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龍と魔法がありふれたこの地にて  作者: クラムボン美少女概念
青年期1
28/63

episode28

森を歩き、山を登り、悪路を進んだことだいたい5時間、距離で行ったら25kmくらい進んだあたりでミスチーは止まった、いや正確には僕もミスチーも進めなくなったが正しい


「ここからの眺め、かの詩人キッドが『雲上』を読んだ地と言われている」


山の上からの景色、しかしそこまで標高が高くないはずなのに崖の下に雲が見える、そして雲の間から多くの木々が顔を見せている、霧ではない、雲なのだ、見たこともない景色だ


「どうだ絶景だろ?」


神秘的、幻想的、圧巻、そんなチンケな言葉では表せない景色だ、どれだけ時間が経ってもこの感動はきっと薄れることはきっとない


「……教育の重要性がよくわかるな、この景色を形容する言葉が思いつかない」


この感動はきっとこの景色を見せないと伝えられない、言葉では絶対に伝えられない、少なくとも僕には無理だ、僕の語彙力じゃ表せれない


「だから私がいる」


そう言ってミスチーは手頃な岩に座ってリュックの横にぶら下げていた木の鞄を広げる、そして中に入っていた絵の具と筆を取り出して真剣な様子で上質な紙にまだ描き始めだからわからないがおそらくこの光景を描き始めた


(……周囲の警戒でもしておくか)


あの目には見覚えがある、自分の世界に没頭した人間の目だ、邪魔をしないように、邪魔をさせないようにその場をそっと離れる


「しかしすごいな」


魔眼を通して見てみるとあの雲、幾何学模様に魔力が流れている、そしてその雲の下には濃い、濃厚な魔力が澱んでいる、まさに自然が織りなした神秘だ


「あ、…まじか」


気配を感じて茂みの方に向かう、少し歩いくとおそらく僕らの匂いを辿ってきた凶暴化し、その毛が銀色に染まった冬の悪魔……通称白銀熊が案の定こちらに歩いて来ていた


(2、5…いや3mはあるな)


白銀熊はそこらへんの竜より強い、登竜門と揶揄されるほどにだ、僕も片手間で倒せるような相手ではない、当然この時期に山や森に入ればいつことはわかっていたので戦う準備はできているができれば会いたくなかった相手だ


「…ッ!!」


腰に刺した刀に触れる、来るならタダじゃ済まさないぞという意を込めた剣圧を放った

しかしルカの狙いに反して白銀熊はすでにルカを獲物として見ていた


(…ダメか、抜くか…?抜かないと無理だな)


この一本しかないため極力抜きたくないのだが抜かないと普通に大怪我じゃ済まないので腹を括る

毛皮が高く売れるためできるだけ綺麗に仕留めたい、そういった思いから一度突進からの噛みつきをかわして背中側から脊髄を突いて破壊する、そして反撃を警戒してすぐに後ろに飛び退く、すると予想通り一瞬遅れて僕がいた背中側に前足が薙ぎ払われる


「まだ生きてるのか…」


相変わらず熊の生命力には呆れる、脊髄を破壊したはずなのにまだ当分動けそうな熊相手に一気に距離を詰めて喉を貫く


「ヴォッ、ヴォッ、アォウ…」


再度ヒットアンドアウェイに徹して距離を取る、魔眼で魔力が霧散して死んだのを確認してから納刀する、こう言う時右目が魔眼で良かったとつくづく感じる、狩人の人間はこう言う時胸の上下運動で息をしているか確認をするのだがわかりにくい、里で熊をみんなで狩った時も羨ましがられた

死んだ熊の首の根本あたりにナイフを突っ込む、並大抵の刃物を通さない毛皮でも動かないのならどうとでもなる、心臓から肺につながる太い血管に穴をあける、どくどくと血が溢れ出てくる、僕の右手から伝わる温かい傍流が伝わる、段々と流れが緩やかになっていってようやくそれが終わった


「あ」


声が出た、熊を解体するときに最も重要なのは血抜きや内臓を傷つけないことではない、血の匂いに釣られて別の熊がやってくることだ、草むらの中から物音がして咄嗟に刀に手をかける、警戒しながら角度を変えて十分に動ける位置まで移動すると中から小さな白色の何かが出てきた


「…母熊だったのか」


それは子供だった、そして目の前のすでに血を抜いたそれは母親だった、自警団の先輩に教わったことがある、母熊を殺したのなら必ず子も殺せと、その教えに忠実に習って一撃で仕留め、血抜きをする

次に内臓の処理だ、肛門を抜いて結紮をする、そして腹を裂き胸骨を割る

そして胆嚢を真っ先に取り出しす、胆嚢が一番高く売れるのだ、無くさないように、破れなように布で包んで鞄のすぐそこに冬だが一応水魔術で腐らないようにして置いておく、そして胃を開いて安堵した


「よかったぁ〜、人は食べてなさそうだ」


むせかえるような強烈な木の実の匂いと共に中からはこれでもかと溢れんばかりにラムの実が入っていた、これだけ食べてればきっとお肉は美味しいだろう、ハツ、レバーを抜いてから腸を見たがダメそうだ、みみずのような寄生虫がうねうねしてる


そしてここからが魔術の本領発揮だ、戦闘面では全く役に立たない僕の魔術だがここで輝く、血抜きをして多少軽くなった熊を綺麗な布を広げ、その上に転がす

そして水魔術で泥を落とし、風で乾かす、腹の正中線を起点にナイフで切れ目を入れて前脚まで割く、肉球の部分は難しいがコツさえ掴めれば上手くできれば気持ちがいい、健を切って手のひらを落とす、後脚の方もナイフを入れてからアキレス腱を切って外す


「…疲れた」


正直疲れた、もうやめたい部分もあるけど狩りで一番大切なのは後処理、この作業で金額が倍ほど変わってくるのだ、狩ったのなら高い値段で売りたいと考えるのが人間の性だ、気合を入れ直して全身の毛皮を剥ぐ、そして毛皮が肉につかないように綺麗に剥がせたら腐りやすいため持参した大量の塩に漬けて袋に入れる、肉の方も全て布で包む


「内臓は食べよう、冬とはいえ油断はできないしね」


胆嚢を包んだ布だけは自分の手で持って、残りはリュックに詰め、廃棄する部分を埋めてからミスチーのところに戻る

戻ると相変わらずミスチーは自分の世界に入っていた、今から帰ってたら森を通る頃にはすっかり真夜中になってしまうため野宿用のテントを広げてから焚き火の材料を集めに行った



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