度の魔素酔いで気づいたら、でここは?」
「ここは精霊界、そもそも人間界からは入れる道理は……まぁ良い、人間界に繋ぐ」
そう言い右手を海の方に向ける、けど何も起きない
何が起きているのかわからず顔を見ると無表情ながらも少し恥ずかしそうな顔をして雨量な気がする
「千年くらい繋いでなかったから……やり方忘れた」
やり方を忘れた、そう言って僕に背を向けて海と反対方向の、森の方に歩き出そうとした、それを慌てて呼び止める
「え、帰り方は?」
「………わからない、好きにしたらいい」
好きにすればいい、そう言いながら海の方を指差す
まるで泳げみたいなニュアンスが伝わってくる、水平線しか見えないのに
とりあえず図々しくも好きにしろと言われたので後ろをついて行った、すごい嫌な顔をされたが




