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龍と魔法がありふれたこの地にて  作者: クラムボン美少女概念
黒の権能と死神
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episode53

アセトの街で契約を結んでから52日後、僕たちは見事に依頼を完了した

僕たちはレオを王都まで送り届け、レオは王女様の病気を治した


「今回の依頼はやばかったな?」

「……まだ僕の仕事は終わってないけども」

「……?」


リリー教の大神殿を砂宝石のメンバーと共に歩く、シスターに案内された部屋の中に入ると疲れた様子のレオが僕らを迎えた


「…私の仕事は完了した、君たちのおかげで王女殿下の容体は安定、時間と共にまた元気な姿が見られるだろう」

「あんまりそのことには興味はねぇ、俺達の唯一の興味は依頼報酬ただ一つだ、銀翼魔術師団やあんな魔導士(化け物)を相手したんだ、当然色をつけてくれるんだろうな?」


口ではそんなことを言いつつもミリーは怪我した少年をあやすために変顔を披露するくらいの男だ、全く知らない赤の他人とはいえレオに縁がある人物の容体を心配しないわけがない



「当然だ、前金の宝石に加え全員に1億リリーの追加報酬でどうだ?」

「わかってじゃん」

「やったー!!二ヶ月くらいずっと御者台に座らされていた私がようやく報われたぁ!!」


気前よくポンッと合計で5億リリーを手渡すレオに皆が喜ぶ

けれど僕はそれをレオに返した


「レオ、私の依頼報酬は違うものにしれくれないか?」

「…まぁいいぞ、君には特に助けられたからな」


レオはここ二ヶ月間ずっとこのメンバーで四六時中一緒にいたためある程度の癖や傾向を掴んでいる

たとえばミリーは朝が弱いとかアンズは機嫌が悪い時は暴食をするといった癖

そしてルカの癖で一番印象に残ったモノは怒った時や真剣な時に出てくるまるで平民とは思えないほど綺麗な口調になること

そして今ルカのその癖が出ているのだ、レオも真剣に返す


「……まずレオが私たちに依頼をする前に君を襲ったのは帝国の者ではなくあの魔導士の仲間だ、これは薄々勘付いていたと思うが銀翼魔術師団は君を捕縛するのを目標に、魔導士の男の仲間を君を殺すことを目標に動いていた」


「まぁ…薄々変だとは思っていたが…」


「そして銀翼魔術師団の動機はとある女性が君にしか治せないであろう病気を患ってしまったからだ」


「……」


「私への依頼報酬はその女性への治療行為、1億と少し、足りぬのなら私の懐からも出しましょう」


ルカは懐から今までの冒険者として働いて貯めた貯金の最低限を残した虹星硬貨2枚…2億リリーを机の上に置いた

ルカの行動を見たレオは目頭を抑えて大きくため息をついた


「すぅ…、……一度襲ってきた相手を信じるのは難しい」


「私が間に合っていなかったらあの魔導士に君は殺されていた、そして私が間に合ったのは銀翼魔術師団の一番隊隊長に送ってもらったからだ、間接的に君は彼女に助けられていることも勘定に入れてくれ」


僕も自分で説得力のないことを言っていると思う

僕は一度剣を抜いた相手は全員確実に殺してきた

改心するといった虫のように盗賊を殺し、初心者冒険者を騙して魔物に殺させていた法で裁けぬ冒険者を殺した

例外は女と子供、剣を向けられても笑って許せる強い男になれと父に育てられたからだ、


「……私も困っている人間は助けたい、しかしそんなものは作り話で私を騙そうとしているのではないかと疑ってしまうのだ、……随分と汚い人間に成ってしまったな、……だから私が帝国を信用できるように騙してくれないか?」



自虐的に笑うレオ、レオの生まれで他人を疑わないのは無理がある

むしろレオは真っ当に育った方だ、他人の悪意を知りながらも優しく育ったと思う


ルカは自分の覚悟を示すために右手の手袋を外した

右手には精霊神に誓いを立てた証である鎖の刺青を見せた


「……ッ!?」

「彼女達を信じた僕を信じてほしい、ってありかな?」


驚くレオを見て無邪鬼に笑うルカ、口調もいつの間にかいつものものに戻っていた


神に誓いを立てると言うものは簡単に行えるものではない

もし神に誓った内容が偽りだった場合、誓った内容にもよるが最上級の罰で死、一番軽いものでも利き腕が焼かれて使い物にならなくなり治癒魔術でも治せないからだ


そのため一切の偽りがなかった時でも神に誓うなんて行為は躊躇われることが多い、それくらい重いものなのだ、誓いを立てるという行為は


「……君への報酬はそうしよう、しかし条件がある、私がその女性を治すまでの期間君が私をあの魔導士の男から守ることだ、それができるなら私もリリー様に誓おう」

「ありがとう」


レオは参ったと両手を上げた

ルカが立てたのは誓約の誓い、契約を行使できなかった時点で破った方に罰が下り誓いを立てた相手にもその事実が伝わるもの

どういった条件にしたのかわからないが人の命が関わっているのなら罪の大きさは最上級のモノ、私が断った時点でルカは死ぬ可能性がある

この二ヶ月間も一緒に命の綱渡をしていた相手が死ぬ可能性があるのに断れるわけがない


「何勝手に話を進めてるんだ、馬鹿野郎」


ミリーはルカの頭を叩いた

そしてその後にレオの頭も叩いた


「レオ、こいつ(ルカ)は臨時とはいえ今は俺たち砂宝石のパーティーメンバーだ、依頼報酬が完全に払われるまでは俺を通せ」


ミリーはそう言ってルカの方を掴んで自分の方に引き寄せアピールをしながらレオにそういった、それを聞いた砂宝石のパーティーメンバーもうんうんと頷いている

そしてレオに言いたいことを言ったミリーがルカの頭をもう一度叩いた


「お前もだバカが、同じBランク冒険者と言っても最近酒が飲めるようになったクソガキの癖に何俺より格好つけてんだよ、目の前に頼れる大人のお兄さんがいるなら頼りやがれ、俺はお前がギルドの机と同じくらいの身長の時からお前を知ってるんだぞ?」


「まぁランクは二年で追いつかれたけどね」

「黙れ!」


軽口を叩くアンズに怒るミリー、それを見てルカは動揺する


「ミリーが言いたいことはつまりね?ルカがまだ残って護衛を続けるなら俺たちも当然残って護衛を続けるって言ってるのよ、恥ずかしいからいつもの口調でいえないのは許してあげてやって?」

「アンズ!いらんことを言うな!」


ルカは昔から大人と同じ立場に立っていることが多かった、クドからは仕事の手伝いを任され気づいた時には班長という立場に立っていた、辺境伯の三女である母からも紳士教育と上に立つ者としても教育を受けており子供ながらに下手な大人よりも責任感はあった


そんなルカにとって面と向かってお前はまだ子供なのだから大人を頼れと言ってくれる人は今までいなかったのである


「はぁ!?お、お前何泣いてんだよ!?病気か!?なんかまずい病気なのか!?」

「ルカって泣くんだ…、腕折れても泣かないのに…」



何かを言っている砂宝石のメンバーだったがすでに視界は涙で歪んで何も見えていなかった

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