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殴ってみたら大惨事

俺は壁を殴った姿勢のまま、目の前で起きた光景に目を丸くしていた。

文字通りに消し飛んだ壁の向こうに、開けた空が見える。

異世界でも、雲は白いし空は青で、太陽があった。

どうやら今は昼?の時間らしい。


外の景観を塞いでいた壁は、けっこうな厚さだったし、通路自体も高さも幅も3か4メートルはあるサイズだ。

それがぽっかりとくり抜かれたように、通路と同じ大きさの穴が開いてしまった。

岩や石のような形すら保たず、アニメのレーザー兵器などで消し飛んだみたいに、粉々に吹き飛ぶとは。


殴る前に感じた、体内が爆発したような感覚。

ブラッド・バーンって、視界に表示されていたが、その機能によるものだろうか?


絶対に人に向けちゃいけないし、拳一つで出しちゃいけない威力だろ、これ。


先ほど壁を殴った時にこの威力を出していたら、どうなっていたことか。

今の光景で済めばマシだな。


俺の中で、この体の封印説が濃厚になった。


しっかりと制御しないと、危険物認定とかされて再度封印待ったなしではないだろうか。

外に出たら気をつけねば。


ひとまず空いた穴から外を眺めてみる。

眼前には、巨大な森が広がっていた。

見渡す限り森で地面が見えず、海や川も見えない。

どこまで広がっているのだろうか。

写真でしか見たことのない、アマゾンを想起させる光景だ。


眼前の光景に見惚れていた俺は、失敗を冒した。


足元の確認を疎かにしていた、と気づいた時には足を踏み外していたのだ。


そう、穴の外に足場があると思い込んでいた。


「あっ⁉」


思わず大声が出るが、遅かった。

そして、空を飛べるはずも飛ぶ方法があるのかもわかっているはずがなく、俺は真っ逆さまに落ちていく。


「うおおおおお⁉」


高層ビルの最上階を思わせる高さからの落下だ。

あまりに予想外の高さからの落下で、正直めちゃくちゃ怖い!!


このまま地面に落下して大丈夫か⁉


普通に考えれば死ぬ高さだが、この体なら平気ではないかと楽観的な考えもよぎる。

痛覚もないようだし試してみるか、とも思うが、自分の今の体にどれだけの耐久力があるかもわからないのだ。

無謀が過ぎるだろう。


地面までまだまだ距離がある。

先ほど呼び出してみた説明書らしきホログラムに、空を飛ぶ機能とか書かれてないだろうか。

ワンチャンを期待し、俺はホログラムを読み込んでみるも、それらしき項目は皆無だった。


終わった。

俺に出来ることはもう何もないので、あとは地面に激突しても無事であることを祈るだけだ。


そうして、数分は落下していただろうか。


木々ばかりと思っていた周囲の中で、自分が落ちるであろう箇所に、岩というか山というような物があることに気づく。


木をクッションに、とか考え出していたところに、まさかの剥き出しの地肌。

仕方なく覚悟を決めた俺は、せめて顔からは避けたいと思い、眼の前で両腕をクロスさせる。


激突時の凄まじい衝撃が全身を抜けていく。


両腕をクッションにしながら、俺は転げ落ちるように激突箇所から地面へ降り立った。

無事に地面に立てていることに、ほっと胸を撫で下ろす。


痛覚がないこともだけど、頑丈な体で助かった。


両腕を見ても、傷一つない。

さすがに頑丈過ぎだろう、この体。


「さて······」


まさかの紐なしバンジーで、万事休すかと思ったが、無事であることだし、とりあえず散策してみるか。

どういう世界か、確認しないことには何も始まらないしな。


まずは周囲や、俺がいたのがどういうところなのか、確認から始めようと自分が落ちてきた方を見上げる。


「······おおぅ」


見上げた先に、巨大な生物の頭があった。


大きさでいったら、ほとんど恐竜に近い体躯。

形状は亀に似た四足歩行で、長い首についた大きな頭が、俺の方に向いていた。


心なしか、怒ってるように見えるし、両目がこちらを凝視している。


よく見ると、口の端から血が滴っており、頭頂部に怪我を負ってるような?


そこで俺は気づいた。

先ほど自分が落ちたのが、岩や山などではなく。

そうとしか見えないような外殻をまとった、眼前の生物の頭上だったのだ。


こいつからしたら、いきなり頭上に巨石が落ちてきたみたいな衝撃だったのだろう。

そりゃ怒るわ。


外へ出て早々に、やってしまった感がとてつもない!!


ここは逃げの一択。

自分にどこまで何が出来るのかわからない今、出来る限り逃げ回るのが得策だ。


当然、相手はこちらを逃がす気はなく、巨大な前脚を俺へと振り下ろしてきた。


「ぐおっ⁉」


大きさもさることながら、速い。

避けることが出来ず咄嗟に両手で受け止めてしまう。


「お、重い······」


前世で味わったことのない凄まじい重量。

この体でなければ、一瞬でぺしゃんこだっただろう。


だが、受け止めている。

耐えられている。

自分が思っていた以上にこの体に力があって助かった。


「きゃあ!!」


なぜか聞こえてきた女の子の悲鳴。


顔を向けると、巨竜から少し遠ざかった位置で、少女が頭を抱えてうずくまっていた。


······えぇ? どういう状況なの?

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