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この恋、甘くも苦くも。  作者: リュナ
6/9

5話目

まいかちゃんはあっさり認めた。


ふざけてやったとのこと。


私に恨みは特になく、何となく。


ゆかりちゃん、ことちゃん、その他クラスメイトも私のものを隠したりしたんだそう。


あとで、まいかちゃんとまいかちゃんのお母さんその他のクラスメイトが私の家に謝りに来た。


ショックだった。


友達だと思ってたのに。


その日の夜は何も食べられなかった。


次の日、私は学校を休んだ。


自分の部屋でカーテンを閉め切り、布団を被った。


それでもやっぱりお腹が空く。


何か食べようかと二階に行った。


お母さんがいた。


喫茶店を臨時休業したらしい。


台所から「今日は上手くできたかも〜」と嬉しそうな声が聞こえてきた。


グラタン。


私の好物で、母が一番得意とする料理。


お母さんが料理をテーブルに並べた。


美味しそうだと思った。


スプーンですくって、いざ目の前にする。


なのに食べるのが怖い。


まだ何も食べてないのに、口の中に広がるあの感覚。



お母さんの料理なんだから


大丈夫。


一口食べた。


熱い。


もちろんあの感覚はない。


けど、違う違和感を感じた。


「どう?美味しい?」


母が私に聞いてくる。


こんなこと本当は言うつもりはなかった。


母に言ってはいけない言葉。


悲しませて、


一番傷付けてしまう


呪いの言葉。


なのに私は口にした。



「…おいしくない。」


母の表情が固まった。


そして、険しくなった。


それでも私は言った。


「味がしない。」


声が震えている。


「匂いも分からない。」


涙で視界が曇った。



私は味覚と嗅覚を失っていた。





朝は空の色が一番薄い。


日が高く昇るにつれて、空の青さは増していく。




私は職員室に向かった。


そしたら、三崎くんがいた。


ノートの束を抱えている。


「山口先生見なかった?」


私が探しているのは、体育兼生徒指導兼2年3組担任の山口 慎太郎(やまぐち しんたろう)先生だ。


「見かけませんでしたけど。」


「次の時間体育あるのに、ジャージ忘れちゃってさー。今日は先生に体調悪いって言って体育休もうと思って。」


 体育の先生は忘れ物と遅刻には厳しくて、結構面倒くさいらしい。


「他のクラスの人に借りればいいのでは?」


「私他のクラスに友達いない。」


と私は不貞腐れたように言った。


三崎くんは苦笑いした。


それでしばらく考える素振りを見せて、


「じゃあ僕のジャージ貸しますよ。」


と言った。


「え?」


「次の次に体育の授業があって、まだ着てないのでご安心を。」


「いやいや、いいよ。」


「休んだら、体育の成績下がりますよ?」


「男子のジャージ借りるのはちょっと…」


「サイズでかい分にはいいと思いますけど。」


「そう意味じゃなくて…」





「で、三崎くんに借りたんだ。」


「借りたというか、一方的に渡された。」


私はジャージの上着のチャックを閉めた。


胸元には三崎と白い糸で刺繍が施されている。


やっぱりブカブカしてるな。


袖長いし、ズボン引きずってるし。


三崎くんと私は大体20センチくらい身長差がある。


そんでなんかいい匂いするし…


今日の体育はバドミントン。


春、まだ肌寒さが残るとはいえ、体育終わりは少し汗ばむ。


体育終わったら、スプレーかけなきゃ…




「ありがと。これ。」


私は体育が終わった後、すぐに三崎くんの元へ行った。


次は三崎くんのクラスが体育の時間だ。


スプレーかけまくったし、大丈夫なはず。


それに、1年生の廊下に2年生の私一人いるのは何だか、居心地が悪い。


「今度、お礼させてよ。何がいいか考えておいて。」


「いえいえ。」


1年生の女子たぶん一軍と思われる女子達が、こちらを見てこそこそ話始めた。


まずいな。


三崎くんに何か悪影響を及ぼすかもしれない。


「じゃあね。また明日の部活で」


私は急足で廊下を駆け抜けた。


窓から鮮やかな青空が見えた。


早く明日にならないかな…

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