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この恋、甘くも苦くも。  作者: リュナ
2/9

1話目

午前12時53分。


昼休みに屋上から見える空は今日もきれいだった。


誰もいないし、塔屋の上で寝転べば、風通しが良くて気分がいい。


私は遮光板を使って、太陽を眺めていると、


「ちょっと人の話聞いてる?」


松村 莉子(まつむら りこ)が私の顔をを覗き込んだ。


「ごめん。全然聞いてなかった。」


私がそういうと、莉子は呆れた顔をした。


「何の話?」


私は起き上がった。


「2年生が何人も辞めちゃったから、うちの部活が廃部になりそうっていう話。」


「あー家庭料理部だっけ?」


活動日数月水金の週3回。


兼部もできるし、女子に人気の部活のはず。


「今部員何人いる?」


「3年生はいなくて、2年はあたしとさーちゃんだけ。1年生は女子6人と男子1人。」


「男子?珍しいね。」


女だらけの部活に男子が1人で入るのはなかなかの勇気がいると思う。


「そこでお願いなんだけど、桃花にうちの部活に入って欲しいんだ。」


「私が?」


現時点で、2年生2名 1年生7名。計9名。


部員が10名以上揃わなければ部として認められず、活動ができない。


つまり、1人足りないということだ。


私はどこの部活にも入っていないし、習い事もやっていないから、時間には余裕がある。


2年生になったことを機に、新しいことを始めたいとは思っていた。


けど、よりにもよって料理部か…


気が進まない。


けど、莉子にあのことは言いたくない。


「わかった。いいよ。」


友達のお願いは断れなかった。



放課後、私達は家庭科室に向かった。


「家庭料理部ってさ、いつも何してるの?」


私は莉子に聞いた。


「月曜日に何作るか決めて、近くのスーパーで買い出し。水曜日に実際に作って、金曜日に反省会。」


「反省会とかあるの?」


「反省会というか、まぁおしゃべりだね。 活動したことをまとめたり、こうした方が手際よく作れるとか、こういう盛り付け方が美味しそうに見えるとか。みんなで意見を出し合うの。」


てっきりもっとゆるく活動しているのかと思っていた。


意外としっかり活動している。


「そういえば、部活始まる前にみんなに自己紹介してもらうから、言うこと考えておいてよ。」


「わかった。」


なんかこういうの初めてだな。



家庭科室に着いたら、既に部員全員揃っていた。


「2年1組の柊桃花(ひいらぎとうか)です。今日から新しく入部しました。これからよろしくお願いします。」


と挨拶した。


何を言えばいいかわからないから、短く当たり障りの無いことを言った。


ぱちぱちと一年生が拍手してくれた。


その中の眼鏡をかけた大人しそうな1年生と目が合った。


彼女は少しはにかんだ。


その後、一年生一人ひとり自己紹介をしてくれたおかげで全員の名前と顔は何となく覚えた。


「部員10名。これで安心して部活ができるね。」


さーちゃんこと部長の津村早苗(つむらさなえ)さんが言った。


ちなみに副部長は莉子。


私は空いている席に適当に座った。


そういえば、莉子が1年生の男子1人入ったって言ってたけどいないな。


今日は休みなんだろうか。


「今日は月曜日だから、水曜に作るものを決めていきます。」


莉子が本棚からレシピ集を何冊か出してきた。


私は、ハンバーグの写真が表紙となっているレシピを開いた。


材料もシンプルで調理工程もわかりやすく書かれてある。


目次を見た。


豚の生姜焼き…鳥の唐揚げ…魚のホイル焼き…


本をパラパラめくっていると、私はあるページで手を止めた。


それはシチューの作り方が書かれたページだった。


思わず顔をしかめた。


けど、しばらくそのページから目を離せ無かった。


私はゆっくり本を閉じた。


嫌なことを思い出してしまった。


気を取り直すように、さっき目があった1年生に声をかけた。


名前は確か遠藤美優(えんどうみゆう)ちゃん。


「何か作りたいものある?」


「お菓子作り初心者なので、簡単なものから挑戦してみたいなと思って…」

 

美優ちゃんはクッキーのレシピが書かれているページを開いていた。


クッキーか…


私が最初に作ったお菓子もクッキーだったな。

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