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空が蒼かった。
「なんで君はここにいるの?」
突き抜ける青空の中、より一層眩しいアイツが顔を出す。
あれからほとんど毎日、彼は、昼休みの屋上という私のユートピアを侵し続けている。
「五月蝿い」
「邪魔だ」
「どっかいけ」
何度も似たような言葉を投げつけた。
でも、彼は意に介さず、ただ私に言葉のボールを投げ続けた。
暖簾に手押し、糠に釘打ち、コミュ障に語り懸けだ。
それなのに、諦めない彼に、純粋に疑問を投げかけたことがある。
「どうして私に拘るのよ? もっと可愛い女の子ならたくさんいるだろうに」
最後は蛇足だったけど、聞きたいことは聞けた。
でも、返された答えはこの上なくタチが悪くて。
「言わなかったっけ? 俺は話したい人と話してるだけだって」
ずるい。卑怯だ。ダメすぎる。
これで、『そーいう気持ち』が無いのだから本当にタチが悪い。
心揺れるのは私だけ。そんなのはダメだ。
「なんで、私と話したいのよ。何の接点も無かったでしょ」
そう言うと、彼はなぜか一瞬だけ俯いて、『そっか』と呟いた。
そして、そんなことをしたかと思えば今度は再度顔を上げて、こっちを見る。上げられた笑顔は少し悲しさを隠すように眉根を落としていた。
「……うん。そうだね。でも、仲良くなりたいっていうのに理由がいるのかい?」
理由なんていらない。
それは正論だ。でも、私のモヤモヤがそれで晴れるわけじゃない。
「私が聞いてるのは理由じゃない。アンタのその目を私のどの部分が惹きつけたのか、それを聞きたいだけ」
また変な表現になってしまった。
詩的というのも烏滸がましい。
普通なら、嘲笑われてしまうところだが、この場この時この人だから、それは大丈夫だった。
でも、別のところに穴はあったようで。
「あれ? 俺、君に惹かれてるなんて言ったっけ?」
別に、そう言う意味で言ったんじゃない!
バカじゃないの?
ただ、私のどこを気にして話しかけてきてるのかを聞きたかっただけよ!
でも、あの時の私にそうきちんと切り返す冷静さは備わってなくて、結局泣き寝入りだった。恥ずかしさに顔を下げる他なかった。