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龍と魔法がありふれたこの地にて  作者: クラムボンのおにぃちゃぁん
青年期1
31/36

episode31 竜再び

こういう言葉がある “勝利とは肉の塊と血の涙を表す“

つまり勝利を求めるなら犠牲を覚悟しなければならないと言うことだ


「「「「お゛お゛お゛お゛お゛!!!」」」」


崖を勢いよく滑り降りる、みんなに釣られて僕も雄叫びを上げながら竜を睨みつける

翼には風穴が所々空いていて体の一部が凍っている、魔術による奇襲は成功したらしい

短期決戦を想定しているからここで魔術師の仕事は終わりだ、誤射しないように補助に回る、そしてここからが僕たち剣士の仕事だ


(右手前に重心が偏っているな、左後脚にちょうど岩石砲が命中している…死角だな)


「怪我を恐れるな!死にさえしなければ魔術師様が治してくれる!」


ミリーの言う通りだ、魔術師だけじゃない、後ろにはCランクパーティーが三つほど待機している、撤退は可能だ、恐れるものは何もない

ルカはすれ違いざまに二度、後ろに回り込んでからもう一度切りつける


「……ッ!?––竜の息吹(ブレス)だ!!後ろに回り込め!!」


魔眼を通してみる竜の喉付近に以上な魔力が視える、一瞬遅れてそれが竜の息吹だと気づいき全体に警告を促す


「状況報告!」

「二人尻尾に当たってオネンネ!あとはおかげさまで無事だ」


竜の息吹が直撃したやつはいないらしい、けど無理な回避行動をとったせいでその後の尻尾の薙ぎ払いが避けきれずに当たった奴が二人、四人しか剣士がいないためつまり残っているのは僕とミリーだけだ


「あ、やべ」


前言撤回、瓦礫が頭に直撃して倒れたやつのせいで僕だけになった、結構やばい状況だ


(奇しくも、あの時と一緒ってか…)


玉炎竜に一本角が重なる、過去の自分は負けた、正面から堂々と戦って負けた、しかし今ならどうだ?格はあの時とおそらく同程度、しかしあの時と違って無謀な挑戦には思えない


「刻円の術理」


ルカは一本角の戦いから二度、剣士としての壁を超えている、一度は一本角との戦いで覚悟と死を感じて、そしてもう一度は冒険者になってから対人戦が増えた影響でだ


見直したのは足捌き、今までルカは刀は角度と力の乗せ具合次第で斬れないものはないと思っていた、しかしそれは間違いだった、速度も、力も大切なのだ、最も勢いの出る足運び、力の乗る足運び、相手の視界から消える足運び

何度も試し、修正し、形にしたそれはクドから教わった無双刻円流から本人は気づいていないが全く別のものになっていた


「……ッ!?」


斜めに歩くルカが二人、三人と増えて見える、そして竜の視界から消える

そして前脚を切断する、一振りで刀身よりもある幅が竜の足をだ


(−−通用するッ!)


切断できたことに自分でも驚く、そして追撃を仕掛けようとした瞬間、また竜の喉に魔力が集まる


(–−回避ッ!?いやこれ以上時間をかければミリーたちの救助が…)


玉炎竜は時間が経てば経つほど体に熱を溜める、そして最終的には手がつけられなくなる、二度目の息吹だ、すでにかなり熱が溜まってきている、これ以上時間をかけるなら撤退するべきだ


「我が名はロララ––」


思考の海から一つの声がルカを呼び覚ます、後ろを確認するとわざわざ崖の下まで降りてきて杖を高らかに振っているロララと目があった


(––信じるぞ!)


ロララは普段はおちゃらけた性格をしているがこう言う時は信じれる魔術師なのだ、少なくともルカがノータイムで命を託せるほどには

ルカが信じて納刀してその場で構える、一切の回避行動を取らずに


「『流水壁』!!」


竜の息吹がルカを襲う、たったの十秒、けれど二人に取ったら永遠にも感じられる十秒が流れる、そして竜の息吹が途切れるとともにロララがその場に座り込む


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


爆炎の中から灰が出てくる、息吹がロララの生成した水の壁を焼いた影響で出てきた蒸気の影響で顔が真っ赤になった灰色の剣士、ルカ居合術による刹那の一太刀が竜の首を落とす


「獲ったぞ!!竜の首を落としたのは僕だ!!」


宣言したのと同時に重度の立ちくらみに襲われる、多分酸欠と蒸気をモロに浴びた影響だ、うっすらと地面が見えてきた


「黒緋の魔術師ロロ・ツツミハ・クララ!!そして竜を討ち取ったのは–−–」


最後に見えたのは立ち上がって少し山になった岩の上で杖を振って何かを叫んでいるロララの姿だった


ーー

「–––でね、あ、起きた」


馬車が悪路のせいで大きく揺れ、そのせいで頭を強くぶつけて目が覚めた

目の前にはロララとミスチーが仲良く談笑していた


「…喉乾いた」

「あいにく魔力切れです、自分で出してください」


確かに一人で竜の息吹を防いだのなら魔力切れだろう、文句を言わずに水を出して口に含む、そして馬車から少し顔を出して状況を把握する


「アセトに戻ってるの?」

「えぇ、私たちは帰還組です、そして後ろの馬車には怪我人が乗ってます」


怪我人ってことは剣士組だ、若干一名納得のいかないリタイヤの仕方をしていたがまぁ一番重症なのもあいつだろう、普通に後頭部にあの速度で大きめの石が当たれば立ってられない、ていうかわんちゃん死ぬ


「死人は?」

「いません、ミリーも元気に悔しがってました、あと10秒討伐が遅れていれば俺が間に合ってたと」


多分負け惜しみではないのだろう、けどまぁ高位の竜に勝てた、この経験は非常に大きい


「ロララ殿、それくらいにしておこう、ルカも疲れているはずだ」

「あぁそうですね、今回の報告はミリーがしてくれるらしいです、ルカは休んでてください」

「え、珍しく…」


珍しく気がきく、この二人が報告に行くわけではないが気遣いをしよういう考えに至った部分に驚く


「な、ならお言葉に甘えて…」


お言葉に甘えて目を瞑る、疲れが溜まっていたのか数分もしないうちに眠りにつけた

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