代償は・・・
GW企画5日目
あなたは、今の生活に飽きてきてない?
力を得たら、人は変わる。
何を望む、そのために何を捨てる
「えっ??」
「どうしたの?はる。」
「いや、なんか声がした気がして。」
「もう、飲みすぎたんじゃない?ここは私が掃除するから、外で風に当たって来な。」
「あぁ。」
ここはある県の県庁所在地にあるアパート。佐藤 陽翔は、幼馴染みの紫上 洸夏と大学3年目のゴールデンウイーク、初日の夜を宅飲みで過ごしていた。ここは、陽翔が大学から一人暮らしをしているアパート。少しお高めな価格で設備の整った学生御用達のアパートで、隣には高校生の女の子が一人暮しをしているほど安全が保証されている。
「充実しているはずなのに、つまらないんだよな。色々と抑圧される世界で。」
陽翔は、別に極悪人的考えの持ち主でも、清廉潔白な考えの持ち主でも無い。どこにでもいる、ただ毎日を浪費している大学生である。しかし、そんな生活につまらなさを感じつつも、何も行動を起こせないでいた。
「はる、そろそろお母さんが着くみたいだから、行くね。」
「あぁ、叔母さんによろしく伝えて置いてくれ。」
「わかった。また、明後日、約束忘れないでよ。」
「あぁ。」
洸夏は、ベランダにいる陽翔に声をかけると合鍵で扉を閉めて、帰っていく。陽翔たちの地元はここから電車で1時間ちょっと行ったところにある。洸夏は、実家からの通学で、よく陽翔の家に押しかけている。
陽翔の親は3年前に再婚したばかりだ。だからこそ、陽翔は家を出て一人暮しをしている。
「まだ、少し冷えるか。」
『そうだなぁ、外にいると体を壊しかねないな。』
陽翔の頭に男性とも女性とも取れる声が響く。まるで、お風呂にでもいるような感じで、頭の中で声が反響する。
「な、なんだ!?」
『おっと、慌てるんじゃねぇ。俺は”悪魔”、人の欲望を欲する者。』
「悪魔だと、そんなもの信じられるわけ。」
『なら、俺は何処にいるんだぁ?お前に見つけられんのか?あぁ?いいから、黙ってろ。』
「・・・」
どこからともなく響く、声に陽翔は下側ざる負えないと感じる。
『おぉ、それでいい。では、始めるとしよう・・・、これより契約を行う。お前は何を欲する、お前は何を支払う。』
「待ってくれ、あんたが悪魔だとしてどうして俺に、話しかけてくる。それに、契約だなんて今まで聞いたこともない。つまり、信じきれない。」
『信じる必要はない。そもそも、悪魔なんて信じるものじゃない。それと、今まではここまで露骨な契約は行えなかった。だから、聞いたことがないのだ。』
「なんで今になって。」
『神は緩やかな変化を求めていた。だから、人の闇を引き出す我々と人の光を引き出す天使が、それとなく世界を通して均衡を保っていた。しかし、変化が弱まった。過去の者たちはバベルの塔を築く様な爆発的な変化を求めていた。』
「神を信じなくなって、変化が無くなったと。」
『科学、それは確かにこの世界の真実だ。しかし、神の否定では無い。これまで、神がその力を使う必要がなかった、ただそれだけだ。』
神の祝福はたしかにあった。しかし、それは一種の可能性であり、開花させるかは人間次第だった。しかし、それではもう変化が乏しくなってきていた。そこで、神が選んだ策が爆発的変化を求めた力の干渉なのだ。
「それで、なんで俺なんだ。」
『理由はない、しかし、あえて答えるならば。与えない理由がなかったからだ。』
「は?」
『力は、他の力を呼び寄せる。運命とは避けられぬ偶然ではなく、選ばれた者の必然である。お前は、力を与えないなら楽しい人生を歩める。つまり、今のお前も大して楽しくない人生では無い。ならば、力を与えたらどうなるのか気になるではないか。より楽しむのか、元の人生以上の最悪か。』
「嫌な奴だな。」
『ふふ、悪魔だからな。それで、お前は何を欲する、お前は何を支払う。』
悪魔の声を聞くと陽翔は悩むまでもなく答えた。そこは、大学生、これまでの人生、欲しいと思った力など星の数ほどある。
「罪悪感を支払う。俺に、細胞を操る力を。」
『承知した。ここに欲望の悪魔と佐藤 陽翔の契約を交わす。』
陽翔が目覚めると朝になっていた。しかし、体に異常を感じていない。飲み会後の倦怠感があるのみである。
「夢・・・いや、違うな。この胸のマーク。」
陽翔の胸には血の滴る鎌のタトゥーが刻まれていた。そして、意識を集中すると自分の数億の細胞一つ一つを感じる事ができる。
そこから、陽翔の行動は早かった。
某スライム転生アニメの主人公のように全ての細胞に脳細胞としての働きを持たせる研究。
細胞に強固な細胞壁を持たせて、アメリカの某アイアンヒーローのようにナノテクのような鎧を身に纏えるのかの研究。
筋肉細胞の密度を上げ、同じく某アメリカのリーダーのような強靭な肉体を作る研究。
神経細胞を更に強化、電子信号の高速化で某フルダイブゲームを使った黒い剣士のような異常な反射能力を身に着けられるかの研究。
操れる細胞はどの範囲までなのか、また、どこまで操れるのか。失敗もあったが、それ以上の成功もあった。
1 操れるのは自分の細胞と肌が触れた細胞のみ
2 自分以外の動物の細胞は操るのに時間と集中力がいる
3 一度作った細胞は自分の細胞に限り、最短で生成可能
4 細胞分裂で生成される細胞は元の細胞であり、能力効果は反映されない
5 操れるのは明確にイメージできるところまでである
6 イメージさえできれば、現実離れした事でも出来る
「次は代償の方だが、まぁ、今、俺が人で試したいという感情を止めようとしてないことでもわかるな。」
陽翔は研究の際、野良猫を殺すこともあった。
研究を重ねる度とに、人間でもやってみたいと感じるようになる。感覚としては、枯れた花を飾り変える。本当にそれだけ、軽い気持ちで考えていた。
そこから数か月、特に日常生活に異常は無かった。強いて言うなら、学校をつまらないと感じるようになっていっていた。全細胞の脳細胞併用化は、陽翔自身にスーパーコンピューター以上の性能を与えた。
記憶力も同じで、数千という書物を全て記憶してしまう。また、プロの体の動きを記憶し、高い身体能力との両立で、実技関係も完璧。今まで退屈であった日々がさらに退屈になるのを感じる。
「おはようございます。」
「あぁ、おはよう。」
隣に住む女子校生で、名前は癸上 光。近くの高校に通っているらしく、たまに朝会うことがある。どうやら、転勤の多い両親らしく、一ヶ月に一度の頻度で両親がそれぞれ訪れている所を見る。
黒髪をハーフアップにした少し小柄な子で、バランスの良いスタイルをしている。
光は、そのまま歩いて学校へ向かって歩いていた。
「さて、俺は、どうするかね。」
「死ねばいいと思います・・・。」
陽翔が、家に入ろうとすると、アパートの通路の先にこちらを見る男の子が立っている。
ヒュ!
突然、陽翔の視界がゆがむ。ボトボト・・・。そこには賽の目に切り刻まれた肉塊が転がる。
「悪魔に魅入られた者など、世のために消えればいいのです。」
男の子が、その場を去ろうと後ろを向く・・・。
『さて、第一話はここまで。この物語は、力をつけた者たちの生き方を綴る物語。誰が主人公で、誰が、ダークヒーローとなっていくのか。それを見て決めるのは、お前ら、神だ。』
明日も続くGW企画
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