episode21
訪れた事のない街に来たら地元の人間がやっている屋台に行って情報収集をする
「串焼き二つ」
「あいよ、ねぇちゃん美人だから一本おまけしてやるよ」
お腹はそんなに空いていなかったのだがタレが絡まっていてちゃんと美味しい串焼きに食が進む
「おっちゃん、この街で有名どころの冒険者教えてよ」
「あんた冒険者だったのか、そうだな、パーティーだと『一握りの砂宝石』と『ネイツ』、個人だと『竜剣』だな、……あと強いてあげるなら『厨二病』だな」
「厨二病…!?」
個人的にめちゃくちゃ気になる名前が上がった、普通異名は本人の戦闘スタイルから来ることが多い、それなのに厨二病、なぜか笑いをとりに来ている
「あそこのパーティーはヤバいやつが多くてな、いやヤバいって言っても危ないとかじゃなくて…危ないか?、まぁ頭のおかしい連中が多いんだ、この街で活動するなら気をつけたほうがいいぜ」
聞いた話パーティーらしい、そして積極的に関わらない方がいい人種らしい
「……もしかして興味を持ったのか?やめとけ!後悔するぞ!!」
非常に面白そうだ、『厨二病』とやら、もう少しいろんな人から話を聞いてみよう
ーー
朝日を感じながらコーヒーを淹れる、そしてさっき買ってきた焼きたてのパンを半分に切って自家製のハム、新鮮なトマト、レタス、チーズを挟んで軽く炙ったものを口にする
「けしからんなぁ〜お前は」
本当にけしからん、やっぱりあそこのパンは非常に美味しい、やばい粉でも使ってんじゃないの?ってほど美味しい、あそこのパン屋さんが潰れたらどうしたら良いのかわからないレベルでけしからん
「この組み合わせは最強だな、ルカスペシャルと名付けようか」
ご機嫌な朝食時間、けれどそれを台無しにするものがいる
「ルカ〜!私の分は?」
寝癖でボサボサの頭、無駄に手に巻いた包帯、黒と赤の組み合わせが大好きな厨二病が机の下から出てきた
「お前の部屋はなんのためにあるんだ!!」
「違う、違うのですよ!我が魂に封印されし暗黒龍が暴走寸前で、昨晩の私は唯一安眠できる龍破聖域で身を休めることができなかったのです!!」
ちなみにあったばかりのこいつは意味もなく眼帯をしていた、そしてパーティーを組んだ僕とキャラが被るという理由で眼帯を外すような頭のおかしいロリだ
「いつまでそこにいるんだ!!さっさと出てこい!」
「やめるです!正しい手順を踏まずに私を机の下から出そうとすると世界が滅ぶですよ!?」
「そんな世界だったら滅んでいいわ!!」
本当にめんどくさいやつだ、虚言癖と厨二病、さらにめんどくさがりまで相まって人ではない何かに見える、母から「女の子を泣かしてはいけません」、「女の子に手を挙げてはいけません」と英才教育を受けてきた僕でもこいつには暴言を吐けるレベルだ
「……?お前友達でも呼んだか?」
玄関戸を叩く音が聞こえた、賃貸だからそんなに強く叩かないでほしいと思いつつも足元のやつに声をかけた
「何を…?私は孤高を愛す黒緋の魔術師ロロ・ツツミハ・クララ、私の中の暗黒竜の暴力的な魔力に皆が恐れるのです、はぁ、これもまた深淵を司る者の業ですか…」
「なんでそんなに会話に不純物を混ぜれるんだよ」
とにかくこいつの友達ではないらしい、当然僕にもこんな早朝に訪れてくる非常識な知り合いはいない、つまりアポイントのない相手ということになる
今日はいい日だと思っていたのだが朝から面倒な会話を挟んだ上に来客まできた、
「はいは〜い!」
怒りと疲れが混じった感情を吐き出しつつ戸を開ける、するとそこにはかなりのべっぴんさんが立っていた
「ん〜、……ロララのお友達様で?」
なぜかあいつに似た雰囲気を感じる、関わってはいけないタイプの人間特有の何かを
「お初にお目にかかる、ギルドのメンバー募集を見てここに来た」
「あぁ〜…、実はですねぇ…」
メンバー募集は一年前からやっている、そして今でも新メンバーは大歓迎だ、しかし本能と理性が叫んでいる、こいつはあの厨二病と同じ匂いがすると
「悪いんだけ…」
「––ひとまず入れてもらえるか…?早朝にこの格好は少し寒いんだ…」
「あぁ〜…」
かなり薄手の女性からの主張あって僕は何も言えずに中に入れる、リビングもとい応接間に連れていくと話声が聞こえたらしく寝癖までセットし直して厨二病全開の格好で座っているロララが目に入った
「まぁ座ってください」
急に場の主導権を握り始めたロララにこれ幸いと全てを任せてキッチンにコーヒーとサンドイッチを持って行ってお茶を出す
「どうぞ」
「すまないな」
(あら、意外と常識人…)
ありがとう、ごめんなさい、またねの三つが言える人間はいい人間だ、少なくとも言えない人間よりは良い人間だ、つまりこいつはかなり良い人間の可能性がある
「私の名前はロロ・ツツミハ・クララ、天才と名高い黒緋の魔術師とは私のこと、Bランクパーティー『流星闊歩アヴァンギャルド』のクール担当です」
「嘘つけ、フール担当だろ」
それにその恥ずかしいパーティー名を自信満々に宣言しないでほしい、自分の顔が赤くなっているとわかるレベルで恥ずかしい
「––何!?黒緋の魔術師だと…!?私の名前はミスチー、夜中に彷徨う鍵開け盗賊とは私のこと、私に対しては錠前など少し強い程度のバリケードにしかならない!!」
(やばい、馬鹿とバカが共鳴した…!)
そしてやっぱりミスチーはあっち側の人間だった、さりげなく加入を断らせてもらう方向にシフトチェンジする
「で、事前情報では言動と頭がおかしい奴がいると聞いたんだがどっちなんだ?」
「……このチビがおかしくないように見えるのなら今すぐその目をお酢で洗浄することをおすすめする」
「な!?いくらルカだと言ってもその言葉は聞き逃せません!!」
明らか言動と頭がおかしいチビがいるのになぜ迷うのだろうか
「いやぁ、君の格好も…その、なんというか……いや!私は悪くないと思うんだが…個性的だろ?」
「…はぁ?」
半ギレで返すルカ、しかし彼は一つ失念している、自分の周囲におしゃれな人間がいなかったことを、シンプルなシャツしか着ていなかった父親、眼帯が無かったため仕方なくつけていたバンダナがおしゃれに思えたり、それを幼馴染は褒めたり、自警団時代は制服ばかり着ていたため服に気を使う機会がなかったり、冒険者は見た目に気を使う連中は少なかったりとルカのファッションセンスの成長は最後に母方の実家を訪れた十歳時点で止まっているのだ
つまり彼の格好は本人には似合っているし別におかしい点はないのだが個性的な格好をしていることになる、実際バンダナを眼帯がわりに目に巻いている人間なんて世界中探しても三人程度しか存在しないし伸びた髪を束ねているのに使っている紐も多分そういう意図で作られた物ではない
「すまない、言葉を選んだはずだったのだが……」
「……」
頭ロララの女ミスチーに気を遣われるルカ
「…まぁ仮に、もし僕の格好がおかしくても、それでも言動がおかしいのはこのチビだろ…?」
ちょっと自分で聞いていてもしそれでも僕の方が可能性が高く見えると言われた場合僕の心はきっと壊れてしまうかもしれない
「いや、黒緋の魔術師殿の方があれだぞ?けど間違えるといけないからな、うん」
「……まあ、申し訳ないけど今パーティーメンバー募集してないんだ、申し訳ないけど今回は縁がなかったってことで」
「「な!?」」
正直これ以上手のかかるバカが増えるのは困る、流星闊歩アヴァンギャルドに今必要な人材はきっと常識人だ、少なくともロララと共鳴できる頭ロララはいらない
「嘘です!ウチはいつでも優秀な人材を募集しています!」
「募集条件を満たせる人材ならなぁ〜」
とぼけるとロララがポケットからコインを出した、すごくいやな予感する
「メンバー同士で意見が割れたらコイン、そうでしたよね?」
「おま…!?」
迷った時のコイン、まだ僕がこいつの問題児具合を知らなかった時期に公平に意見をまとめるときに考えた手法だ、今の今まで使ったことがなかったから覚えていなかった
「私は裏です!」
そう言って高らかにコインを投げるロララ、ちなみに僕の運はすごく悪い、鍛えられた動体視力の影響で見えるロララの手に包まれたコインの裏表を眺めながら絶望を噛み締めた




