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うーん……どう考えてもさっぱり分からない。
教室からカフェテラスに移動した私は飲み物を片手に悩んでいた。
モヤモヤは推し不足によるものだけどあの胸の痛みは何だったのか。はっ! まさか推し欠乏症と幸せを祝えない病に次ぐ第三の症状が出てきたりしてないよね?
これ以上は勘弁してくれと思っていると、肩を叩かれた。
「セシリア……と、レイチェル!」
「久しぶりー! ユウナ」
そこには聖女研修中のレイチェルの姿があった。
カイルと同じクラスの彼女はよく私たちのクラスに顔を出していたんだけど、聖女研修と授業の掛け持ちになってからはすっかりご無沙汰だった。
「ユウナの後ろ姿が見えたから来てみたら……例の噂の件?」
「え、どうして?」
「急に宙を見上げたと思ったら頭抱えて唸り出すんだもん。かなり挙動不審だったよ」
考えごとをしていただけなのに周囲からは怪しい行動に見えていたとは……申し訳ない。
話聞くよー、と向かいに座る二人。丁度いいから相談してみようかな。
「私、今推し欠乏症なんだけど」
「いきなり何の話??」
てっきり噂の件だと思っていたんだろう。レイチェルが目を丸くしている。
「ユウナの日々の活力が不足しているっていう意味よ。分からない単語は飛ばして大丈夫だから」
「何かね、急に胸が痛くなって」
「え!? どうしたの病気?」
「お医者様に見て貰った方が」
「ああ違う違う、そんな深刻な話じゃなくて!」
自分でも解明出来ていない状況を人に説明するのって難しい。
「カイルとメインズさんが一緒にいるところを見てるとモヤモヤしてて。これは推し欠乏症が原因だって分かってるんだけど」
「うん」
「ええ」
「この間、モヤモヤしたあと胸が痛くなったから」
「「……え?」」
「他にも推し関連の症状が出てきたんじゃないかと思って。これ以上の併発は避けたいから何とかしたいんだよね」
「推し云々は一旦無視するけど、ユウナそれ――」
レイチェルが何か言いかけた時、セシリアがそれを制した。
「ユウナ。あなたの悩みの原因、分かりましたわ」
「ほんと!? 教えて!」
「ええ。でもちょっと長い話になるから、続きはフォンクライン家でどうかしら」
「え?」
「明日はお休みでしょ。レイチェルも聖女研修がない日だし、三人で夜更かししましょうよ」
それって、フォンクライン邸にお泊り出来るってこと!?
「いいの? 私行きたい!」
「勿論よ、でもレイチェルはいきなりだと難しいかしら?」
「ううん大丈夫。いざとなったら奥の手を使うから」
使う相手はジュラルドだろうけど奥の手が何なのか凄く気になる。
「では決まりね。詳しい話は放課後に改めて」
「じゃあねユウナ」
「うん!」
手を振って二人を見送る。
私の悩みは何一つ解決しなかったけどそれよりも……フォンクライン侯爵家で女子会なんて楽しみ過ぎる!!
今夜は目一杯語り明かすぞーーー!!!
本日の更新です。
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