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この恋、甘くも苦くも。  作者: リュナ
4/9

3話目

家に帰ってきた。


私の家は一階が喫茶店になっていて、二階、三階が居住スペースになっている。


お母さんは一階の厨房で仕込み作業を行なっていた。


「ただいま、お母さん。」


「おかえり。」


お母さんはこちらを振り返って言った。


お母さんはどんなに忙しくても「おはよう」「おかえり」「おやすみ」とこの3つの言葉だけは必ず言ってくれる。


私は近くにあった椅子に座った。


いつもこうやって、今日あったことをお母さんに話す。


「今日は遅かったね。」


お母さんは鶏肉に切り込みを入れた。


「部活をしてきたの。莉子が入っている部活がね、人数少なすぎて廃部になりそうだったから、私が入ることになったの。」


「何の部活?」


「家庭科料理部。」


お母さんは手を止めた。


「莉子はあのこと知らないし、人数足りなきゃ廃部になっちゃうし仕方ないなーって思って。」


「桃花がいいならいいけど。」


お母さんはまた作業を始めた。


「今日から新しく出した新メニューのハンバーグ

桃花の分とっておいたから食べて。」


お母さんはハンバーグが乗ったお皿にお米よそってと野菜を並べて、スープと一緒に私の前に置いた。


「いっただきます」


私は手をぱちんと合わせた。


ナイフとフォークの使い方はお手のものだ。


ハンバーグは、にんじんと玉ねぎ、ピーマンを細かく刻んで練り込んであって、ソースは多分デミグラスソースだ。


「どう?美味しい?」


お母さんは私にいつも聞いてくる。


「柔らかい食感でいい感じだし、野菜が細かく刻んであるから、野菜が苦手な人でも食べやすいんじゃない?」


と言った。


味に関しては何も言えなかった。



私は3階にある自分の部屋に行った。


時計の秒針の音だけが響いている。


ここは外部の音が聞こえない。


私はベットに寝転んだ。


天井の木目と目が合う。


そして、私は目を瞑った。


そのまま私は眠ってしまった。





中学の頃の話。


ある時、シャーペンと消しゴムが無くなっていることに気が付いた。


筆箱の中身がいつもより少ない。


マーカーペン、定規はある。


机の周りには落ちていない。


教科書にも挟まっていない。


カバンにもない。


私は色々の場所を見て回った。


教室以外も。


朝はあった。


落としてもいないはず。


探した場所では見つからなかった。


しばらくして、無くしたものはいつの間にか筆箱に戻ってきていた。



最初の、小さな異変。




無くなるものは次第に変わっていった。


頻度も増えた。


文房具から教科書。


教科書から上履き。


上履きから体育着。


ちゃんと元に戻ってくる時もあれば、人が寄り付かないところに置いてある時もあるし、ゴミ箱に捨ててあったりすることもあった。


体育が終わった後、畳んでおいてあったはずの制服が無くなっていた時もあった。


その時は残りの授業の時間を体育着で過ごした。


先生になぜお前だけジャージなんだと聞かれた。


花壇に水やりをしている時に、制服が濡れてしまったからだと私は答えた。


そうかと先生はすぐ納得してしまった。


気付いてほしかった。


私がついた嘘に。


私も言えば良かったんだ


はっきりと。


「このクラスではいじめが起きています。」と。




私には仲のいい友達がいる。


まいかちゃんと


ゆかりちゃんと


ことちゃん。


凄く優しい子達だった。


物が無くなった時も一緒に探してくれた。


他のクラスメイトも私を無視したりしない。


殴ったりとか、蹴ったりとかそういった直接的な攻撃は受けていない。


物が無くなること以外は普通だ。


水面下で行われている嫌がらせが早く終わることを私はただひたすらに願っていた。

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