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龍と魔法がありふれたこの地にて  作者: クラムボンのおにぃちゃぁん
少年期 里編
11/36

episode11

シャルが里の外に出て行った、立派な魔術師になるために、そしてかく言う僕も仕事が増えた、正式に自警団に入団したため簡単な書類仕事と結界の不備を確認するだけが仕事だったのだがそれに加えて準禁域の哨戒と小規模な遠征に参加するようになった


「ルカ!そっちに二匹行った!!」


小狗竜が走ってくる、二足歩行のだいたい狼程度の大きさの世界で一番数が多いと言われている竜だ、けれどその戦闘力は侮れない、時速30kmで走りその強靭な顎は人間の腕程度ならすれ違いざまに持っていく、僕は顎に気をつけすれ違いざまに居合術で両断する、そしてそのまま手首を返して二匹目の首を切り返しで落とす


「ヒェ〜、おっかねぇな、さすが副団長の息子だ」

「よしてください、ていうかそっちの大型の狗竜は仕留めたのですか?」


罠に嵌めて、群れを分担させて個々に仕留める、最低限の地力がないとできない狩猟方法ではあるがこれが最も効率的で安全なのだ。


「もちろん、……しかしこいつら痩せてるな」

「痩せてるとどうなんですか?肉が不味くなるとか?」


牙と皮を剥ぎ取って簡単な水初級魔術で血抜きをしていく、現在簡単な魔術が使えるのは僕含めて三人だけだ、使えたら便利なので父に組織内でも習得を義務付けようと進言してみたのだが組織的に新しい技術を導入するのは時間がかかるし現状緊急性もないから今は個人で少しづつ増やしていって、ゆくゆくは組織として導入しようと言われてしまった


「知らんのか?雑食のこいつらが痩せてるってことは十分な食料が確保できていないか、もしくは強いストレスの影響だ、まぁ前者は考えなくて良いだろう」


潤沢な食料が存在している準禁域で食料不足は考えなくて良いということだろう、なら原因は消去法で強いストレスのせいになってくる


「禁域の方で上位の龍が巣を移動させたとかだろう、まぁまだお前は知識としてそういうことがあるのだなと知っておくだけでいい」

「了解です」


他の班員と合流してそのまま帰路に着く、里の入り口に着くとどうやら商人が来ているらしい、珍しく人が中央の広場に集まっている。今まではロンさんが里のものを買い取って外に持って行き外の商品を持ってきて売ってくれていたのだがシャルと一緒に引っ越してしまったため今は引き継ぎの商人が里のインフラを担っている


「見ていくか?」


班長のログに声を掛けられたのに対して首を横に振る、狩猟の成果は基本的に皮と牙などは定価の三割引きで里が買取、肉は狩猟者達の取り分が六割、残りの三割は里の取り分って内訳になっている。牙などの三割引きでの買取と肉の三割を納めることで農作物分の税はない、つまり自警団員が家にいない人間は農作物分の税金を納めずに良いってことになる、とんだ欠陥仕様だ、まぁ肉は里から買わないといけないんだが、つまりあそこで呑気に商人から買い物をしている人間どもの最低でも二割は僕と違って税を納めていない面の皮の厚いやつらということになる、そう考えると少しムカついてくる


「子供の僕が税を納めてあいつらは…」

「やめとけ、その分俺たちは優遇されてる部分があるだろ?」


優遇されている、と言っても治療費は里負担だったり慰安祭とかいう戦士を讃える祭りがあるってだけ、明らかに見合っていない気がするがそれは言わないお約束だ


「……ッ!?」

「どうした?」


騒がしい中央広場を歩いていると少し奇妙な気配がした、本を本棚に収納したんだけど一冊未満の隙間ができて本が斜めに倒れて綺麗に収納できない、そんなすっきりしない気持ち悪さをだ


「なにか忘れてない?結構大切ななにかを」

「忘れもの……あ!報告行ってねぇや!!」


そう言ってすぐに自警団本部に帰還したことを報告に行くログ、確かにこれが違和感だったのかと微妙な気分になりつつ納得しておく


「……帰るか」


母さんが作る小狗竜のサンドイッチは絶品だ、そのため足取りが軽くなっているのが自分でもわかる、玄関を開けてリビングに顔を出すと嫌な景色が目に入った


「はい…はい、……ごめんなさい」

「供給数の多いものは必然的に価値が下がると聞きました、なら貴方の下げる頭にはどれくらいの価値があるのでしょうか」


(需要分しか頭は下げてないだろ)


何が理由でこんな状況になっているのかわからないがここでサンドイッチがどうとか言い出せばあの正座している父親の隣の空席が埋まる可能性がある、こっそりと刺激しないように捌いた肉を置いて自室に向かう


(前に自作した花瓶に合う花をさっき見つけたんだよな〜)


最近の趣味の陶器作り、部屋の寂しさを補える小物を作るために始めたのだがこれが意外とハマって趣味にまでなったのだ、ちょっと沈んだ気分がこの花を飾れば部屋に色が出るだろうと考えれば少しウキウキしてきた


「あ……」


意気揚々と部屋を開けたのだがそんな気分も一気に消え去った、最近忙しさから部屋が散らかっていて花をどう部屋に綺麗に飾るかなんてよりも散らかった手紙や割れた陶器を片付けた方が生活レベルが上がることは誰でもわかるからだ、しかも新しく作った花瓶を置いている机の上だけは綺麗になっていて皮肉にも笑えてしまう


「……寝るか」


結局僕はやる気のある時の自分に部屋の片付けを任せて寝ることにしたのだった

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