episode1
ルカ・アンサンブルクスは貴族だ、いや正確には貴族の血筋だったが正しい。その影響でアンサンブルクスの子供は5歳の誕生日にちょっとした催しをする
まず誕生日の子供の前にたくさんのプレゼントを置く、魔術書だったり、木刀だったり、積み木のおもちゃだったり、子供が好きそうな絵本だったりと、大体7個くらいのおもちゃを置いて子供に「この中から好きなプレゼントを選んでいいよ、ただし一個だけだ、一個だけ何でも好きなものを選んでいいよ」というのだ、そして子供の自主性を守るために大人は部屋から出ていく
アンサンブルクス家は剣一本で成り上がった騎士の家系、そのためこのような儀式をして子供に剣を選ばせることで弦を担ぐ歴史があったのだ、将来この子はいい剣士になると。しかし今となっては只の子供に好きなものを選ばせるだけのちょっとした催しに成り果てている、しかしルカ・アンサンブルクスは違った。
ルカはかなり頭のいい子だった、小さいころから本を読み、いつも母に怒られている父を内心小馬鹿にしながら自分は母に褒められるように本を読んでいたのだ、そして誕生日当日、なぜか両親が自分に木刀を選んで欲しそうにしているのを察知して木刀を選んだのが運の尽きだった
「見てくれ母さん!!ルカが木刀を選んだ!!」
「まぁ!!きっといい剣士になるわ!」
(あ…、そう言うことだったのか……)
自分が木刀を選んだのを見て過剰に喜ぶ両親、奥の部屋にさも待ってましたと言わんばかりに置かれている自分にぴったり合いそうな道場着。これがルカ・アンサンブルクス最初の後悔である。そして早三年が経過
「98ッ!!99ッ!!100ッ!!素振り辞めぇ!!」
父の声を聞き素振りを止め、少し乱れていた息を整える、今でも思う、あの時両親の意図を汲まずに自分が欲しいものを取っていればここまで面倒なことにならなかっただろうと
「どうだ?」
「慣れて来たところですよ…、最近は素振りをしても息も上がらなくなってきたし山道も前みたいに怪我せずに走れるようになって来ました、……けどちょっと手の皮が捲れて痛いですけど」
「そんなの包帯でも巻いておけ、……だいぶ体もできて来たしな…、よし今日から自警団の仕事を一つ任せよう」
父のそんな言葉を聞いたルカは飲んでいた水が変なところに入ってむせ返ってしまう
「安心しろ、簡単なものだ。毎日昼に山の祠を五ヶ所まわって火が消えていないか確認し、問題がなかったら村の自警団本部に行って報告するだけの簡単な仕事だ、もちろん山を走った分は稽古分に加算していいぞ」
聞けば簡単なお使い、毎日山の五ヶ所を回ってその後自警団の詰め所に行って報告するだけの簡単な仕事、聞こえはいいがルカは騙されなかった
「それって里の結界の維持に関わってくる奴でしょ?責任重大じゃないですか」
里は結界に守られているおかげで集落に魔物が入ってこないと聞いたことがある、それに結界術は起点となるもので囲うことで効果を発揮する、そして自警団は基本的に里の安全管理が仕事だ、その自警団の仕事になっているということである程度の察しがつく。そんな重要な仕事はやりたくもないし子供に任せないでほしい、それがルカの考えだ、しかしそんな事当たり前だという顔でルカの父…クドは返す
「大丈夫だ、基本的に夜にも大人がチェックする、昼のはいずれ夜の方を担当する際にスムーズに引き継ぎができるように練習しておく意味合いが強い」
祠の見回りは里の安全を維持するのに最も重要な仕事だ、そのため仕事の引き継ぎの際に緊張しないように、そして責任感を育てるために昔から存在するこの里の習慣なのだ
しかしルカにはもう一つ懸念点があった
「里の子供ってさ…、なんであんなに汚いの…?前に山走ってる時に一度だけ見たことがあるんだけど泥団子作って投げ合ってたよ…?馬鹿みたいに煩いし、まるで父さ…」
「ふん!」
息子の失言を完璧に聞き取ったクドのゲンコツがルカの頭に炸裂し、そのまま頭を押さえて蹲る。クドのルカへの評価はかなり高い、稽古に泣き言を言わずにちゃんとこなすし勉強もできる方だ、まだ対人はさせたことはないが型も綺麗だ、決して伸びないということはないだろう、しかし一つだけ見逃せない部分があった
「はぁ〜、嫌だ嫌だ、絶対聞いてくるよ、そのバンダナ何?かっこいいと思ってつけてるの?ってさぁ……」
まだ友達がいないのだ、八つになってもまだ同い年の子供と喋ったことがほとんどないのだ、稽古と勉強ばかりさせていた自分にも非はある、しかし気づいたらグループが出来ていてその輪に入ることを躊躇したルカに問題があるとクドは考えている。
「ほら絶対目立つよ、けどバンダナ外して眼見したって絶対聞いてくるじゃん、なんで右と左で色が違うの?って、だから父さん、詰め所には行かなくていいですか?」
「ッゥー……」
クドは思った、これは重症だと、このままだと本当にいつまで経っても友達ができない可能性があると、クドは心を鬼にしたのだった




