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龍と魔法がありふれたこの地にて  作者: クラムボンのおにぃちゃぁん
少年期 里編
15/36

episode15 覚悟

扉を開く音が響く、動悸がおさまらない


「5、6班、全員集まりました」

「……ご苦労」


顔を上げる、見慣れた顔が並ぶ、僕に森の事を教えてくれるアンク、美味しい魚の焼き方を教えてくれたジュジュ、弓の使い方を教えてくれたリント、甘い木の実をこっそりと教えてくれたトンカ、僕に戦いのコツを聞いてきたミリー、思い出せばキリがないほどだ


「状況は全員に伝わっていると思うが1から4班は一頭の竜によって壊滅状態に追い込まれた、そしてさっき僕の魔眼で確認したが見たことない規模の魔力がこちらに少しづつ前進してきていた」


血の気が引くとはまさにこのことだった、見ただけで全身から感覚がなくなっていったのをしっかりとこの身で感じた


「一番近い都市ルントまで40kmはある、馬車を使ってもおそらく6時間はかかる、……そして僕の目測が正しければ竜はあと4時間後にはここに着く」


僕の言いたいことが伝わったのか緊張が会議室に走る、僕は何度も口ごもり、口の中に唾が溜まり、吐き気が回ってきた所でようやく口に出すことができた


「レノ……、避難後、君と君たち6班が住民の中心となって責任を持って立て直させろ」

「……ッ!?…お、俺は!!……残る!!それが、……それが里長の血筋の責任だ!!」


頑張って、自分の感情を押し殺してここに残ると宣言し切ったレノ、けれどその宣言も無駄となるんだ


「君の責任は家を失い職を失った住民を飢え死にさえないよう、野盗に身を堕とさぬようにまとめ上げることだ、そして僕の母ミリカ・ウル・エンヴィアイズ……エンヴィアイズ辺境伯の三女を死なせずに送り届けることだ、…わかるか?僕の母がいれば仕事に関しては斡旋してもらえる、僕の祖父はそういう人間だ」

「辺境伯…!?……わかっ、た…、必ず届ける…」


納得してもらえて助かる、もしここで意固地になられていたら困ったなどというレベルではないほど困ることになっていた


「……アンク、ジュジュ、リント、………僕と一緒に竜狩りの名声を手に入れるぞ」

「「「応ぅッ!!」」」


言い切った、言い切ったのだ僕は、少し自分の度胸に驚いていると僕を呼ぶ声が聞こえて現実世界に呼び戻された


「班長!!俺は!俺はなぜ…!?」

「トンク…」


唯一僕が名前を呼ばなかった5班の班員だ、しかし何も僕はトンクの名前を呼び忘れたとかではない


「しかしなぁ?君たち、流石の僕にもなりたてほやほや新婦を未亡人にするのは気が引けるんだ、納得してくれるか?」


僕が名前を呼んだ班員に問いかけると苦笑と共に「確かに」や「流石にあの歳で未亡人はねぇ…?」とかの声が返ってくる、トンクは先月結婚したばかりなのだ、それも相手の女性はルントからはるばるこっちに移住して来てくれたのだ、流石にこのわがままは許してほしい


「と言うことで竜狩りの名声は君には分けてあげられないなぁ、まぁ良いよね?その分君は里一番の幸せ者なんて呼ばれてるんだから」

「……ごめん、本当にごめん、みんな……」


泣き出してしまったトンクに「そこはありがとうだろ?」と声をかけてそのまま6班と一緒に避難組と避難させる、避難組の最後尾を見送ってから作戦を考えるために再度会議室に戻る


「……今更で申し訳ないんですが、ミリカさんは班長が残ること許したんですか?」


ジュジュが申し訳なさそうにそんなことを聞いてきた、僕は半笑いで質問に答える


「さっき言ったろ?僕の母は辺境伯の娘、貴族だ、立場ある者の責任については理解があるのさ」


半分嘘だ、立場を盾にしたら貴族教育を受けた母は言い返せなくなるってだけで何も許したわけではない、理解はしているが納得はしていないのだ、当然生きて帰れたら何が待っているのかわからない


「しかし驚いた、父の刀を見たが刃こぼれがひどかったよ、まさに夢想刻円流破れたり!!って感じがしたよ、……確か団の倉庫に大剣があったよね?」


僕は気丈に振る舞いながら勝手に倉庫を開けて中から大剣を取り出す、僕の体長程度は優にある大剣、これなら竜の鱗を切らずともダメージが見込めそうである


「班長、……良いのですか?」


良いのですか、聞き返さずともわかる、僕が刀ではなく大剣を持って竜に挑むことに対してだ


「……僕は父より弱い、そしてそんな僕に父ができなかったことができるわけがない、だからアプローチを変えるだけだ、……まぁ僕になんのしがらみもないのなら今すぐ竜の元に行って刀一本で戦うけどね、流派はそれくらい重いものだ」


まぁそんなことはしないけど、今僕は5班班長として、団長代理として班員の命を、強いては住民の命を預かっている立場だ、そんな私情で命を捨てるようなことはできない


「けど大剣を使うって言ってもあくまで弱点を作るだけ、木こりでいう受け口を作るのに使うだけだよ、…切り殺すための」


もし生き残ったとしても僕の里で楽に出世して生きていく人生計画が崩れてしまったのだ、確実に地獄に連れて行ってやるつもりだ




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