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悪役令嬢は大航海時代をご所望です  作者: 浦和篤樹
第一部 目指すは大海原の向こう

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62 新商会の初顔合わせ

 話は少しだけ遡って、そんなウィンチとクレーンを開発しているある日。

 私はお父様の執務室に呼ばれて、それからお父様と一緒に平民の商人向けの応接室へと入った。


 その応接室には、エマのお父様であるサンテール商会のサンテール会長と、他に知らない人が三人もいた。


 一人は、サンテール会長と同じ三十代くらいの男の人。

 もう一人はそれより若くて、二十代くらいの男の人。

 そして最後の一人は、五十を超えていそうな白髪のお爺さんだ。


 四人ともお父様と私が応接室に入るとソファーから立ち上がって、特に三十代と二十代の男の人二人が、緊張でいっぱいいっぱいって感じにビシッと気を付けする。


「待たせたな。楽にしてくれ」


 お父様がソファーに座って、私がその隣に座る。


 それを待って、サンテール会長と三十代の男の人が一人、ソファーに腰を下ろした。

 二十代の男の人と白髪のお爺さんは、ソファーの後ろで控えて立ったままだ。


「本日はお時間を戴き誠にありがとうございます、閣下、マリエットローズ様」


 サンテール会長が(うやうや)しく頭を下げると、他の三人もそれに倣って頭を下げる。


「なに、こちらが頼んでいたことだ。それでガストン、その三人がそうか?」

「はい。今度新しく立ち上げる商会の副商会長、副商会長補佐、経理となります」


 そう、今日は私の魔道具を売るために新しく設立する商会の、主要な幹部との初顔合わせの日!

 サンテール会長が手配してくれて、遂に必要な人員が揃ったのよ!


 期待と緊張でドキドキしながら、三人を眺める。


「この度、副商会長を務めさせて戴きますエドモン・バイエと申します。閣下には新商会の設立にお声がけ戴き、感謝の念に()えません」


 ソファーに座った三十代の男の人が、ガチガチに緊張して頭を下げた。


 短く刈り込んだ灰褐色の髪に、青みがかった薄緑の瞳の、生真面目そうな人だ。

 細身で、顔はそこそこイケメンっぽいけど、残念ながらお父様に比べたら何枚も落ちちゃうわね。

 それでも、話し方から実直でいい人そうなのは伝わってくる。


「エドモンは私の商会で、商品の仕入れや流通などを担当していました。以前から独立して自分の商会を持ちたいと言っていたので、今回の新商会設立にどうかと声をかけてみたところ、非常に乗り気で良い返事を貰えたので、閣下にご紹介させて戴きました」


 サンテール会長の補足説明に、私はつい小首を傾げてしまった。

 それはお父様も一緒だ。


「独立して自分の商会を持ちたかったと言う話だが、いいのか?」


 そう、お父様が会長で、そしていずれ私が会長になる。

 つまりエドモンさんは副会長にしかなれない。


 商会の切り盛りなどの実務はほぼエドモンさんに丸投げになる。

 だから、実情は商会長と変わらないと思う。

 だって商売の素人の、特に私みたいな経験不足の子供があれこれ口を出しては、上手くいくものもいかなくなっちゃいそうだものね。

 魔道具を売り出すことに決めたけど、別に商人になりたいわけじゃないし。


 だけど、大きな意味での販売方針などは、私やお父様が口を出すことになる。

 だから、いくら実情が商会長と変わらないと言っても、完全に自由な裁量で経営出来るわけじゃない。

 それに、普段は自由にやって貰っていて構わないけど、要所要所ではちゃんと私やお父様に報告、連絡、相談して貰わないと困るもの。


「はい、販売方針や取り扱う商品のお話は伺っています。ですが構いません。私は常々、このゼンボルグ公爵領を中央に負けない豊かな領地にしたいと考えていました。中央の商会にばかり大きな顔をされるのは不愉快ですから。ですからそれだけの力を付けるために、ゼンボルグ公爵領にはサンテール商会だけではないのだと示そうと、独立を考えていたのです」


 エドモンさんは生真面目そうな顔と同じ、とても生真面目な口調で、真っ直ぐお父様の顔を見ながら熱く意気込みを語ってくれる。


「つまり、独立は手段であり、目的ではないと?」

「はい、その通りです。しかもここ数年、公爵閣下のご采配で、ゼンボルグ公爵領全体でインフラ整備や特産品の増産など、領地を豊かにするための大きな経済の動きが見られています。今回の新商会設立もその一環であるとのお話を伺っていますから、微力なれど是非その手助けをさせて戴きたいと思ったのです」


 うん、熱い。

 志がとっても熱い。

 そんなにもこのゼンボルグ公爵領のことを考えてくれていて、すごく嬉しい。


「それは私にとって、とても耳寄りな話だ」


 お父様も、公爵として甘い顔をしないためか一見すると表情は変わっていないけど、声のトーンがちょっと上がって喜んでいるみたい。


「しかも扱う主力商品が今注目を集めつつある魔道具となれば、これを逃せばしばらく他の商会で扱うことは難しいでしょうし、扱えるようになったところでこちらの商会の後塵を拝することは明らかです。であれば、最初からこちらの商会に入って扱わせて戴きたいと、そう考えました」


 そうね、私の商会で扱う理由は、もし特許利権貴族達が商会に対して嫌がらせをしようとしても、バックに私達ゼンボルグ公爵家が付いているとなれば、そうそう下手な真似は出来ないだろうから。

 平民の商人がやっている普通の商会に卸すのは、それこそ家電のようにもっと魔道具が一般の人達にも広まって、いちいちその手の嫌がらせをしていたらきりがなくて、特許利権貴族達が横槍を諦めるくらい、普及が進んでからになると思う。


 その頃になってようやく扱えるようになっても、ね。

 業界でトップに躍り出るのは難しいわね。


 チラリとサンテール会長を見ると、優しく微笑んで頷いてくれた。


 きっと私の力になってくれる。

 サンテール会長のお墨付きだ。



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