episode17 その後
新大陸と中央大陸を繋ぐシリア海、そこを風を受けて進む一隻の大きな船が進む、名はアンセリー号、遠方漁業を生業とする中央大陸の漁村に属する船である
「……あれってどう?」
「人だね」
「……生きてると思う?」
「さぁ?死んでるんじゃない?」
ただっぴろい海の上に小さな点が見えた、最初は流木と思って観察していたのだがよくよく見たら人に見えてきた、流木が人に見えることはよくあることだ、隣で延々と知恵の輪を解いている友人に尋ねてみたらやっぱり彼も人に見えるらしい
「よし!行ってくるんだ!!」
「お前が行け」
「ラジャ!!」
一切恥じらいなく服を脱いで海に飛び込む、そして海で育った人間特有の自然なフォームで落ちていた人間を拾って下された梯子を伝って船に戻る
「え、生きてる!これ、生きてるよ!!」
「丈夫だね」
「けどこれやばくない?腕とか折れてるよ…?」
見た感じ右腕が折れている、しかも結構やばい折れ方がしているような気がする、高いところから落ちて折れたとかそんなチャチな折れ方じゃないような気がする
「なんか見窄らしいね、借金奴隷なのかな?」
白色のシャツに入った一本の緑のライン、どこか統一感を感じるそれはどこかの船で働かされていた借金奴隷風味を感じさせられる
「……いや、細く見えるけどかなり筋肉がついてる、とても奴隷には見えないな、それにそのロケット、銀が使われてる、……高く売れそうだ」
「え!?ダメだよ!」
言われてみたら目立つ銀色のロケット、水色の石が嵌められていて確かに高く売れそうである、けれど大事なものかもしれないので止める
「救助料さ、こいつには海で無くしたといえば良いだろ、それに命よりは安いだろ?」
そう言って銀のロケットに触れる友人、自分は本当に嫌な予感がしたからすぐさま手を離させようとする、けれどそれよりも一瞬前に友人の腕を誰かが掴む
「「…え?」」
突然のことで呆ける、そして少年の瞼が開くと同時に何かが軋む音がした
「––あッ!?」
音の出所、それは友人の腕と少年の変色した右手の両方からだった
「ひゃあああ!!!!??」
「痛い!!痛い痛い痛いって!!」
海に木霊する悲鳴と情けない叫び、ここまで怖さから大声を出したのは祖父が海藻を頭に乗せて深夜に自分の部屋に来て驚かせてきた以来であった
ーー
“拝啓“
紅葉がイチゴが美味しい季節となってまいりました、お祖父様におかれましては、ますますご健勝のことお喜び申し上げます
前に手紙でお伝えしてくださった私のいとこに当たるミミカ嬢のご婚約、おめでとうございます、心からの祝福をあげさせていただきます
さて、簡潔にお伝えさせてもらいますと現在私は中央大陸からお手紙を送らせてもらっております、一本角の竜との戦いの際、竜の突進で吹き飛ばされて気絶した私はどうやら川を伝って海に流されていたらしく、中央大陸の漁船に助けれらていなければ私はきっと海の藻屑となっていたでしょう
現在私は縁がありこちらで冒険者として活動しております
末筆ながらお祖父様が末長く健康でいられるように勝手ながら願わせていただきます、ご不安にさせるような出来事があったのにも関わらずご連絡が遅れたことを深くお詫び申し上げます
書き終えた手紙を風に入れ蝋で閉じる、後で買い物に行くついでに冒険者ギルドに出しに行くつもりだ
「手紙なんて久しぶりに書いたな」
もっと早くに安否を伝えたほうがよかったがこっちもそれどころではなかったため許してほしい、少しナイーブになってたり海の上だったから物理的に手紙を出せなかったり、普通に今の両親がどこで暮らしているのか全くわからなかったり、最終的に母方の実家に手紙を出すことで安否を伝えることを思いついたのは天才だったと自負している
「お〜い、仕事だぞ」
「今行く」
こちらに来たばかりは借金したりと色々あったがなかなか新鮮な出来事が多くて少し楽しいかもしれない




