正体
「管理人さん……。私が捨てられた理由……聞く覚悟はありますか………?」
名前も知らぬ家出少女にこう言われ、管理人としてどうしていいのか決めかねていた。
そもそも避難女の管理人になったのだって昨日今日の話だし、生まれたての子鹿のようにうまく立てないような状況でこの少女の面接をやってしまったのが間違いだったのかもしれない…。
(そもそも管理人を引き受ける交換条件にまんまとつられてしまったのが最初の間違いだったんだ。のこのこと着いてきてしまってこのざま……。今の時代を生きる子どもたちのほうがまともな判断をするかもしれない…。)
引き受けてしまったからには戻ることはできないし、戻ったところで寝て起きてを繰り返す日々……。そんなクソみたいな毎日を送るくらいならここの管理人をやって少女たちの面倒を見ていたほうが少しは役に立てているかもしれないな……。
頭の中を色々なことが駆け巡っていた……。
(考えてたって答えは出ないし時間の無駄だよな……。よし、彼女の話の続きを聞くとしますか……。)
「話を続けて。あ、それと下の名前だけでいいから教えて。あと呼び方もね。」
そう言うと彼女はなぜか安堵したような表情を浮かべていた。
だがその理由はすぐにわかった。
「今まで接してきた人はだいたい聞く覚悟はあるか?って言うとそれ以上話すな……みたいな感じで急に態度を変えていたのに、管理人んは引かないね………?なんで?」
「私の話を信じてないとか……、だったりするかな?」彼女が次に口を開く前にこう言った。
「信用してないわけじゃないんだ…。ただ、あまりに内容が悲惨というか聞いていて辛いというか……。でも管理人として君にしてあげられることってなんだろう?って考えた時にまずは話を聞いて君の肩の荷を少しでも軽くしてあげることかな、って」
「君が言うように聞かないって言う選択肢もあるかもしれない…。けど、それって結局その人から逃げてるってことなんじゃないかな、って思うんだ。」
「人が人から逃げることなんていっぱいあるのかもしれない……。けど、君たちのような家出少女から逃げるってことは君たちからすれば、人によるかもしれないけれど、君のように過去に身近な人間に捨てられたことがある人だったら、"また見捨てられた" "私には居場所がない"」
「って感じでまた負の連鎖に陥ってしまうんじゃないか、であるならば君たちの居場所を作るためにも管理人として君たち家出少女から逃げない、って、まだ管理人になって日が浅いけど、そう思うんだ。だからこそ君の話を最後まで聞きたいんだ…。」
彼女は真剣な眼差しで話を聞いていた。内容がちぐはぐなところも多かっただろうに、一瞬たりとも目線を外さずに聞いてくれていた。
話し終えたあと、彼女はこう話してくれた。
「私、レイナ…。呼び方はそのままでいいよ……。管理人さんの覚悟はちゃんと伝わってきた…………。でも、ね、話すのが怖いの…。管理人さんは私から逃げないって言ってくれたけど、今、話そうとしていることを聞いたら、態度が変わるかもしれないって思うと………、ものすごく、怖いの………。」
「管理人さん、これから話すことを聞いても私から逃げないって、心に誓える……?もしそうならゆっくり頷いて……?」
ここまで話を聞いてきて今更逃げるなんてできないし無責任すぎる…。そう思ったら自然と頷いていた…。
「私ね……、入院していた時の記憶はほとんどと言っていいほどないんだけど、今でも鮮明に記憶に残っていることが1つだけあるの……。それはね……、私が抱えている病気のことを初めてお医者さんの口から聞いたことなんだ………。」
「入院していたすぐのことらしいんだけど、私が部屋で暴れたらいしいの……。なんで暴れたのか全く覚えてないんだけど、その時対応してくれた看護師さんに私が聞いたらしいの……。」
「わたしのびょうきはなんですか?」って。
「看護師さんはすぐには答えられなかったみたいで私が実際に自分が抱えている病気のことを知ったのは次の日のことだった…。」
「暴れた時に対応してくれた看護師さんとわたしの担当医が突然部屋に来て、病気のことを話してくれたの……。簡単に言うと病名が定かではない病気で唯一わかっていることと言えば症状が出るのは子どもの頃がほとんどで大人になるにつれて症状は良くなっていく、明確な治療法も無く、症状も人それぞれ…。」
「ほとんどのことが謎に包まれている病気、って説明された……。仮に病名をつけるとしたら、謎病ってとこかな?なんて、急に言われたってこっちのほうが謎だわ!ってツッコミたくなったね。」
「これが私が抱えている病気の全て。管理人さん、どう思った?」
謎に包まれすぎた病気……。この病気を知るにはまだ早すぎたのかもしれない……。
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次回予告、政府の人間、家出執行人のカンザキ、が再登場します。家出少女たちの行く末が少し明らかに?!
ご期待ください。