居場所。
「どう思った?」という問いに管理人としてどう答えたらいいのか分からず、半ば強制的に面接を終わらせ面接室をあとにしていた。
レイナは話していないだけでもっと深い心の闇を抱えているはずだ……。そう思ったら答えるのが怖かった自分いた気がする。
まぁレイナや他の2人もそうだけれどまだあって日が浅すぎる……。深く知るにはゆっくりと時間をかけねば…、と自分に言い聞かせていた。
時計を見ると時刻は18時を回っていた。
面接の他にも雑務をこなしていたため気づけば空が暗くなり始めていた。
「あの子らの飯、何作ればいいんだ……?」
そう思った時、携帯の着信音が鳴り響いた。
画面をみるとカンザキからだった。
電話に出るとカンザキはこう言い放った。
「お疲れ様です、カンザキですが、面接は無事に終わりましたか?」
「無事にと言っていいのかわかりませんが一応終わってます。なにかありましたか?」
「特に何かあったわけではありません。が、あなたを連れていかねばならないところがあります。10分ほどでそちらに到着します。」
「なんか危険な匂いがプンプンするのはきのせいですよね?」
「見れば分かります。どう判断するかはあなたにお任せします、では、のちほど……。」
「ちょっ!カンザキさ……」ツーツーツー…。
(いきなり電話かけてきて話すだけ話していきなり切るのかよ………、自己中だなぁ。)
そう心の中で思いながらもカンザキが迎えにくるため外に出る準備をすることにした。
レナ、ユイ、レイナ、それぞれに出かけること、夕飯は食糧庫にあるから適当に食べて
と伝えておいた。正直、脱走事件があってすぐだから彼女ら3人だけで大丈夫なんだろうか……?っていうのが本音。
(夜間警備員とかって……カンザキに頼んだら雇ってくれるんだろうか?いや、まてよ?もし雇うなら管理人業務も警備員に任せればいいのでは……?)
ってことは頼んだところで管理人1人いれば十分、って言われるのがオチってことだ。
まぁそれも彼女ら3人だけでこれから先入所者が増えないことが大前提だけど……。
こんなに広くて元学校で部屋もたくさんあるし……。入所者が増えないわけがない。
準備を済ませカンザキを待っているとふたたび携帯が鳴り響く。
電話に出るとカンザキが「到着しました、時間があまりありませんので急いできてください」
といい電話が切れた。急いで出入り口に向かうと車の中でカンザキが待機していた。
(そういや出入り口の鍵壊されてるけどどうしたらいいんだ?)
そう思いながら扉を閉めるとそこには以前の鍵とは全く違うタイプの鍵のようなものが設置されていた。
「なんじゃこりゃ………。」
その光景にびっくりしているとうしろで車のドアが開く音が聞こえた。
「新しいカギを設置しておきました。今回のものはそう簡単には壊れません。指紋認証、生体認証、8桁の暗証番号でロックされています」
「ここまでする必要ありますかね?」
そう言うとカンザキは「前回の鍵がなぜ簡単に壊されたのか……、わかりますか?」と聞いてきた。
答えられずにいるとカンザキがさらにこう続けた。
「答えは簡単です……。彼女たちの中の誰かが脱走すると予測していたからです。だから壊しやすい鍵にしていたわけです。」
「彼女たちを試したってことですか?」
「ニュアンスは少し違いますが、だいたいそんなところです。」
「そもそも家出をするということはなにかしらの不自由を感じていてその環境から抜け出して自由になりたいからなんです。」
「けれど自由になるには彼女らは早すぎます。だから新しい居場所として避難女を提供しているんです。」
(それって言い方を変えているだけで何か問題を起こされるのを未然に防ぐためにただ監視したいだけなんじゃ………。)
「話していたら無駄な時間が過ぎるだけですよ。さぁ車に乗ってください。助手席でお願いします。」
そう言うとカンザキは助手席のドアを開けた。車に乗り込むとカンザキが車を発進させた。
「これから行くところは過去に避難女の試験ケースとして入所していた家出少女たちが集まっている場所です。」
「過去に……?!ということはこの法案はもっと前から進んでいた、ということですか?」
「まぁそうなりますね。家出少女というすでに社会のルールから外れているような人を扱うわけですから、それ相応の準備と時間が必要になります。」
「今言ったことは他言無用でお願いします。もし、誰かに話したら………、わかりますね?」
「は、はい……。」そう返事せざるを得なかった。
車に乗ること1時間……。避難女がある田舎町から離れ、人が忙しなく行き交う繁華街のようなところをカンザキが運転する車は走っていた。
するとカンザキがこう聞いてきた。
「これはただの質問なのですが、あなたはキャバクラとかそういう類いの店に行ったことはありますか?」
「えっ、な、なんですか急に………。ありませんよ。キャバクラとかガールズバーって呼ばれるところが苦手なんです。」
「苦手……?じゃあ女性も苦手ということでしょうか?」
「それとこれとは話が別です!な、なんというか…………、あの雰囲気が苦手なんです。」
「そういうことですか……。」そういうカンザキはニヤリと笑っていた。
繁華街を走り始めて10分が経ったころ……。
カンザキが車を停めた。
「到着しましたよ。案内するのでついてきてください。」
カンザキにそう言われあとについていく。
(飲み屋街みたいなとこだな……。ってか、カンザキのやつ歩くのはやっ……。)
歩き始めて数分後……。カンザキがある建物の前で足を止めた。
「着きました」カンザキにそう言われた時に目の前にあったものを見て俺は驚愕していた……。