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龍と魔法がありふれたこの地にて  作者: クラムボンのおにぃちゃぁん
青年期1
22/36

episode22

今日は本当に休むつもりだったのにわざわざ迷宮まで来て、今から問題児二人(片方は推定)の相手をしないといけないなんて飛んだ厄日だ


「いいか、確かにコインは裏を向いた、けれど実力が一番大事だ、ウチで通用する技術があれば僕もうだうだ言わない」

「了承した」


迷宮なんて普段来ない、剣士と魔術師、罠は見抜けないし宝箱も開けれない、地形把握もできない、そのため確かに盗賊がいればと思ったことはある、けど出来れば僕を甘やかしてくれるほどの常識人が良い


「僕がソロで潜った時の記録が3階だったから今回は5階まで、夕方…6時間以内に5階まで行って帰って来れたら合格だ」

「……?5階で良いのか?」


そう返されて若干後悔する、剣士が半日で3階まで行けるのだ、だったら盗賊がいれば簡単に5階までいけてしまうかもしれない、けどBランクパーティーの現在の最高到達階層が8階、それも五人パーティーでだ、新造の三人パーティーで5階まで先行できるのなら優秀な部類だ


「……あぁ、5階でいい、3時間で行って3時間で帰る、君の技量以外の要因で時間を超えたなら少し考えるけども」

「ふっはっは、……五回、五回以上接敵があったら不合格にしてくれて構わない」


自信満々に言い切るミスチー、とりあえず探索を開始する


「それはなんです?」


だいたい進んで1時間が経った頃、ようやく迷宮内の構造が複雑化してきた頃、分かれ道を前に突然鈴のような物を取り出したミスチーにロララが尋ねる、


「これはですね、こうやって音を鳴らすことで反響の具合から大体の構造を確認しているのですよ」

「おぉ!最高にイカしてますね!?」


まだまともな大人枠の可能性を漂わせてくるミスチー、まだ一度の接敵をしていないし罠もしっかりと事前に察知して回避してくれる


(…けど面と向かって頭がおかしい人ですか?とナチュラルに聞ける人間がまともなわけないだろうが!)


そうこうしているうちにミスチーがハンドシグナルで止まれと指示を出した


「200先に生命反応を三つ、回避することも不可能ではないが一本道だからかなり時間がかかるがどうする?」

「三つか…」


まだ3階だ、この階で群れる魔物は3種、そして群れの最小規模は1種を除き五匹からなのでそのうちの緑鱗狼だろう


「……二匹を僕が担当する、一匹は君が戦ってくれ、ロララはミスチーが危険だと思う一歩手前時点で助けてやってくれ」

「「了解です」」


盗賊の本職は罠の発見と解除、敵の発見と戦闘ではないのだがある程度は戦えるのが望ましい、この3階の魔物なら僕もロララも余裕を持って対処できるから今のうちにどれくらい戦えるのか試しておきたいという考えだ


「緑鱗狼だ、奥の二体を僕が担当する」


予想通りの相手だったのでタイミングを見計らって飛び出して手前の一匹をスルーしておくの二匹に狙いを定める


(刀は…抜けないな、狭すぎる)


それに刀はここら辺だと入手が難しい、当然質の良い刀も手に入らないから壊れる可能性もある、だから極力抜きたくないと言うのが本音だ、僕は懐からナイフを三本取り出して投げつける、一匹の首、足、もう一匹の首に刺さったのを確認してから指を鳴らす、するとあらかじめ仕込んでいた術が発動し、ナイフが変形して体の内側から弾ける


「あっちは…」


後ろを振り向くとわざわざ狼に立ち止まって決めポーズをしているミスチーが目に入る


「我が名はミスチー、堂々たる騎士道精神で貴様を屠る!…いやそうじゃないな、真正面から貴様を一振りの元に両断してくれる!!」

「何やってんだ!最年長者(25歳)!?」


明らかロララサイドの人間だった、大体短剣はそう構える物ではない、詳しくは知らないが逆手に持つ感じだったと思う、刀身が反ってるし、決して直剣みたいに正眼でかまえるものではない


「ロララ!危険を通り越してるだろ!!」

「––!?了解なのです!!」


危険一歩手前で止めろと言ったのになぜ子供が包丁を使うときに食材に手を添えてたみたいな状況なのになんで「その名乗りいいな〜」みたいな顔して見てるんだよ!


「灼熱の業火、黄金なる天秤、再生と破壊を司る両の手…」

「––ッ!?おいバカ!迷宮内だぞ!?」


知らない詠唱にミスチーも困惑している、詠唱は基本的に省略されることが基本だしBランクの魔術師なら無詠唱も珍しくもない、それなのにこいつはわざわざ詠唱をする、存在しない自作の雰囲気作りの詠唱をだ、当然格好をつけるため


「我が手には空、しかし我が心には高尚な志あり!我が魂が渇望するは裁きの緋炎!我が眼前の敵を灰燼と還せ!『緋色の獄炎(カーディナル・レッド)』!!」


魔術を放った問題児と短剣の使い方がおかしい問題児を抱えて曲がり角に走り込む、一瞬遅れて緋色の爆炎が僕の髪を少し焼いたのだった



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