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龍と魔法がありふれたこの地にて  作者: クラムボン美少女概念
黒の権能と死神
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episode51

初めての空の旅は一瞬だった

僕は魔眼を常時完全発動させて僕の魔力を治癒魔術の応用で隊長さんに流す、それだけと言っても目隠しをした人に指示を出して針に糸を通そうとするくらいの難しさと集中力を要する


「ここまでだ、帝国の国家認定魔術師次席である私が王国領土に踏み入ると面倒な政治問題に発展する、すまないな」

「ありがとう、皇女殿下の件、僕ができることは全てすることをリリー様に誓おう」


女神リリーに誓いを立ててレオを説得することを隊長さんに伝える


「降りるぞ、舌を噛まないように気をつけ…」

「いや、魔術で思いっきり投げてくれ」

「了解した」


ルカの頼みをノータイムで了承するエア、そして飛行魔術による勢いを殺さずに風魔術で勢いを増幅させてルカを射出させる準備をする


「負けないでくれよ?」


クールに僕にそう言う隊長さん

やっぱりちょっとこの人好きかもしれない、実は僕のタイプはクールでかっこいい美形の女性かもしれない、だからちょっといつもより格好つける


「負けないよ」


そうルカが返すとエアはクスリと笑い、魔術でルカを思いっきり飛ばした


仰向けで一面の青空を眺めながら高速飛行するルカは真面目な顔で思案する


(……思ったより強く投げたな)


予想よりも思いっきり投げられた、そのため想像の数倍くらいの時速で僕は空を飛んでいると思う、そして多分この速度なら城壁とかにぶつかれば僕が勝って城壁を崩せると思う

まるで攻城兵器だ、かの有名なキノクルの防衛戦もきっとこの方法を使えば連合軍はピーリア王国を攻略できただろう


(いや、今はそんなことより着地の方法を考えなきゃ)


人は当然この速度で地面に激突すれば死ぬ、一本角の高位竜の突進をもろに受けて生きていた僕でも多分死ぬ、ていうか純粋な只人なら死んでおくべきだ


(魔力操作で空気抵抗を増やす、風で進行方向と逆方向に推進力を作って減速、空を蹴って角度の調整、……あぁッ!!髪が痛いッ!!)


髪が勢いよく顔に当たるのを感じながら地面を眼前に捉える

そして地面に対して足を鋭角に突き出し、足の裏から風魔術の“浮遊”で反発を得て地面を何度も踏んで勢いを徐々に殺して地面に着地する

もし僕が有翼族なら今の僕の着地はさぞ映えただろう、題名はきっと『地上に舞い降りた熾精霊』で決定だ


「僕が拘束されなかった時の集合場所はちゃんと決めていたんだよなぁ〜」


策と言うものは練れば練るほど良い

僕は集合場所に決めていた街に向かった








ーー

合流は思いの外簡単に叶った、いやそんなことはない

合流ができたのは王都一歩手前の山道、金属のぶつかる音に殺気の応酬、そして案の定右手の甲に刻まれた紋章をもつ集団との戦闘


「……ミリーが苦戦してる?」


ミリーは大抵の人間を圧倒できるフィジカルを持っている、なのにミリーが劣勢を強いられている


レオはすでにいつもの定位置について身を守っているので安心する

しかしそれよりも目についたのが後方で腕を組んでいる男だ、一人だけ格好が違っていて司祭が闇落ちしたみたいな格好をしており右手にはラッパの描かれた魔導書らしきものを持っている


(……魔法だろう、魔導士で確定だな)


精霊と契約、古の魔導書を手に入れる、魔術を極め魔法の域に昇華させるなどの狭き門を通ったものだけが使える超常の力…魔法

春歌の斬れると思ったら斬れるという能力と同じ次元の力だ


加勢しようと思っていたが身を隠す、僕が姿を現すのはあの魔導士の魔法の能力が判明した時、殺せると確信した時だ、もしあいつの魔法が取り返しのつかない能力だった場合まずいことになる

それまではミリーに頑張ってもらうことにする



ミリーが取り巻き数人を相手取りながら魔導士に攻撃を仕掛けている間にアンズらはしっかり数を削った上で死体を燃やしている、徐々にだが戦況がミリーらに有利になっていっている


「ヘケッ!!粘りますねぇ〜?」

「気色の悪いやつだ」


とうとうミリーの大剣が魔導士の男に迫った

大剣を軽々と振り回すミリーに魔導士はそれを魔導書で防いでいく


(……やっぱり古の魔導書か、不可壊の魔導書を上手く使って来ている)


しかし不可壊の魔導書で防ごうがミリーの怪力を完璧に防げているわけではない、だんだんと自分のペースに持っていくミリー

するとそんなミリーに先ほどミリーが切り伏せた剣士の男が後ろから切り掛かった


「ミリーッ!!」

「––ッ!?クソがぁ!!」


寸でのところで不意打ちを躱して剣士にとどめをさし再度魔導士に剣を向けた


(……?)


魔導士の男の雰囲気が変わった、先ほどまでずっと自分から攻撃を仕掛ける気配のなかった魔導士の男が魔導書を開いた


「ヘケッ!ミリーですか、良い名前ですね…実にいい名前です…」


魔導士が魔導書に振れながらミリーの名前を復唱する

何か起きると思って身構えたミリーだったが何も起きなかったため馬鹿にしたように口を開いた


「はっ!何かと思えば−−痛ッ!?」

「ヘケッ!自分の大剣で斬られる気分はどうですか?」


ミリーの背中から血が飛び散った、そしてミリーの影から人型の…ちょうどミリーと顔が無く真っ黒なことを除けば瓜二つな生き物が出てきた、そしてその手には大剣が握られている


(おそらく対象と同じ性能の分身を作る能力、そして発動条件は名前を知られること)


名前を知られなければ良い、それだけだ

ルカはフードを深く被ってから飛び出す、そしてミリーにトドメを刺そうとするみりの分身よりも速く魔導士の首を貫いた


「ヘ、ケ…?」


そしてそのまま刺した刀を振り上げて首から頭蓋を一直線に切り裂いて脳をぶちまける


「…ッ!?ル––」

「名前を呼ぶな!!」


咄嗟に声を遮って名前を呼ばれるのを防ぎ魔導士の男を魔術で燃やす

頭蓋が完全に割れて完全に死んでいるのは確実なのだがこいつらは燃やしておかないと安心できないので念のためだ


「よし、ミリーだいじょ……ッ!?」


背中を切られてミリーに声をかけようとする、けれどミリーの影から生まれた分身がまだ消えていない、動きは止まっているが分身が消えていないのだ


(…は?魔術は術者が死ねば消えるはず、それは魔法も例外でないはず…)


ルカの疑問を晴らしたのは一つの笑い声だった



「ヘケ、キィエキェキ゛ェ゛キ゛ェ゛エ゛エ゛エ゛!!!!」


後ろを振り向く、すると今さっき頭蓋を切り裂いた上に燃やして灰にしたはずの男が立っていた


「……は?」

「ヘケッ、容赦ないですね?二世紀ぶりくらいに死にましたよ、あれ三世紀でしたっけ?」


何事もなかったように、まるで何事もないように死を語る魔導士の男

僕は初めて人間に怖いという感情を抱いてしまった

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