episode58 コロシアイ
ルカ対ロビン、ルカは最初から殺す気でかかっていたが意外にも苦戦を強いられていた
「キェ!!キェッ!!」
「…チッ」
(厄介さは知っているつもりだったけど…ここまでなのか)
こちらはまだ一撃も負っていない、代わりにあちらにも一撃も与えれていない
原因は得物の違い、こちらが刀なのに対して相手は槍、それもこちらがやられて嫌なことを十分に理解してそれを実行できるほどの実力者だ
(特に突き技がヤバいな、僕もよく使うけど自分で受けるとヤバさがよくわかるな)
ルカが試しに呼吸をずらしてみる、虚をついて一気に自分の間合いまで詰めようとしたが突きが飛んできてそれを許さなかった
「このまま一度も近づかせずにじわじわと削り殺してやるぞ、眼帯」
笑うロビンにルカも笑いながら刀を構える
「ふふ、上手いね、間合いに入らなければ攻撃が当たるわけがない、リーチを生かしたいい戦い方だ、……けど綱渡みたいな闘い方だ」
「何…?」
ルカは続ける、まるで追い詰めているのはあくまで自分で勝つのが当たり前であるように振る舞う
「疲れるだろ?その戦い方、摩耗するだろ!?追い詰められるだろ!?しんどいだろ!?痛いだろ!?怖いだろ!?気持ちくないだろ!?そりゃそうさ!!だって一度でもミスったら君は僕に殺されるんだから!!」
(……何を言ってるんだ?こいつ、一度でもミスったら死ぬのはお前もだろ…?)
ルカに嫌悪を浮かべるロビン、けれどルカはそんな事気にしない、嗤う、ただ嘲笑う
まるで気でも狂ったかのように
「今から少しずつ君が考えないといけないことを増やしていってあげる、まず最初に床に感知型の炎魔術を仕込む、僕が踏んだ地面は踏んだら足が焼けるよ?次にタレットを増やす、水球を打ち出し続ける擬似タレットだ、どんどん考えることを増やしてあげる、君が綱渡をするなら僕は君を横から全力で押す」
(だ、だめだこいつ…壊れてる……キューベル様、助け––)
ルカの輪郭がぼやけたと思ったら消える、膝抜きによる動きだしで限りなく予備動作をゼロにして斬りかかる、宣言通り地面に感知型の炎魔術を仕込みながら斬りかかる、焦りでロビンの動きが鈍る、水球が宙に無数に浮かぶ、その直後水球が一つずつロビンに向かって放たれる、殺傷能力はなくとも一瞬動きが鈍るため避けざるを得ない、鈴の音が鳴る、地面が急に凹んで足を取られる、片手を斬り落とされながらも無理やり距離をとる、鈴の音がなり咄嗟に足を退ける、けれど何も起きずに負けたことを感じる、抜刀術で転瞬のうちに首が落ちる
「……意外と簡単に鈍ったな、精神的に弱っていた?洗脳ぽかったし中から−–」
最後の最後にロビンの頭が晴れる、キューベルの呪縛から解けようやく自分の体が解放されたことに気づく、そして負けれたことに感謝をする
(あ……とう……青……)
赤龍騎士団二番隊隊長ロビン
指名手配後、誰も手にかけることなく死亡
ミリーは作戦が思いの外うまくいっていることに驚きつつも冷静に立ち回る
「なんで魔法を使わないんだい?魔導士さんよぉ!?」
「考えましたね…」
悔しそうにする魔導士の顔を見てルカの言葉を思い出す
『あの魔導士の魔法の発動条件……、正確には名前だけじゃないような気がする、いやあまり過度な期待はしない方がいいけど、例えば正午の時あの魔法は使えるのか、本人が偽名を名乗っているけどその本名を本人以外誰も知らなかったらどうなるのか、はたまた名前を本人すらも忘れてしまったらどうなるのか』
『それがわかったところでどうするんだよ、俺はお前の納得のための口論には付き合わないぞ?』
『––顔を隠した人間に魔法を使えるのか?』
『……試すのは簡単だな』
ルカの考察は当たっていたらしい、顔を隠した人間には魔法は使えない
おそらく魔導士のイメージの問題だろう、魔法はイメージが大きく結果に影響する
そしておそらくこの魔導士は顔と名前を一致させる必要がある、もしかしたら親しい人間にはその必要はないかもしれないが一度戦っただけの相手の顔を鮮明に思い出すのは不可能、つまりこのふざけた仮面作戦は有効だったらしい
「一対一、広い場所、完全に状況は揃ったな」
ひとまず土俵には立った、ここからこいつを封印するのが俺の仕事だ




