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チュートリアルは大事

嘆いていても始まらない、切り替えよう。

正直また人間として生きたかったのが本音だが、転生してしまった先がこの体だったのだ。

向き合って生きていくしかない。

俺は覚悟を決めた。


そもそも、どういう構造なのか、最初に知るべきは自身の体の有り様だろう。

やたらと硬そうなのに、関節部は継ぎ目もなく滑らかに動く。

動く部分を触るも、やはり感触は硬い。

どういう原理で動いているのか、首をひねるばかりだ。

動いている原理といえば、体の構造を意識しだして気づいたが、先程から呼吸をしていない。

出来ないことはないようだが、必要としていないのか、呼吸をせずとも苦しくないのだ。

人間の体だった時も意識して呼吸しているわけではなかったが、改めて意識してみると違和感がすごいな。

当然ながら、心臓もないのだろうと、胸のあたりに手を当てて確認してみる。

鼓動らしきものは何も感じ取れない。

といっても、胸も鎧のようなロボットのような形状だ。

外装部分が分厚すぎて感じ取れないだけで、中にはコアみたいなものがあるのかもしれない。

そして、温度を感じてないことにも気づく。

鍾乳洞のような中だと言うのに、寒さを感じないし、足裏からも冷たさを感じなかった。

本格的に、人間を辞めた感があるな。

ゴーレムやロボットと言うほうがしっくりくる体だ。


こうなると説明書。

切実にこの体の説明書が欲しい。

フィクションの転生作品だと、レベルがあったりスキルがあったりで、ゲームみたいに画面を呼び出したりして確認が出来ていたが。

あれはあれで、必要でわかりやすい要素なんだな。

ここがどんな世界かも不明なのに、自分の体のこともわからないとか。

不明点だらけで、何からすればいいのかがわからん。


通路を見る。

まずここから外に出られるのかどうかだな。

出られたとして、どんな世界なんだろうか。

中世ファンタジーみたいな、お約束の世界を想像してしまうが、それは楽観的過ぎるよな。

このまま、鍾乳洞のような洞窟がひたすら続いている世界という可能性も否めない。

それに、もしドラゴンみたいな生き物がいたとして、この体だ。

戦って勝ったり出来るのだろうか?


う〜ん、体感的にフィクション作品みたいな出来事だからか、ゲームみたいな思考になってしまうな。


現実的に考えて、怪物みたいな生き物と戦うなど自殺行為だし、見ても逃げの一択だ。

こんな人外の体だからこそ、戦ってみてもいいのでは、という考えがよぎるが。

自分の体にどれだけの戦闘力があるかもわからないし、仮にあっても相手のほうが圧倒的に強いかもしれない。

それに人間がいた場合、この体を見て、敵と定めて排除しにくる可能性も高い。

こんな人型の石像を祀ってるからには、人間もしく

はそれに類した知的生命体がいるのは、確実だろうしな。

慎重に事を運んで、損はないはずだ。

また死ぬのは勘弁願いたい。

あの感覚は、ほんとに怖かったからな。

となると、まずこの体で何が出来るか確認しないと、外にも行けないか。

とりあえず、運動能力を確かめようとその場でジャンプしてみた。


「うおっ!?」


軽く跳んだつもりが、想定外に体が跳ね上がった。

ガゴッ!

頭が天井にぶつかる。

3か4メートルくらいはありそうな高さなのに、まさかぶつかるとは。

幸い、ギャグ漫画のように天井に頭が刺さってぶら下がる、なんて間抜けを晒さなくて済んだ。

なんてジャンプ力。

生前にここまでとはいわないが、こういう高い運動能力が欲しかったぜ。

そして、思いっきり天井にぶつかって気づいたが。

どうやらこの体、痛覚もないようだ。

頭にも首にも、ぶつかった感覚はあれど、痛いという感覚がまるでない。

次に俺は、腕で壁を軽く叩いてみた。

コンコン

硬い物同士がぶつかる音が響く。

痛覚がないのはわかったが、耐久力はどうなんだろう。

パンチ力も含め試してみようと俺は右拳を握り、壁を殴ってみた。

ゴガァア!

パンチの衝撃で鍾乳洞が揺れる。

思っていた以上に力があるようで、軽く殴っただけで鍾乳洞の天井から、パラパラと小石が降り注ぐ。


全力で殴らなくてよかった。

危うく生き埋めになるところだ。

この体は呼吸をしていないので、窒息はないだろうが、かといって埋まったままでずっと生きるのは最悪すぎる。


全身が鎧というかロボットのような形状だから、多少はそうではないかと考えていたが。

人外らしいパワーと耐久力を持った体のようだ。

やはり、ゴーレムかロボットなのでは?

壁に拳大のクレーターが出来ているのに、拳には傷一つついていない。

これがこの世界で通用するものだと、取れる選択肢が増えるのでありがたいが。


「でも、外に行くなら、もっと情報が欲しいんだよな」


この体がただ祀られていたとは思えない。

何者かはわからないがこれを造り、ここに封印していたと考えるほうが状況的にしっくりくる。

俺が転生しこの体になったことがおそらくイレギュラーな事態で、本来は遠隔操作か何かで動かすことを想定していたのかもしれない。

だとすれば、俺がわからないだけでもっと高性能な機能を保持している可能性がある。

それを動かすための説明書的な物が、体のどこかにありそうな気がするんだが。

でも、封印したなら悪用されないよう、あえてそういうのを遺していない可能性もあるか。


「う〜ん、でもやはり説明書は欲しい。出来ればこの体だだけじゃなくて、世界観の解説も含んでるやつ」


顎に手を当ててぼやいていると、突然視界の周囲にウインドウが羅列された。

某アメコミの実写映画みたいなやつだ。

急な表示には驚いたが、ファンタジーな出来事にテンションが上がる。

表示はすべて、見たことがない文字で綴られていた。

あとこれ、視界が狭くされて、地味に見づらいな。


「あれ? 見たこともない文字だけど、なんとなく読めるぞ」

書いてあることの意味がわからない言葉も多いが、文字自体は読める。やはり周囲を解析して表示くれてるようだ。壁の材質とかが表示されている。


なぜだ? 何で文字が読める?


自分の転生前を思い起こすが、日本語や英語とは全然異なる文字だ。

少なくとも自分が見たことのない文字のはずなのに、何で読めるのだろうか?

この体にそういう補助機能みたいなものがあるのかもしれない。


どうやら自分の意識がトリガーのようで、念じたら視界から表示が消えた。


これ、やっぱり体のどこかに説明書みたいなものを表示させる機能があるんじゃないか?

そう思い念じると、右手の掌あたりからホログラムで説明書らしきものが出てきた。


おお! やっぱりあったし、これは便利!


問題は、表示のほとんどが南京錠みたいなマークということだ。

おそらく、ゲーム的な表現みたいなもので、機能がロックされてるのだろう。

どうやってロックを外せるかわからない以上、自分の体で何が出来るのかほとんど判明しなかったな。


「結局は、外に出てみないとダメってことか。こればっかりは手探りでいくしかないよな」


人がいた時のコミュニケーションについては、出会った時に考えよう。


意を決し、俺は外へ行ってみることにした。

だが、せっかくの覚悟を潰すかのように、通路は行き止まりだった。

壁で塞がれている。


これは、本当に封印されていたっぽいな。


引き返して祭壇側を確認してみるべきか悩むが、封印されていたのなら隠し通路などは望みが薄いだろう。


生き埋め覚悟で、一か八か、壁を殴ってみるしかないか。


本気で殴ってみようと意識すると、先ほど消したはずのウインドウが、視界の端に表示される。

書かれていた文字を読むと、どうやら表示された機能が使われるようだ。


『マキシマイズ・アビリティ:No.1 起動』

『No.1 ブラッド・アーツ:解放 』

『ブラッド・バーン:スタン・バイ』


体の内側が爆発したかのような感覚に押されるように、俺は右拳を繰り出す。

先ほど殴った時とは比較にならない破壊力で、俺の目の前から文字通り壁が消し飛んだ。

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