episode47 裏の裏の裏
イリオスの街は非常に広い、そして人の出入りが一日で数百を超える上に出入り口が数十を超える
そのためエアが選んだ手段はルカらの馬車に刻まれた自分の魔力の探知するという荒技、街の中を馬車が通れる道なんてそれほど多くない、魔導列車さえ塞いでおけば王国に入る方法は馬車、もしくは徒歩
そしてもう一つはレオン・エンジムートを探すのではなくその護衛である赤髪の大剣の男と白銀の眼帯の男のどちらかを探すこと、両方目立つ容姿、それも赤髪の方は長身ということもあり白銀の眼帯よりも目立つ
レオン・エンジムートに一人で王国までいく力はないため極論護衛を全員捕縛すれば後は消化試合になるのだ
「あ、」
「……見つけた」
街を歩いていると赤髪で大剣を背負った男の方と目が合った、どうやら呑気に買い食いをしていたらしく間抜けな大口が目立つ
ひとまず通信用の魔道具を使用して部下に状況を伝えて追跡を開始する
「お前もこの人混みで魔術は使えんだろ!」
「よく回る口だ」
確かに大規模な魔術は使えない、しかし空を飛んでしまえば追跡なんて簡単すぎる
こちらが空を飛んでいるのを目にした赤髪の男は路地裏の方に入って行った
ひとまず部下に赤髪の男が入った路地裏の出入り口を全て封鎖させ、魔力の探知を再開する
(あの男は囮である可能性が高い、これみよがしに姿を見せたのが怪しすぎる)
あんなアホ面を晒そうが私の魔術を大剣で叩き落とした猛者だ、罠の可能性が高い
「……ない?、いやどこかにあるはずだ、あの男がいるのに他の仲間がいないなんてあるのか?」
索敵範囲をどれだけ広げようが街の中には自分の魔力の痕跡がある馬車がない
そこでようやく気づいた、自分が魔力の痕跡を利用して索敵をするために駅から離れ街の中心にいることを
「狙いは私のいない駅か…!」
一点突破を狙われれば魔導列車に乗られる可能性が高い、そしてあちら側の勝利条件はレオン・エンジムートを逃すこと、それだったらあの赤髪の男が姿を現したことに納得がいく
すぐさま通信具を起動して駅に配置している部下に告げつつ自分でも向かう
「絶対に碧眼の男を通すな!列車を破壊してでも乗せるんじゃない!」
駅の中に入るとまだ何も起きていないらしく部下が敬礼をし、怪しい人間を通していないことを報告された
そしてその直後、駅に移動したことで索敵範囲が半分程度になっていたところに索敵範囲ギリギリに自分の魔力の痕跡を感じた
(なぜそこに…?どういうことだ?赤髪の男は未だ路地裏から出てきていない、それになぜ街を通らずに南西側に私の魔力の痕跡が現れた?)
全て考え抜いた結果、魔導列車はブラフ、それに魔力の痕跡もブラフ
魔導列車を警戒した私が駅に向かったタイミングで赤髪が飛び出して北西に待機している馬車に乗って逃げるつもりだ
「全員、北西の出口に迎え、全員だ」
移動を初めて数十秒後に案の定赤髪が路地裏から飛び出し、北西方向に向かったという報告が入った
(読み勝った!)
空を飛び、北西の出口に向かう
そしてちょうど目の前で赤髪の男が馬車に乗り込んだのが見えた、中の人間は全員フードを深く被っており誰が誰かわからないが赤髪の男を合わせてちょうど全員が揃っている
「出せ!走らせろ!!」
赤髪の男が大声で御者に乗っている仲間に声をかけると同時に馬車の中から一人飛び出してこちら側に走ってくる
そしてフードをこれみよがしにはずし、適当に染めたのがわかる微妙な色合いの青髪を見せびらかしながら駅の方に向かった
「隊長!あれは…」
「あれは偽物だ、髪色が前見た時より雑に染めているしそもそも眼帯の男が護衛から離すはずがない、確実に囮だ」
適当に手を出して囮だとわかっていることをこちらからバラせば何がなんでも足止めをしてくるはずだ、ならあちら側に駆け引きをしていると思わせておいた方が楽だ
魔術を放ち続け、街から少し離れた道でようやく馬車の車輪に魔術が命中して馬車が止まる
魔術をいつでも打てるように詠唱を寸止めしつつ馬車の中に入る
そして中の顔ぶれを見たのと同時に自分の思考が止まったのを感じだ
「残念、玉響の白銀と呼ばれた男は対人戦が異様に強いんだよ、特に心理戦」
馬車の中には茶髪の弓使い、赤髪の大剣使い、白銀の眼帯剣士、焦茶色の剣士、そして御者台から魔術師の女が笑いながら顔を出した
「…は?、どういう……」
「だから、あんたは読み負けたんだよ、アセトで玉響の白銀と呼ばれた剣士に」
灰、赤、茶、焦茶、茶、全員の目の色を見ても碧眼はいない、そして全員武器を携帯している、その事実がこの場にレオン・エンジムートがいないことを雄弁に語っていた、なんせ自分の魂とまで言われる武器を他人の手に渡すわけがないからだ
そして思い返せばさっき走って行った男、武器を持っておらず素手だった
「隊長すぐに引き返しましょう!まだ間に合います!」
「……裏の裏の裏だったか…、すまない、読み負けた」
すぐに自分の頬を叩いて喝を入れ、街に引き返そうとする
しかし無情にも魔導列車の汽笛の音が鳴り響く、そして山の向こうに走っていく魔導列車の最後尾が見えた
エアはすぐさま計算する
(魔導列車は山脈を大きく迂回する、飛行魔術を使って山脈を直線で越えれば確実に先回りできる、三駅目…いや二駅目だな)
急いで飛び立つ、読み負けたのは自分だ、しかしまだ盤面をひっくり返せる、魔導列車を先回りさえできれば後に残るのは護衛のいない非戦闘員、確実に捕縛できる
そして高速で飛行しおよそ6時間、銀翼魔術師団は魔導列車よりを先回りすることに成功した




