たらい回し
話しながら泣きじゃくる彼女に対し、慰めようと頭を撫でた。それでも彼女の涙は止まることはなかった。
相当辛く悲しい思いをしてきたのだろう…。
両親や親戚の人たちに捨てられるなんて、一体なにがあったのだろうか……。
涙でうまく話せないだろうに、それでも彼女は懸命にこう話す。
「盗み聞きするつもりなんてこれっぽっちもなかった…。けど、話の内容的に私の病気のようなことを話していたからつい聞いてしまったの。」
「その時は病名まではわからなかった…。けど、"大人になるまで油断はできない、何か問題があればすぐに他へ"」
「その言葉だけが今でも忘れることができない……。その言葉を最後に私はまた捨てられたわ……。」
3度にわたり捨て子になっていたなんて、正直思ってもみなかった。管理人として彼女にどう言葉をかけていいのか…。その時は考えても答えは出なかった。
彼女の涙がようやく止まった頃、こう話し続けた。
「3度、両親や親戚の人たちに捨てられたあとの話……管理人さん、聞きたい?」
いきなりの問いにすぐに反応することができなかった。だが、管理人として今できることは彼女の話を聞いてあげることだと頭に理解させ、「話してくれ」と彼女に言った。
彼女は少し黙ったあと、こう話してくれた。
「捨てられたあと、私はさらに遠い親戚の家に引き取られたの…。でもそこで過ごしたのはたったの1ヶ月。ちょうど中学校入学とおなじくらいに私はまた捨てられて、そのあと精神科に治療という名目で入院したらしいんだけど、入院していた約3年間くらいの記憶が私には……ないの…。」
「4度にわたって捨てられたことによって私の心は闇のように深く荒んでいたの…。なぜ捨てられなければならないのか……、その時の私はまだ分からなかった。」
「いや、分からなかったと言うよりわかりたくなかったのかもね……。入院先で出された薬がさっき管理人さんに見せた薬だよ…。もし、入院じゃなくてどっかの施設に送られていたら私は今ここにいないかもね……。」
ここまで深く悲しい過去をなんとか乗り越えてきたんだと思うとこちら側も辛くて悲しかった。
高校生くらいの少女が経験してる内容とは思えないし思いたくもなかった。
彼女は話している間、ずっとうつむいていたが、急にこちらを向いた。それと同時に彼女が「管理人さん!私が捨てられた理由……聞く覚悟はありますか………?」
この時はまだ知る由もない、彼女が抱えている病気の正体を……。
次回、ついに明らかとなります。