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この恋、甘くも苦くも。  作者: リュナ
8/9

7話目

今日は莉子が風邪で休んだ。


授業中先生の目を盗んで、スマホで莉子とやりとりをした。


____やばい。マジで熱が下がんない。


莉子からメッセージが届いた。


____熱何度?


____39.8


うわ高いな。もうすぐ40℃行きそうじゃん。


学校帰りにゼリーとかスポーツドリンクとか熱冷まシートとか買って届けよう。


_____とりあえず一旦寝てやすみな


私はメッセージを送ってスマホの電源を切った。


莉子がいないと寂しいな…


昼休み。


一緒に食べる相手がおらず、食欲が湧かないので、お弁当には手を付けなかった。


いつものように塔屋によじ登って、遮光板で太陽の観測を始めた。


すると、扉が開く音が聞こえてきた。


私はびっくりして起き上がった。


塔屋の上から、扉の方を覗き込む。


見慣れた切れ目の男子と目が合った。


「あれ、三崎くんじゃん。」


そこには、お弁当を持った三崎くんがいた。


こちらに気づいて、塔屋によじ登ってきた。


「三崎くんもぼっちか?」


「友達が風邪引いて、今日学校休んだんですよ。教室で1人寂しく弁当食うのも恥ずかしいから屋上来たんですよ。」


三崎くんは言った。


「柊先輩こそ、松村先輩と一緒じゃないんですか?」


「莉子も今日風邪で休み。だから、1人で楽しく太陽の観察してた。」


私は遮光板を三崎くんに見せびらかした。


「懐かしい。俺等が小学生くらいのとき、皆既日食ありましたよね。そんとき使ったなー」


三崎くんは遮光板で太陽を眺めた。


「先輩、お弁当食べないんですか。」


「一緒に食べる相手がいないから、食欲が湧かない。」


私はそっぽを向いて言った。


「じゃあ、俺でよければ一緒に食べましょう。」


三崎くんは弁当箱を開けた。


そして、もぐもぐ食べ始めた。


私も仕方なく、弁当箱に包まれたバンダナを解いた。


「三崎くんのお弁当おいしそうだね。」


色合いとか、おかずの配置とか何もかも完璧すぎる。


「弁当毎朝早起きして自分で作ってるんですよ。」


「すごいね。めちゃくちゃ偉い。」


それに比べて私は…


「いつもお母さんに作ってもらってます…」


私は弁当箱を開けた。


今日はハンバーグ弁当だ。


スパゲッティ、ポテト、コーンサラダ。


めちゃくちゃ美味しそう。


味覚障害がなければな。


三崎くんをチラと見ると、すごく羨ましそうにこちらを見ている。


なんだよ。


仕方ないな。


「これよかったら、半分あげるよ。」


「いいんですか?」


待ってましたと言わんばかりの顔しちゃって。


なんか可愛いな。


私はハンバーグを真っ二つに分けて、大きい方を三崎くんに渡した。


「めちゃくちゃうまいです。」


「よかった。」


どうせ味が感じられないんだから、私の食事を作るとき調味料なんて使わなくていいとお母さんに言った時がある。


そのときお母さんはこう言った。


「もし、味覚と嗅覚が戻った時、一番最初に美味しいって感じる料理がお母さんが作ったものであってほしいの。だから、たとえ味を感じなかったとしてもお母さんは味付けをやめない。」


ふとそんなことを思い出した。



「先輩っていつもイヤホンつけてますね。ワイヤレスのやつ。」


三崎くんはいつの間にかお弁当を食べ終わったみたいだ。


「そうだね。」


別に常に音楽聞いてるわけじゃなく、耳栓の役割に近いんだけどね。


「俺の声聞こえてるか時々不安になります。」


「大丈夫だよ。ちゃんと聞いてるから。」


三崎くんの声だけは絶対。


「知り合ってからしばらく経つけど、先輩と目が合ったこと一度もないんですよね。」


「いや、あるけど、見てるようで見てないような気がするんですよね。」


「近くにいるのに。なんか俺透明人間みたいだなっていつも思ってました。」


三崎くんは寂しそうに見えた。


「別にそう言うつもりじゃ。」


なんか三崎くんといると、些細な会話一つ一つに胸がほんの少しだけ、ときめいてしまう。

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