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導入

 脳裏に焼き付いている。仲間の一人が蛮族に襲われる姿を、殺しきれず漏れる息を、最期の姿を。幾度となくフラッシュバックし、耐え切れなくなると、感情と一緒に吐き出して目が覚める。いつも通り最悪な目覚めに、動悸を抑えながら吐瀉物の処理にかかる。一連の動作がぎこちない手の震えが混じる。震えが落ち着いてきた、お世話になっている家主に挨拶をしなければ。

「おはようございます。何か手伝えることはありませんか?」

 あてもなく逃げ、倒れていた自分を村まで運んだお人好しだ。

「ああ、目が覚めたか、無理はしなくていい。ただ、今日は昼頃に街から派遣された冒険者が来る。お前さんの出会った蛮族に関して話が聞きたいそうだ。」

 蛮族、反射的に込みあがるものを必死に取り繕いながら続く話に耳を傾ける。お人好しも言いづらいことがあるのか、表情が強張る。

「ここ最近で姿が確認されている危険な蛮族の可能性があるそうだ。緊急性が高いそうで名うての冒険者に招集をかけたらしい。お前さんにとって辛いかもしれないが村にもその危険が迫っているかもしれん。どうか頼む。」

 お人好しもここまでくるとさぞ生きづらいだろう。立場を考えれば、断れば無理にでも口を割らせると言われても可笑しくないだろうに。

「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」

 分かりやすくお人好しの表情が緩む。自分にとってもなんの問題はない。そう思う自分がどこまでも嫌になる。問題がないわけない。ただ口に出して、人に話して、なんとなく気持ちが楽になることを祈っている。そんな逃げるばかりの自己嫌悪に浸りながら客人が来るのを待った。

 家の外が騒がしくなる。動悸が速まるのを感じる。緊張の手汗を握りしめながらただ待つ。

「おじゃましますわ~」

 気の抜けた声とともに扉を開け、一つの人影が入ってくる。入ってきた姿は、身長は150cmほどだろうか、端正な顔立ちは血生臭い世界からは程遠く、目に濁りはみられない。全身は正気を疑える赤いドレスに包まれており、フリルをはじめとして繊細な装飾が随所みられ、傷の一つも見えやしない。なによりも目を引き付けたのは、波打った刀身は身長と同程度の長さはありそうな、2本のフランベルジュを携えていたことだった。

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