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7p


 空が蒼かった。


「なんで君はここにいるの?」


 突き抜ける青空の中、より一層眩しいアイツが顔を出す。


 あれからほとんど毎日、彼は、昼休みの屋上という私のユートピアを侵し続けている。


「五月蝿い」

「邪魔だ」

「どっかいけ」


 何度も似たような言葉を投げつけた。

 でも、彼は意に介さず、ただ私に言葉のボールを投げ続けた。

  

 暖簾に手押し、糠に釘打ち、コミュ障に語り懸けだ。


 それなのに、諦めない彼に、純粋に疑問を投げかけたことがある。


「どうして私に拘るのよ? もっと可愛い女の子ならたくさんいるだろうに」


 最後は蛇足だったけど、聞きたいことは聞けた。

 でも、返された答えはこの上なくタチが悪くて。


「言わなかったっけ? 俺は話したい人と話してるだけだって」


 ずるい。卑怯だ。ダメすぎる。


 これで、『そーいう気持ち』が無いのだから本当にタチが悪い。


 心揺れるのは私だけ。そんなのはダメだ。


「なんで、私と話したいのよ。何の接点も無かったでしょ」


 そう言うと、彼はなぜか一瞬だけ俯いて、『そっか』と呟いた。

 そして、そんなことをしたかと思えば今度は再度顔を上げて、こっちを見る。上げられた笑顔は少し悲しさを隠すように眉根を落としていた。


「……うん。そうだね。でも、仲良くなりたいっていうのに理由がいるのかい?」


 理由なんていらない。

 それは正論だ。でも、私のモヤモヤがそれで晴れるわけじゃない。


「私が聞いてるのは理由じゃない。アンタのその目を私のどの部分が惹きつけたのか、それを聞きたいだけ」


 また変な表現になってしまった。 

 詩的というのも烏滸がましい。

 普通なら、嘲笑われてしまうところだが、この場この時この人だから、それは大丈夫だった。


 でも、別のところに穴はあったようで。


「あれ? 俺、君に惹かれてるなんて言ったっけ?」


 別に、そう言う意味で言ったんじゃない!

 バカじゃないの?

 ただ、私のどこを気にして話しかけてきてるのかを聞きたかっただけよ!


 でも、あの時の私にそうきちんと切り返す冷静さは備わってなくて、結局泣き寝入りだった。恥ずかしさに顔を下げる他なかった。



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