episode37
Bランクともなれば貴族から依頼が来ることもある、そしてギルドを通さない不正規の依頼も存在する
「悪いが俺たちだけじゃ難しいな、報酬は悪くないが受けるにはリスキーがすぎる」
「……迷惑をかけた、忘れてくれ」
席を立ち、どこかに行こうとするのを引き止める、そして再度座るように促す
「まぁ待て、一人誘いたい奴がいる、対人戦闘においては頭一つ抜けてるやつだ、まぁ名札持ちだからこれがかかるがな」
数秒考えた後に睨みつけてくる、到底命を狙われている人間の眼とは思えない力強さだ
「……信用できるのか?」
「おう、穴兄弟ってやつだ」
「なんて品のない……、まぁいい、これでいいか?」
先ほど報酬に提示された宝石に一つ同程度の大きさのものが追加される、あからさまに舌打ちをしてバカにしたように笑いかける
「おいおい、俺は言ったぜ?名札持ちだと、相場ってものがあるだろ?」
「チッ、足元を見て…、これで良いだろ」
宝石の目利きはできないが中ぐらいの大きさの宝石が六つ、Bランクの名前持ちを二人雇うにしては少々少ないが前金としてはかなりの金額になる
「最近引っ越して場所がわからんから少し時間がかかる、例の場所で気長に待っててくれ」
「了承した」
(さてさて、あいつは今どこにいるのやら)
今までのあいつなら受けないであろう案件だが状況が変わった、受けてくれるだろう、正直俺たちだけでも達成できないこともない案件だが念には念だ、まずはギルドをあたるとしよう
ーー
賃貸だった家の契約を解除して街の宿を借りた、一階は食事処として開放されていて二階が宿の典型的な宿だ、当然自炊もしなくなって時間も余る
洗濯も宿側がしてくれるためもっと時間が余る
余った時間は鍛錬程度しかやることがない、今まで暇な時間に何をしていたか全く思い出せない、まるで無趣味な人間みたいだ
とりあえず用事を終わらせようと人を探していると目当ての人ではないが居場所を知っていそうな人を見つけた
「お〜い、ミリー…」
「––お〜!良いところに、ちょっと良い話があるんだよ、一枚噛まねえか?」
こちらから声をかけようとしたがそれを遮って駆け寄ってくる、どうやら僕のことを探していたらしい
「あぁ〜…、話だけ聞く」
この手持ち無沙汰感を紛らわすために仕事が欲しいと思っていた、けど依頼内容にどうにも食指が動か困っていたのだ、竜はもうしばらく見たくないがそれ以外なら聞きたい
「いや、これだ」
「あぁ〜…、これね?」
手のひらを自分の腹の方向に向けるミリー、秘匿性の高い依頼の中でも血生臭い…人に聞かせられないような依頼内容の際に使うハンドサインだ、聞くなら受けろ、受けないのなら話せないってやつだ
「手紙を俺の実家まで送るんだがちょっと前にギルドの郵便物を襲ったバカがいるんだ、まだ捕まってねぇからパーティーメンバーと一緒に実家の方に観光するつもりだ、よかったらどうだ?この時期は観光客がいっぱいいるはずだ」
簡単に今のミリーの言動を訳すと“人をとある場所まで送る、命を狙われている、刺客の数はわからないが大勢の可能性がある”だ、漏れてもいい大雑把な情報だけを教えてくれているのだ
「いや、恨みを…」
やばい相手から恨みを買うのは避けたい、そう言おうとしたら止められた
「癖になってるぞ、今お前は一人、だろ?」
言われて気づく、そういえばロララもミスチーもいない、正真正銘僕一人なのだ、確かに癖ができている、リーダーだった頃の癖でメンバーに危険が降りかからないように考える癖が
「けど今の僕の得物、手入れをしているがもう寿命だ、乱戦になったらすぐに使い物にならなくなる」
一年近く今の刀を使っているがもうかなりガタが来ている、手入れ自体はしているが茎の部分が柄からガタガタ言って少し抜けそうになっている、今すぐどうこうはならないが長期で拘束される依頼は避けたい
「なんで新しいのに変えないんだ?確かに刀は珍しいがギルド備え付けの武器屋に頼めば仕入れてくれるだろ?仕入れ値がかかるが」
「あぁ、頼んださ、きっかり仕入れ代の60万リリーを払ってな、で巨匠ラクラの名刀を一振り送ってもらった、けど途中で貴族に売られた、装飾が気に入ったらしく息子のプレゼントにするらしい、こっちは800万リリーで買う契約をしていたのに…!」
今思い出しただけでも虫唾が走る、しかも600万リリーで売られたらしい、貴族に恩を売りたいギルド職員の独断で、こちとらずっと待っていて、ようやく仕入れの目処がたった一振りだったのに
責任者からは平謝りされたが全然許したつもりもない、そいつを首にしろと言ったのに一ヶ月の減給で許したギルドには殺意が湧いた
「60万リリーは帰ってこないしさぁ!?」
「ま、まぁまぁ、お前も苦労しているな」
慰めてくれるミリー、しかもなんか飴玉までくれた、NTRれた僕の再燃焼を始めた怒りは飴玉如きで収まるものではないのだがどうしようもできないため怒りをおさめておく
「まぁそう言うわけで僕は長期の、それもどれくらいの規模の戦闘が起きるかわからない難しい、また武器を新調した時か、短期の討伐依頼なら誘ってくれ」
そう言って立ち去ろうとしたが腕を引っ張られて止められた
「もし、もし得物の新調が可能なら来るんだな?」
「まぁ、報酬にもよるが…」
「よしきた!ついてこい!」
僕はミリーに強引に引っ張られて行ったのだった




