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龍と魔法がありふれたこの地にて  作者: クラムボンのおにぃちゃぁん
少年期 里編
2/36

episode2

渋々だが言われた通りに家を出て山を見回りに出かけたルカ、二つ見終わって三つ目に向かおうと少し歩いていたら衝撃の光景が目に入った


「化け物め!退治してやる!!」

「食らえ!泥爆弾!」


自分と同じくらいの年頃の子供が三人、泥や石を少し離れた場所にいる一人の子供に向かって投げつけていたのだ、ルカは自分と同じくらいの子供が何をして遊ぶのか全く知らないが少なくともこれではないだろうと思って少し立ち止まってしまった


(え、えぇ…、まじか……、遊び…?そういう遊びなのか?)


今時の子供の中ではああいう遊びが流行ってるのかもしれない、しゃがみ込んで頭を守る子供に向かって泥団子や石、枝などを投げつける遊びが、もし自分がもっと他の子供と交流していたらこれがどういう状況かわかるのだろうけどと思案しつつも声をかけてみることに


「えっと…、君?これはどういう遊びなの……?」

「ん?誰だお前!?」


一番体格の良い子供に話かけたのだが疑問文に疑問文で返されて少し気分が悪くなる、しかしめげずに未知との対話を試みるルカ


「僕はアンサンブルクス、上の方の家に住んでるんだ、…でこれはどういう遊びなの?」

「これか?これは化け物退治だ!こうやって泥を固めて化け物にぶつけるんだよ、で当たった時の化け物の反応で点を決めるんだ、実際に見せてやるよ!」


地面の泥を何の躊躇も無く手で触る少年に驚きを隠せないルカ、そんなルカを気にせず固めた泥団子を放り投げる少年、上がる小さな悲鳴


「…!?…うぅ…」

「おぉ!今“うぅ“って言ったぞ!今のは3点だ!なかなか高得点だぞ!」

(うげぇ…、まじか……遊びなのに体張るなぁ、あの子)


泥と言っても投げたら当たったら痛い、それも綺麗な放物線を描いた軌道だったら尚のことに、後頭部に当たって結構笑えない声がしたため化け物役の子供の方に行って顔を覗き込む


「いける?結構痛そうだったけど」

「…ッ!?ひぃ!!」


フードの奥に見えたあっちの三人とは全く違う表情の少年、ルカが覗き込んだのに対して怯えるような仕草を見せた


(あぁ…、これってあれか、いじめってやつか)


ルカは安堵する、この里の子供達の間でこんな危ない遊びが流行っていないことに。少年のフードについている泥を若干てが汚れることを躊躇しつつ払ってあげる、そして少年が不思議そうな顔をしたのに対してニカッと笑い三人組の方に戻る


「僕も混ぜてくれよ」

「いいぜ!けどお前は0点からだぜ!」


仲間が増えるのに嬉しそうな体格の良い少年にルカは笑いながら返す


「なら新しくもう一度ゲームを始めようよ、次は君があっちに行って化け物役、であっちの子と後ろの二人、そして僕を加えて最初から化け物退治をしよう、それならフェアだろ?」

「な、何言ってんだよ?化け物はあいつだろ?」


体格の良い少年が泥だらけの少年を指差してそう言う、しかしルカは聞こえなかったのかと言わんばかりに繰り返す


「だから次は君の番だ、あっちに行ってしゃがみ込んで体をできるだけ小さくし、僕たちの攻撃が当たったら情けなく僕らの自尊心を満たすような都合の良い化け物の演技をするんだ、わかったらさっさとしてくれよ、そっちの君!君は次はこっちだ!こっちに来てくれ!!」


さっさと続きをしようと言わんばかりに準備を進めるルカ、それに対して少年たちは訳がわからないと顔を合わせあう


「……今日はもういいや、なんか楽しくなくなっちまった」

「あ、そう、また次があったら僕も誘ってくれ、今日の続きがしたいからね」


走り去っていく少年たちに向かって笑顔で手を振るルカ、見えなくなったのを確認してから大きく息をついてその場にしゃがみ込む


(すごい疲れた…、子供ってなんであんなにも話が通じないんだ?)


クドが自分に近い年齢の子供は里中合わせて15人程度と言っていたことを思い出す、つまり今日でその三分の一と顔見知りになったのだからクドも許すだろうと思いルカは立ち上がってまた見回りに向かおう歩き出した、しかし服に微かな抵抗感を覚えて立ち止まる


「あぁ君か」

「……あ、ありがとう」

「君もね、……いややっぱりいいや」


色々言いたいことはあった、どうしてこんな大人の目のつかないところで自分をいじめるような輩といるのか、どうしてそんなにいじめの標的になりやすい見窄らしい格好をしているのか、どうして抵抗しないのか、しかしそのどれもをルカは飲み込んだ、初対面の自分が言って変わるのなら苦労はないのだと


「……どうかした…?」

「ちょっとついてきなよ」


見回りは終わっていない、しかしこのままこの泥だらけの少年を置いていくのは罪悪感を感じると思ったルカは少年の手を引いて自分の家に連れて行った


「母さん、森で仲間はずれにされて泥だらけの可哀想なやつを見つけたから風呂に入れてやっていい?」


奥の方の部屋で家事をしている母にわかりにくい言い方でルカは声をかける、言葉足らずのルカまるで動物を拾ってきたみたいな捉え方もできる文面だ


「あら、それは可哀想ですね、綺麗にしてあげてください」


そして天然の母、息子が動物を拾ってきたと勘違いをしてしまったのだった


「ほら、さっさと泥を落としてきなよ、僕はちょっと出かけてくるけど」

「え…?あ、っと」


ルカは粗雑にタオルを投げ渡す、そしてそのまま残りの見回りのために再度外に出た、そして残された少年、五分ほど放心してから風呂に入れと言われたことにようやく気づき本当に入って良いのかとビクビクしながらも体を洗い始める


ーー

「ただいま」

「お帰りなさい」


今日の仕事が終わって家に帰ってきたクド、玄関にルカのローブがないのを見てまだルカが帰って来ていないことに気づく


「あいつ遅いな、寄り道でもしてるんじゃないのか?」

「あら、さっき帰ってきてましたよ?新しいお友達を連れて来てましたよ?多分お風呂場にいると思うのですが…」


ルカが泥だらけの少年を森で仲間外れにされてた可哀想な奴と表現したのを母ミリカはルカが動物を拾ったのだと勘違い、そしてその動物を我が家で飼うのだろうと思いミリカは新しいお友達と表現、そしてさらにそれを聞いたクドはルカが新しくできた人間の友達を連れて帰ってきたと捉えることに、一周回ってある程度の誤解が解けたこととなった


「……?よくわからないなぁ…、まぁいい、少し声をかけて来るよ」


そう言ってクドは脱衣所に入る、そして中にいるであろう息子に声をかけた


「ルカここにいるのか?……ルカ?」


脱がれた服が置かれているため中にいるのかと思ったが脱衣所に置かれているのは一人分の服、そして中からは自分が声をかけた瞬間に誰かが驚いたような音がした。


(ルカじゃないな、…新しい友達っぽいな?何か事情でもあるのだろうか…)


クドは自分を紳士だと思っている、なぜルカがいないのかが一切わからないが紳士の自分が今やるべきことは一つ、気を利かしてあげることだ


「……ルカ、友達の分の着替えはここに置いておくな、…おっと仕事のことを忘れていた、今すぐ行かないとな」


その言葉を聞いて中の少年はひとまずこの場を切ぬけれたことと後でルカが帰って来てから改めて事情を説明してお礼を言うことを改めて決めたのだった、相手の気まずさを感じ取ったクドの一年に一度あるかないかのファインプレーであった、



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