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 心の準備なんかする暇もなく、すぐに新しいヒロインはやって来た。


「シュゼット・メインズです。よろしくお願いします」


 大きな瞳に小柄なボディ、少し長めのボブカットはふわふわしている。まるで砂糖菓子のような外見。


 これ本当に同じキャラデザの人が入ってる? 私と随分タイプが違うんだけど。

 

 前作の失敗を教訓に気になる箇所を全部修正してみました、という気概を感じる。って、私が失敗作だって言いたいのか運営! 何か負けた気がする……


 セシリア曰く前作のように異世界から召喚された訳ではなくファーレーンの下町出身で、ある日突然聖なる力に目覚めたという設定らしい。


 聖なる乙女とは似て非なる立場でありながら同等の力を持っている……ということで王家にも知られる存在となった彼女はその力の解明のため聖女見習いとして学園に招かれることになった。


 というか前作のヒロインと同じクラスに転入してくるなんて、どういうシナリオなんだろう。


 あ、よくあるあれかな。引き続き登場はするけど今作では新ヒロインを助けるチュートリアル的な立ち位置、もしくは単純に友人ポジとか。


 壇上に立つ新ヒロインを見ながら自分なりの考察を立てていると。ん? シュゼットが今チラッとこっちを見たような……


「早く皆さんと仲良くなりたいので、私のことはシュゼットって呼んで下さいね」


 彼女がニコッと笑った瞬間、教室内がザワついた。男女問わず一気に色めき立つ。

 

 あ、何か嫌な予感……


*****


 流石ヒロインと言うべきか、転入初日からシュゼットはクラスメイト全員を虜にした。


 まずファーストコンタクトで皆の注目を集めたと思ったら、


『あれ、シュゼット何見てるの?』

『王都のカフェ特集……』

『はい。私の住んでいた街にはお洒落なカフェがなかったので、こっちに来たら行ってみたいと思っていて』

『そうなんだ、じゃあ今日の帰り良かったら一緒に行く?』

『え、いいんですか? 私、友達とこんなカフェでお茶しながらお話しするのが夢だったんです!』

『も、勿論! 私達でよかったらいつでも付き合うよ。ねえ?』

『『うん!!!』』


 人懐っこいキャラクターであっという間に女子中心グループの輪に溶け込み、


『メインズさん、そんなことしなくていいから!』

『そうだよ、僕たちが運ぶよ』

『すぐそこまでなので大丈夫ですよ、そんなに重くないですし……きゃっ』

『ああ、ほら! 大丈夫?』

『クラスメイトなんだからもっと頼ってよ、ほら』

『ありがとうございます……皆さん優しいんですね』

『『ううん、全然!!!』』


 か弱い女子力アピールで守ってあげたい! という男心をくすぐり、


『先生。魔法雑誌で「魔力の導き」ってコラムを書かれてますよね』

『ええ、よく知ってるわね』

『大好きで毎月読んでるんです。直接講義が受けられるなんて感激です! 私、先生みたいに魔力をコントロール出来るようになりたくて……』

『まあ……! 勉強熱心なのね、素晴らしいわ』


 尊敬と褒め殺しのダブルコンボで担任教師の好感度までをも爆上げた。


 明るくて可愛くてドジっ子、というテンプレートを絵に描いたようなキャラクターで老若男女、もとい生徒、先生を問わず片っ端からハートを掴みまくり!


 魅力の効果で一日にして「ヒロイン無双状態」に。


 それは他のクラスにも伝染しているようで……お昼休みには噂を聞きつけた生徒達がシュゼットを一目見ようと群がり、廊下に黒山の人だかりが出来ていた。


 私はというと。自分が前作のヒロインだからか手放しで可愛い! 愛でたいわー! という感情が沸かず。いつの間にかクラス中に蔓延した「シュゼット至上主義」な空気にすっかり乗り遅れてしまった。


 これが同族嫌悪ってやつ……? どんなに数値が高くても私に魅力は効かないのかな。


 それにしても行動パターンが初期の私と似ている。やはり同じシナリオライターが書くとそうなるのか。自分もあんな風に誰彼構わず愛想をバラまいていたんだと思うと……なんともいえない気分になった。


 何事もやり過ぎはよくない。反面教師だな……肝に銘じます。


*****


 何だか一日で一年分の疲れを感じ、教室でぐったりしているとカイルがやって来た。


「おい、どうした?」

「あ……カイル」

「何だ元気ないな。食べ過ぎか?」

「ううん大丈夫、心配してくれてありがとう」


 と言った瞬間カイルが凄いものを見た、という顔をした。


「――本当にどうした……?」

「何がよ」

「いや、ユウナが俺にありがとうなんて。いつもなら「それって、私が食い意地が張ってるって言いたいの!?」って食ってかかるところだろ」

「ちょっと! 私だってたまにはお礼くらい言うわよ」

「いやいや、その「たまには」が前回いつあった? っていう話で」

「数えるくらいで悪かったわね! 安心して、もうあんたには二度と言わないから」

「お、調子戻ったか。やっぱりそうじゃないとな」


 カイルの笑顔を見ているとさっきまでの疲れが嘘のように消えていった。抜群の即効薬、それが推し。


 そういえば隣のクラスなのにカイルはいつもと変わらない。


「この後セシリアと約束があるんだろ。俺も殿下に呼ばれてるから途中まで一緒に行くか」

「うん」


 教室から出ようとした直後、廊下側から突っ込んできた何かがカイルにぶつかった。


「きゃあっ!!」


 そのまま後ろに倒れそうになった何かを反射的に掴んで抱きかかえるカイル。その「何か」は……シュゼットだった。


 え、さっきまで教室内にいた筈なのにいつ廊下に出た!?


「あっぶねー……おい、大丈夫か?」

「は、はい。ありがとうございます」


 カイルに抱えられたまま固まっているシュゼットの顔がみるみる赤くなって――

 

「……あの、そろそろ離して貰っても……いいですか」

「あ、悪い」


 上目遣いで恥じらっている超絶可愛いシュゼットと特に何も反応がないカイル。

 

 でもこの感じ……私には分かる、これは出会いイベントだ。


「私、今日転入してきたシュゼット・メインズです。貴方は……?」

「ああ、殿下が言ってた聖女見習いか。俺は隣のクラスのカーライル・シュタイナーだ。よろしくな」


 明らかにキラキラした瞳でカイルを見つめるシュゼット。

 

 本日二度目だけど……何だかすごく嫌な予感がした。

本日の更新です。


私はふわふわ可愛いヒロインも好きですが、

キリッとした天然さんや美人なツンデレ女子も好きです!


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