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【改訂版】このハッピーエンドは許されますか?   作者: あや乃


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 ドサッ


 あれ? 痛く……ない。


「おまえなぁ、階段から降ってくるとかどんなサプライズだよ」

「……っ、カイル」


 階段を転がり落ちるはずが、私の体はカイルに抱きとめられていた。


「え、何で――」

「何でカイル様がここにいるんですか!?」


 私より先にシュゼットの声が響き渡った。


「さっき私が戻ってくるまで宮殿で待ってるって言ってくれたのに……」

「は? そんなこと言ってないけど」


 ん?? 二人の会話に食い違いが……


「怪我はないか、ユウナ」

「う、うん。大丈夫」

「は~~~……間に合ってよかった」


 そのままギュッと抱きしめられる。突然の接触に思わず悲鳴が出そうになったけど、


「お前に何かあったら俺が正気を保てねえ……」


 痛いくらいに強く抱きしめられた腕からカイルの熱が伝わってきて、本当に心配されているのだと実感した。


「カイル……」


「ちょっと待ってください!!!」


 そこに待ったをかけたのはシュゼット。


「どうしてカイル様がユウナ様を助けるの? あり得ないんですけど! だってカイルのベクトルは私に向いてるんだからこの場合の攻撃対象はユウナになる筈で、でも今目の前で繰り広げられているのは逆の事態。ということは……そうよ、まずその行動がおかしいのよ!!」


 ぶつぶつ独り言を言い始めたと思ったら急に爆発した。


「誰だあいつ、別人か?」

「一応本人だけど……まあ色々と事情がありまして」


「魅了って『相手の心を引きつけて夢中にさせてしまうこと』でしょ? ならカイルの目には私しか映らない筈じゃない、だってカイルは私に夢中なんだから!! 今だってユウナと私だったら庇われるのは当然私の方! なのに何でユウナに行っちゃうのよ!?」


 一人でヒートアップするシュゼットを横目に、私を抱きしめたままカイルがしれっと言った。


「俺、正気だけど」


「「はあ!!!!!?」」


 思わずシュゼットとハモってしまう。


「え、あんた魅了にかかってるんじゃないの?」

「魅了? ああ、やっぱりそうか」

「やっぱりって?」

「何かずっとくすぐったい感じはしてたんだけど、でもそれだけだったな」

「それだけ?」


 前作からのシステム改良で爆盛りされた新ヒロインの裏スキルが??


「ユウナの時みたいに心を支配されるような感覚にはならなかったから、お前の魔力が余程タチ悪かったんじゃねえか?」

「ちょっと……言い方!」

「悪い悪い」

「でもそれって」

「ああ、ユウナのおかげだな」


 どうやら私の魅了で耐性がつき、それがバリアとなってシュゼットのスキルを跳ね返してしまったらしい。


「はああ!? 今作の方がバージョンアップしてるんだから魅力だって魔力だって私の方が上に決まってるじゃない! どうしてユウナに負けるの!??」


 混乱しているシュゼット。納得いかない! とばかりにカイルに詰め寄る。


「で、でもカイル様はユウナよりいつも私を優先してくれましたよね? 何かあればすぐに手を差し伸べてくれるし、私が抱きついても腕を組みたいって言っても嫌がるどころか両手を広げて受け止めてくれた! 二人きりの時は愛称でシュゼって呼んで……デートだって数え切れないほどしたじゃない!? フラグは全部揃ってるんだから、このあと個別ルート確定したら来週からは恋愛イベント目白押しでめくるめく……」


 もうヒロイン補正が感情に追いつかず、表と裏がごっちゃになってしまっている。カイルももれなくドン引きで、


「一体何の話だよ。ていうか俺、メインズ嬢の名前呼んだことないんだけど」

「え。  ………………そんな筈は」


 確かに。最初に名乗り合ってはいたけれど、カイルがシュゼットを呼称で呼んでいるのを見たことがない。むしろ名字呼びすら今日初めて聞いたかも。


 さっきの話もカイルは全く身に覚えがなさそうだし……あ、もしかしてゲームをプレイしていた時のイベントシーンと現実を混同しているとか? えー、それはちょっと、と思いながらもそっち側の気持ちも分かるだけに……複雑。


「じゃあ、カイルは魅了されるって分かっててあえて一緒にいたってこと?」

「メインズ嬢が来たタイミングで学園内の様子が変わっただろ? 護衛の話が出た時、殿下からも密命があったんだ。生徒たちの状態からみて間違いなく魅了が使われている筈だから一番怪しいメインズ嬢の動向を探って欲しいって。護衛の肩書なら傍にいても違和感がないし何かあればすぐ拘束出来るからな」


 一歩間違えばミイラ取りがミイラになる可能性だってあるのに。アイスランめ、人が断れないのをいいことにこんな危険な真似をさせるなんて……あ。


>「ごめんね、アラン殿下が無茶な命令を押しつけるから……」

>「え? あ、ええ……そうね、そっちはそうだったわね」


 セシリアの歯切れが悪かったのはそういうことか!


「でも、あんた最近シュゼットの近くにいないことの方が多かったじゃない」

「それは……お前の噂がセシリアにも飛び火したせいで殿下がブチ切れて自ら証拠固めに乗り出しちまって、この一週間執務室に籠りっぱなしだったんだよ。まあ、俺が接触しなくなればメインズ嬢が何か行動を起こすだろうって狙いもあったんだろうけど」


>「あ、ああ……心配いらないよ。ちょっと多忙なだけで乙女祭には間に合うと思うから」

>ん? 何かアイスランがチラチラとこっちを見ている……ちょっと怖いんですけど。


 うわあ、ここも繋がっちゃったよ……ていうか、人の顔色うかがう位ならやんなきゃいいのに。


「あの約束の直後に軟禁されて連絡する時間すら取れなかったからさっき教室まで迎えに行ったら」

「え、教室に来てくれたの?」

「お前が中庭に向かったって聞いてすぐ追いかけたんだ。正直焦った、もしこれが計算の内なんだとしたら……ただじゃおかねえぞ、あのクソ王子」


 いや違うと思う……って、ちょっと! 執行猶予期間中にまた不敬罪になりそうなことを口走るのはヤメテ!!


「あー、もうシナリオと違いすぎて何が起こってるんだか全然分かんない!!」

本日の更新です。


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